第1話 雷雨注意報
最近の異常気象は、『恐い』を通り越して『酷い』になっている。 ついこの間も、近くに『雹』が降って、自動車のフロントガラスが割れた……なんて報道されていた。
私は、自宅が近いから、最悪歩いてでも通えるが、 先輩方は電車が停まると帰れなくなってしまう。
今日も関東地方は雷雨注意報が出ている。 こんな日は患者さんも少ないし、先輩二人は有給も余っているので、午後休で帰って貰った。
午後は、本当に暇で、技師長は奥で鼻いびきをかいている。
私は、すっかり手持ち無沙汰になったので、例の『豆本』の続編を書き始めた。 検査の大切さを啓蒙する為に始めた、この豆本は、嬉しいことに想像以上に好評で、続編として、『肝臓』、『胃』、『婦人科』を造る事になったんだ。
外来看護師の長谷さんが、検体採取用の各種容器と検査伝票を、纏めて取りに来た。 このような検査関連の備品管理も私たちが行っている。
結構な量があるので、私も運ぶ手伝いをした。
うちの検査室は地下にあるので、普段は健康の為(……という名目で、実はダイエットの為)に階段を使うが、今日のように荷物が多い時は、エレベーターを使う。
長谷さんと一階――外来階で降りたが、ロビーは誰もいない。 ガラスのドアから見える外の景色は灰色で、かなり土砂降りだ。ガラスには大量の雨が叩きつけ、滝のようだった。
ロビーのテレビは、大雨情報をL字で流している。 あちこちに赤い『警報』が目立つ。
長谷さんがテレビの前で立ち止まり、「あら、あたし帰れるかしら?」と言った。 使っている路線が運休になったらしい。
「いざとなったら病院に泊まるしかないですね」と私が言うと、長谷さんは、「そうね。 この前の震災の時も3日くらい泊まったのよ」と答えた。
検査室にもどり、豆本の続きを作ろうとした時、内線電話が鳴った。
手術室からだ。




