3/59
第3話 拒否
染谷師長が検査室に入るなり……
「遥さんお疲れ。 ……ごめん! 血液センターに頼むの、ちょっと待って」
血液センターから買った血液は、期限前に患者に使われないと、病院の損失になる。
特に『AB型』の血液は使用頻度が少ないので、使われずに廃棄する可能性が高い。
…だからと言って、今、頼んでおかないと間に合わなくなる公算が大きい。
「Hb3ですよ! 待てって…… 死んじゃいますよ!? ……先生の指示ですか?」
「家族の同意が取れないんよ。何か、教祖?の教え?で『選ばれざる者の、汚れた血を娘には入れられない』って……」
そんな……。
……染谷師長のPHSが鳴った。……先生からのようだ。
「……判りました。 対応します」
「……どうなりました?」
「家族も本人も、輸血拒否の意志が強いって……。 無輸血治療を希望するから、当院での治療はここまで。 転院になるから、救急車呼ぶわ」
……と言って、外来処置室に戻って行った。