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16 お風呂


 というわけで、僕は今、単身赴任の王城住まい。


 仕事の内容は、住み込みの雑用係、が、一番しっくりくる呼び名ですね。


 エルミナ様には、ツァイシャ女王様から城勤めの誉れを賜った、みたいに上手いこと言い聞かせて何とか説得成功。


 たまに城下町デートみたいなこともしております。


 ご機嫌取りと言われても構わないですよ、実際楽しいですから。



 仕事も、すごく楽しいです。


 王城内の家事全般は、やたらとたくさんいるメイドさんたちが取り仕切っておりますが、男手があれば便利な場合もありまして、


 今日の仕事の男風呂の清掃、とかね。


 この仕事が大好きなのは、掃除後に一番風呂しちゃって良いよという許可をいただいてるから。



「ふぃー」


 力の限りの全力で掃除したピッカピカのお風呂に一番乗り!


 これぞ極楽、異世界万歳。



 ガラガラ、ピシャン


 おや、どなたかいらっしゃいましたよ。



「今日も、早い、な」


 ライクァさん、でした。


 先の王様にして現在は独立遊撃部隊隊長、平たく言えばこの国最強の用心棒、かな。



「お疲れさまです、ライクァさん」


「うむ、いつもながら見事な清掃、だな」


 なぜかみんな怖がっているけど、見た目と違って優しいおじさん。



「ありがとうございます。 お風呂が気持ち良いと一日を気分良く終われますよね」


「若いのに素晴らしい心掛け、だ」


 その後は、しばし無言で、お湯を堪能。




「カミス殿は、鍛錬に興味はあるか、な」


 うん、その絶品筋肉を見ればライクァさんにとって大事なことは一目瞭然だけど、僕にも大事なもの、あるんだよ。



「鍛錬も大事だと思いますけど、大元を忘れないようにしたいなって」


「ほう」



「これって友達の話なんですけど、お父さんがすごい頑張り屋さんだったんですって」


「……」



「僕がいた国って、武力での争いは少なかったんですけど、代わりに財力が重視されてたんです」


「……」



「お金持ちほど偉いって、みんな露骨に口には出しませんでしたけど、社会の風潮みたいな」


「……」



「で、友達のお父さんは、家族のためにって、すごく頑張っちゃったんです、お金儲け」


「……」



「すっごいお金持ちになって、大きなお屋敷と綺麗な奥さんと優秀な息子と可愛い娘、誰が見ても幸せ家族って感じでした」


「……」



「でも、息子さんが成人したら、奥さんから離婚を切り出されたそうなんです」


「……」



「お金がいくらあっても、家族の方を見てくれない旦那さんなんかいらないって」


「……」



「家族のためって言うんなら、過分なお金よりも気にかけるもの、あったんじゃないのかなって」


『耳が痛い、な』



「?」


「いや、何でもない、ぞ」



「だから、僕の場合は、好きな人と仲良しでいられるくらいな感じで頑張ろうかなって」


「うむ、良い男っぷりだ、な」



 ちょっと、のぼせてきた、かも。



「カミス殿に、紹介したい人がいる、ぞ」


「?」



「姪が今年成人して、な」


「おめでとうございます」



「私が言うのも何だが、とても良い娘、だ」


「……」



「ぜひ一度、会ってやってはくれまい、か」


「えーと、僕って一応妻帯者なんですけど」



「カミス殿のような素晴らしい御仁、妻ひとりでは世界の損失だ、ぞ」


「うれしいんですけど、まずは妻に相談、ですね」



「楽しみにしている、ぞ」


「はい、それじゃお先しますね」



 ぺたぺた



「カミス殿」


「何でしょう」



「先ほどの話にあった家族の、その後、は」


「分かりません」



 ガラガラ


「召喚されちゃったんで、その後どうなったかは分からないんです」


 ピシャン



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