表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臨床検査技師の『はるか』です!  作者: コンロード
第1章 臨床検査技師
4/59

第4話 人道的見地

 検査室で一人になって考えた。


 ……ドクターは、検査技師わたしたち放射線技師レントゲンさんが提出した検査の結果を見て、回復に向けての計画を立て、それに基づいて治療を始める。


 しかしそれは、あくまでも患者さんが協力してくれる事が前提だ。患者や家族の協力を得られないなら、治療が始められない。だから、必死で説得するし、それでもかたくなに拒否されたら、治療を断念するしかない。


 ただ、視点を変えて、さっきの木村さんの立場で見てみると、輸血によって命が助かったところで、自分や家族の体内に、悪い血が入っている……という考えがある以上、本人も、家族も、生きるより遥かに辛い人生を送る事になるかも知れない……。


 どっちが患者の為なのか? そもそも人道的見地からすると、本当の正解はどっちなんだろう…何だか、わかんなくなって来た〜。


 ……と思った時、染谷師長が入って来た。


「ありがとう。 お疲れ様ね。……木村さん、無事、転院したよ」


 私は「良かったです。 師長もお疲れ様でした」と言いながら、ペコリと頭を下げた。


 ……染谷師長は、本当に疲れた〜って顔で苦笑いしてうなずいた。そして、ポケットからチョコパイを出し……


「これ食べて。 溶けてないと良いけど」


 チョコパイは大好物だ。ありがたくご馳走になります!


「あ、師長……」


「ん?」

 

「もし、師長が木村さんと同じ立場だったら、どっちを選びますか?」


「あたしは、ぶん殴ってでも輸血させる! 死んだ(ステった)ら終わりだもん。そんな時の為に、空手、習ってるんよ!」と、チョップした。


 うそ〜!


「嘘よ。……ただ、今の答えは、あたしが看護師だから言える事。実際に木村さんと同じ考え、同じ立場なら、どうしたか……それは……全く見当がつかないわ。……そう言うはるかさんは、どう?」


「私も、ぶん殴ってでも輸血させます! だって、血液が勿体ないから!」……と、ちょっと強がって言ってみた。


 染谷師長は、大笑いしながら「検査さんらしい意見だね! 『いっそ清々しい』わ! 今度、あのケチンボ院長に伝えといてあげるね!」


 いや、それは困ります……。



 ……時計を見ると、間もなくAM4時……。 一度帰って、シャワーでもしたい。


「では、はるか帰ります」


「それが良いね。 あたしもこれからちょっとだけ仮眠するわ」


 ……一度検査室を出た染谷師長が、回れ右して、「そうそう! 言い忘れてた」


 ……なんでしょ??


「ブラ、した方が良いわよ! 結構……ポチが……ね……」


 わ、私は真っ赤になって胸を隠した。


「あははは! 若いって健康的で良いわ。 元気貰ったよ。ありがとさん」と言って、手を降った。



 私は、白み始めた空の下、家路を急いだ。


 白衣ケーシーを3枚重ねに着て、更に私服を重ね着して帰ったのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ