三方向
三方向というよりは三軸と表現した方が良かったかもしれません。
いわゆる回転軸の話なのですが、観念的な想像だけで話すと理解が難しいですので、何か物体を用意すると理解も容易になります。
最も理解しやすいのが自動車や飛行機の模型を使って説明する方法です。
ヨーイング、ローリング、ピッチングの三つの方向軸を説明します。身近な自動車を例にして説明しましょう。
ヨーイングは上下を軸とした回転です。
自動車の模型をタイヤを全て接地させたままで回転させて下さい。これがヨーイングです。
ローリングは前後を軸とした回転です。
自動車の左右どちらかのタイヤを接地させる回転です。
ピッチングは左右を軸とした回転です。
自動車の前後どちらかのタイヤを接地させる回転です。
この三方向の回転を全て抑制することはできません。多くの車ではステアリング操作(と速度調整)で抑制できるヨーイングを犠牲にして、ローリングとピッチングを抑制しています。
スポーツカーではヨーイングとローリングの制御を重視しますのでピッチングが激しくなります。これはスポーツ走行する路面が平らでピッチングを気にする必要性が低いことも関係しています。
ローリング制御を犠牲にしてしまうと「横転する」車になってしまいますので、車の特性は「曲がらない」か「上下動が激しい」のどちらかです。
この三軸の話を書こうと構想していた四月中旬、動画サイトで古武術の映像を見る機会がありました。
その古武術家は「三つの方向に力を加える」という理論を体現されていて、縦(腰の上下)、横(膝の屈伸で左右)に加えて捻るという動きを同時に行っているようでした。
上でも記述したように、三方向の力全てには対抗できません。ですから同時に加えられた三方向の内、二方向は抵抗できても残る一方向の力に屈します。
口で言うのは簡単なのですが、同時に三方向へ力を加える技術は難しいです。
体得できないまでも、理論を理解できるようになりましたら、何かの話で使うかもしれません。
古武術家は甲野善紀さん。