第4話 所見
放射線室に行くと、橋本さんが文字通り首を長くして、待っていてくれた。
「私、エコー初めてやらせて頂くので、時間がかかったらすみません」と正直に言うと、放射線室技師長の山本さんが「今日の午後は多分暇だから良いよ〜! 必要なら呼びに行くから~」と、快く橋本さんを貸してくれた。
超音波検査室で、まず橋本さんの過去画像を確認した。
以前の画像では、ガンゲリオン……じゃ無かったガングリオンは、直径8mmほど。 表面から見えるのは4〜5mmか? それを見ただけでも、ガングリオンが大きくなっているかも? という予想が付いた。
「痺れとかあります?」と聴くと「押すと響くのよね」とのこと。
ゼリーを塗って観てみると、教科書通り『低エコー、後方エコー増強』の所見が観え、腫瘤の中は石灰化や血流は無い。 更に『脂肪腫』なら、他の脂肪組織と同色に観えるが、これは完全に『低エコー』なので、『ガングリオン』に間違い無い。
大きさは前回の約1.5倍になっている。 放射線技師も、手を使う仕事なので、ガングリオンが大きくなってしまったのだろう。
悪性では無いが、大きくなっているのは問題だ。
「整形とかの診察って受けてます?」
「……いや、受けてない。 そんなに悪いの?」橋本さんが不安気に聴いてきた。
「良性腫瘤なので心配は全く無いんですが、前の1.5倍くらいに大きくなってるみたいです。 もうすぐ深田先輩が来てくれるから、もう一度観てもらいますが、痺れがあるなら、このまま放置するより、一度、診察して貰った方が良いと思いますよ」
本来、患者様にこのように結果を言ってはいけないのだが、今回は診察を受けてもらいたくて、敢えて伝えた。
ちょうど深田先輩も到着し、比較画像を見てもらってOKが出た。
この後、橋本さんは整形外科を受診し、ガングリオンを注射器で吸引し、痺れも治まったようだ。
橋本さんは「お礼に~♪」と、近くのファミレスで晩ごはんをおごってくれた。
その時に、色々と話が弾んで、これをきっかけに、私たちは『はっしー』『まゆ』……と呼び合う仲になったのだった。
さて、今回はめでたしめでたしだったのだが、この数日後、別の方でエコーの練習をさせて頂いた時に、少々厄介な問題が発生したんだ……。




