05 エルミナ
月明かりを浴びて、窓辺に佇んでいたのは、
同い年くらいの、女の子。
薄衣が月明かりで透けて、身体のラインが丸見えだなんて思ったのはほんの一瞬、
視線に誘導されるように目が合うと、ついさっきまでの僕の決意も覚悟もどっかに行っちゃって、頭の中が真っ白。
綺麗とか可愛いとかを飛び越えちゃったような、何か。
人には、その人が生まれ持った品格というものがあるんだと、心の底から納得。
誰がどう見たって、お姫さま、です。
「エルミナ・エルセ・エルシニア、です」
凛とした、それでいて、愛らしい声。
「ハナシロ・カミス、です」
噛まずに、言えました。
そして、ずっと無言で見つめ合うふたり。
よく見ると、お姫さま、少し震えてる。
……なんとかしないと。
飾りっ気のない、そこそこ広いお部屋、
目立つのは、やたらとデカいベッド。
「良かったら、お話ししませんか」
ベッドの端っこ、入り口側に腰掛けた。
姫さまに背を向けることになっちゃったけど、不敬とかにはならないよね。
少しして、ベッドが揺れるこの感じ、窓側に座ってくれたのかな。
「シスカさんから、姫さまのことを頼まれちゃいました、です」
「僕になにが出来るのかは分からないけど、シスカさんの頼みならなんとかしたい、です」
「……」
無言ですね。
自分のそれまでのセリフを思い返して、
「僕はあっちの世界ではなんの変哲もない庶民だったので、言葉使いとかはこんな感じで勘弁してください、です」
「……」
無言ですね。
どうしよう。
振り返って直接お顔を見ながら話しちゃっても、いいのかな。
何か上に羽織ってくださいとかって言ったら、怒られちゃうのかな。
考え込んでいると、
「お話しは?」
良かった、反応ありだよ。
それから、僕の平凡極まりない人生を、あるがままに語った。
自分でも忘れかけていたような事まで思い出して話しちゃったり、
僕ってこんなにしゃべれたんだね。
気が付いたら、外が明るい。
なんか、小鳥がちゅんちゅん鳴いてるし。
これが朝ちゅん!
なんてあほなこと考えてないで、ベッドに眠っているお姫さまに何かかけてあげないと。
部屋の中、衣装棚っぽいのから厚手の服を取り出して、そっとお姫さまに。
安心したら、すごく眠くなってきたよ。
部屋の隅っこで、膝を抱えて、目をつぶったら、即、落ち。