第1話 産婦人科
『ブーッ、ブッ』
AM1時、スマホの振動が止まった。画面には、見慣れない『産婦人科』の文字が。
……通常の分娩で、私たちが呼ばれる事は殆ど無い。
間違い電話?
……直ぐに着信が来た。
「ごめん、起こしちゃったよね?」
染谷師長だ。今日も夜勤なんだな。
「大丈夫ですよ! どうしました?」
……母のミートソースパスタのお陰で疲労回復している。
「技師長さんが、帰りがけに『明日休みだから、緊急あったらかけて』って言ってくれてたんだわ。 准看ちゃんが、それ知らずに、いつも通りに遥さんにかけちゃって」
……良い上司を持って、真優は幸せです。
電話を切り、お言葉に甘えて眠りについた。
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「おっはよ~ございま~す」ゆっくり休めて、今日は体調バッチリだ。
「おは」
……仲の良い診療放射線技師、橋本が不機嫌に返答する。
「ど~した?」
「昨夜、呼ばれたんだよ」
「えっ? 産婦人科?」
「そっ、子宮外妊娠」
緊急手術になったのか……。
……検査室に入る。
さすがに技師長は帰った後だった。
今日は一人少ないので頑張らないと。 濃い目のコーヒー……は苦くて飲めないので、濃い目の紅茶を飲んで、準備万端!
先輩二人も来て、業務開始だ。
朝イチのルーチン作業を終え、病棟の至急検査を始めた。
……カルテ番号が若い人の血液が届いている。
多分この人が昨夜のオペ患さんだ。
……炎症系の値は高いが緊急異常値はない。
ちょっと安心。