06 セセリ
「カミス様」
優しく揺り動かされたけど、まだ眠いよ。
「カミス様」
なんか、すぐ近くから良い香りがするんだけど。
目を開けたら、きれいな女の人が、目の前に!
「うわぅっ」
目が覚めたどころじゃない、何ごとですかっ。
「おはようございます、カミス様」
起こしてくれたのは、メイドのセセリさん。
これからの、僕たちのお世話をしてくれるそうです。
お姫さまは、素敵な衣装でこちらを興味深そうに見ておりますが、
僕はというと、昨日の夜のままの、あの格好なわけで、
セセリさんが用意してくれていた着替えを持って、慌てて浴室の方へ。
洗面所で、着替えと身支度。
イケメンじゃないんで、寝不足顔と普段の顔の落差が少ないのが救い。
まずは、それなりに元気にあいさつ。
「おはようございます」
「もうお昼ですよ」
お姫さま、素敵なツッコミ、ありがとうございます。
セセリさんが用意してくれた昼食を、お姫さまと向かい合わせで。
新手の拷問ですか。
「ごちそうさまでした」
お姫さまから不思議そうな顔で見られたけど、その表情はご褒美ってことで。
部屋の隅にある、天井からぶら下がっている太いひも。
何か用事があるときは、これを引っ張るとセセリさんが来てくれるとか。
個人的には、お姫さまよりもセセリさんの方が要注意、かな。
なんていうか、生々しく綺麗な人、なのです。
食事と説明が済んで、セセリさんは退室。
お姫さまとふたりきり、なのですが、昨日の晩ほど緊張していない自分に、少し驚いた。
たぶん、お姫さまが緊張していないから、だと思う。
「どうしましょう」
いや、どうもこうも。
「出来れば、エルミナ姫様のお話し、聞きたいです」
ありゃ、なんかまずいこと言っちゃったのかな。
お姫さま、表情が硬くなっちゃったよ。
「私はカミス様の妻なのですよ」
「姫は、おやめ下さい」
初めての夫婦げんかってとこかな。
「エルミナ様?」
お姫さま、にっこり。
昨日みたいにベッドに腰掛けての、お姫さまのお話し。
実は結構やんちゃだったお姫さま。
シスカさんにおねだりして、お城の中を探検してまわっていたり。
お話し中の声が、またすごく心地良いのです。
鈴を転がすような、という表現、リアルに体感出来ました。
お天気、心地良し。
お姫さまの声、とても心地良し。
ふかふかベッドの上、目をつぶったら、即、落ち。