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鬼道
前回、太陽神の巫女の話をしました。
西洋にも太陽神の巫女が存在したことがあり、それはギリシア神話の太陽神アポロンに仕える巫女(女神官)のことです。
デルフォイ神殿の女神官は予言を行い、人々はその予言を求めて訪れました。
現在、巫女や神官が予言を行うとおもわれがちな理由は、西洋のこうした過去に束縛された固定観念に由来すると思われます。
中華文明では卜占を専門とする集団が政府の中にあり、あらゆる物事を占って決めるなどしていました。
この風習は我が国にも持ち込まれ、律令制の政府機構の中で「陰陽寮」という形で表れます。
陰陽寮の主な業務は、暦の作成と天文観察、吉祥不祥の判別などの助言を天皇に奏上することです。
安倍晴明が出るまでは賀茂一族が陰陽寮を掌握していましたが、晴明以後は安倍一族が徐々に陰陽寮を掌握していきます。
あくまでも吉祥不祥の助言を奏上するだけで「何かが起こる」という具体的な予知や予言は行いません。
平安貴族は陰陽師による吉凶占いに一喜一憂どころか、「本日は忌日」などと称して出仕しないなど、生活全般を委ねるほどでした。