第2話 脳波
案の定、午前中は忙しくて、無駄口一つ叩いている暇は無かった。
外来も時間をかなり押してしまい、食事も交代で、さっさと胃の中に流し込んだ。
……この仕事に就いて、お昼ご飯を素早く食べるスキルは身に付いたが、おまけに『皮下脂肪を増やす』という、余分なスキルが付いてきてしもうた。
既に2Kgは確実に増えた! ……反省。
ところで、臨床検査技師の業務は、非常に多岐に渡る。
良く『髪の毛からつま先まで』と言われるが、放射線を使う検査以外『全ての検査』と言っても過言ではない。
大学病院のような大きな施設は技師の数も多いので、専門的な追求が可能な所が多い。
しかし、規模が小さい病院は、全員が総ての依頼をこなす必要があり、当然受け持つ項目が多くなる。
中には、数年に一度くらいしか依頼のない検査があったりするので、本当に気が抜けない。
「脳波お願いします」
外来の看護師さんが、伝票を持って来た。
……脳波は、私が就職してから一度もやった事が無い。
先輩たちも、ここ暫くやっていないと言う。
技師長不在の今、取り残された3人は、各々の顔を見合わせた。
……誰がやる?