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異世界に来て人生初めて剣を持つけど、そんなことより少女が出てこない話があるってどういうこと?

すいません。タイトル思いつきませんでした。

最近タイトルが思いつかずに、シンプル性が増していたので無理やりタイトルをつけるとこんな感じになってしまいました。本当に申し訳ない。

  3章

  4話


 アルテガに頼んだその日から訓練が始まった。木の棒を剣に見立てて素振りから始まる。持ち方から振り下ろし方、体の使い方など簡単に教えてもらった。日ごろから体を使う仕事をしていたおかげか習得自体は早いらしい。午後には実際に打ち合う手合わせを行った。手加減をしてくれているとはいえ俺は何度も体に攻撃を受け、体があざだらけになりながら初日を終える。

「これが普段の訓練だ。とは言っても基礎体力作りが基本だが、お前は体力があるようだからそこらへんは省かせてもらった。剣術も覚えが早い。この調子なら1週間でそれなりの護身術ぐらいは身につくだろう。」

俺は痛む体を引きずりながらアルテガとともに夜食を摂る。

「痛たたた。それはよかった。」

ご飯を口に運ぶだけでも体が痛む。何とか食事を済ませ自宅に戻ろうとする。

「どこへ行くんだ?これから夜の訓練を始めるぞ。それとも、もう逃げ出す気か?」

「まさか。夜まで訓練とは思わなかった。わかった訓練場に向かおう。」

マジか。体が動くかどうか怪しい。倒れることも考慮して訓練に向かう。背がして倒れるよりかましだろう。


 しかし夜の訓練は本物の剣を使った素振りだった。これは気を抜いたら怪我するな。最後の体力と精神力を振り絞り訓練に挑んだ。


「ここは?」

俺はベットに寝ていた。たしか訓練していたはずじゃ・・・

「やっと起きたか。もうすぐ昼食の時間だ。昨日お前は倒れたんだよ。剣を持ったままだったが怪我をしてないのは不幸中の幸いとでもいうべきか。」

アルテガは笑い交じりに何があったか説明してくれた。

「そうか迷惑かけたな。今すぐ準備をしよう。」

ベットから出て訓練用の装備を身に着ける。体中が痛い。

「ほう。まだやる気は残っているんだな。大半の徴兵は1日で逃げ出すというのに大した根性だ。」

「ははは。根性だけは仕事で培ってきたからな。これぐらいじゃ音を上げはしないよ。それにあまり時間がないんだ。」

「まあいい。昼食を摂ったら訓練を始めるぞ。」


こんな感じで俺は訓練を1週間やり遂げた。正直2度ほど1歩間違えれば死んでたという場面にも出くわしたが、それなりに剣を振れるようにはなっていた。アルテガが言うには

「兵士としてはまだまだだが護身ぐらいはできるだろう。しかし無理をしたり調子に乗ればすぐに死ぬ。危なくなれば逃げることも一つの手だ。」

とアドバイスまでくれた。

訓練最終日の夜。俺はアルテガと最後の夜食を摂っていた。いや別にこれが今生の別れという訳でもないけど、なんだか俺の中で友情みたいなものが芽生えてたし、訓練場の食事場で2人で食べるのも最後かなと思っただけだ。そしてこの一週間言いたくても口に出来なかったことがあったため、話の糸口としてひとつ疑問を投げかけた。

「そういえば何で俺の訓練に付き合ってくれたんだ?こちらとしてはありがたかったけど、なんというかあの時俺たちはそんな仲でもなかったはずだ。」

アルテガは食事の手を止めこちらを見た。まさか、アルテガ。お前はそういう人種だったのか。俺には男の趣味はないんだがな。

「お前今失礼なことを考えてただろ。」

アルテガは小さくため息をついた。

「多分子供の時の私とお前の姿が重なったんだと思う。」

「子供の時って?」

アルテガは静かに語り始める。

「俺はな拾われたんだ。シード家に。俺はどうやら北の海の街マーディルで生まれたらしいんだ。俺もその頃の記憶がなくて父上から聞かされたから本当かは分からんがな。だがその当時マーディル周辺では盗賊が活発に活動していたらしい。俺の産みの親は俺が1歳の時に盗賊に殺されたんだと。俺は盗賊のアジトに連れていかれたらしい。そこに王国軍がやってきて盗賊は捕まえられ、王国軍の駐屯地で俺をミナルガが引き取ると言ってくれたらしい。」

また知らないアルテガの過去を話してくれた。俺はそれだけ信頼されたということなのだろうか。

「でもなんで盗賊は赤ん坊のアルテガをさらったりしたんだ?」

「それを私に聞いてわかると思うか?おおよそ盗賊として育てるつもりだったんだろうが、本当のことはわからんよ。」

なるほどな。

「すまんがもう少しだけ聞いてくれ。私はシード家で育てられて、10歳の頃この事実を聞かされた。だからと言って両親に何か特別な感情を抱いたりはしなかった。むしろ私の中で、私みたいな人をこれ以上増やしたくない。という気持ちが強くなり、軍に志願したんだ。俺も誰かを守りたくてこの剣を取った。」

「そうだったのか。ありがとう。俺は兵士をめざしてるんわけじゃない。でもそんな俺に付き合ってくれて。本当に感謝してる。」

アルテガは少し照れたようにした。それからは会話を楽しみながら夜食を済ませた。結局言いたいことは言えずに終わってしまった。



「ひとまずここでお別れだな。」

アルテガは訓練場の入口のところで俺に別れを告げる。

「そんな今生の別れじゃないんだから。」

俺は笑ながら答えたが、アルテガはいつものように笑ってくれなかった。

「俺は明後日からまた戦場に戻る。あとはわかるな。」

戦場。無事に帰ってこられるか分からないということか。

「そうか。なら無事に帰ってこい。また俺に剣を教えてくれ。そうすればストリーマ商会の護衛班を作ることもできるし。」

「フッ、お前らしいな。だが約束はできない。悪く思わないでくれ。」

「いや、それでいい。俺にはお前が無事に帰ってきてくれることを願うぐらいしかできない。ついて行ったって足を引っ張るだけだしな。」

こんなんじゃない。俺が言いたいことはこんなことじゃない。でも、口にしようとしても出来ない。俺は無言でその場に突っ立ってしまった。

「どうかしたのか?忘れ物か?」

「い、いや」

「なら帰れよ。それとも別れが寂しいとでも言うのか?約束はしなかったがまた会えるさ。戦争が終わったら1杯やろうじゃないか。」

アルテガは俺の背中をそっと押す。

「ああそうだな。」

俺はそこでアルテガと別れた。

俺はただ助けてもらった時のお礼と、あの時の暴言を謝りたかっただけなんだ。


俺は街灯が消えた夜の街を自宅に向かって歩いて帰った。



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