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第3話 提要
じゃんけん選抜の結果、私が負け抜いてしまった。
……専門学校での実習の時、先生から
「脳波検査は、CTやMRIの発達で件数が激減した検査の一つである。 但し、需要はあるので、しっかり覚えるように」
……と言われた記憶がある。
よし、やるしか無い!
私は覚悟を決め、本棚の重しになっている『臨床検査法提要』を開き、急いで電極装着位置を手の甲にメモして、上から手袋をした。
……これで消えないし、良く見える。
「それでは、言って参ります」
と、今生の別れのような声で挙手の敬礼をしながら先輩二人に告げる。
「健闘を祈る!」
……と、息ぴったりの二人の答礼に見送られ、脳波室に向かった。
1時間半後……
自画自賛になるが、全くと言って良いほど問題無く脳波の記録が完了し、脳外科の先生に提出できた!
この身体は、実習での手技を憶えており、手の甲を『カンニング』しなくても検査出来た。
……先輩たちに褒められ、つい、有頂天になっていた私だが、この後、辛い事が起きるなんて、思いもよらなかった……。