004-大切な幸せ-
そこは狭く、暗い場所。
目に見えるのは闇のみ……
何かにぶつからないか気にしながら周囲を散策する。
何かが動く物音が聞こえた。
その瞬間世界は明るくなり、自分の置かれている状況を把握することができた。
足には重りを付けた足枷。
そして背後に佇む男。
「やっ、やめろ!」
ソラは男に向かって叫ぶ。
しかし男はソラを追い掛け回す。
その顔には笑みがこぼれている。
「クックックッ、あの時の強さはどこにいった?」
男はどこからとも無く剣を出すとソラに襲い掛かった。
「お前、弱いよ!!!」
男は倒れたソラを見下し、最後の一言を言い放つ。
「オワリダ!!」
剣が風を切る音とともに、世界は目の前から消え崩れた。
***
【はぁはぁはぁ、ゴクリ、はぁはぁはぁ】
息が荒く、尋常でないほどの汗。
その隣では、サクラとバズーがベットに寄りかかって眠っていた。
物音に気づいてか、部屋にソラの祖母が入ってきた。
「大丈夫かい?」
目を覚ましたソラの顔を見てホッとしたのか祖母の顔には安堵の表情が伺えた。
「ゲームをした後、急に倒れたんだって。そんな時にちょうど店に入ってきたサクラちゃんとバズー君が気づいて、私と病院に連絡してくれたんだよ? こんないい友達なんだから、心配かけるんじゃないよ?」
ソラは小さく頷いた。
祖母は用事があるらしく、静かに病室から出て行った。
ソラの祖母は大変なときにソラの近くにいるが、それ以外は家にいるか出かけているかのどちらか。
だけど、大切な家族の一人、あんまり一緒にいる時間が少なくたって、心が通じ合っているから寂しくはない。
ふと窓の奥を見ると、真っ暗な闇が広がっていた。
倒れる前の記憶が脳裏に浮かびだす。
「あいつに……」
対戦相手のダークは最後に中級レベルのアイテムを使ってソラを倒した。
しかし、ソラにはそれが不思議でたまらなかった。
ソラが当初ダークと戦った時は”下の初級レベル”であったのに、今回は”中の上級レベル”。
しかし、データ上では初級のレベル表示しかされていなかった。
そんな相手が中級レベルのアイテムを使えるはずが無いのだ。
ゲームに何か異変が起こっているのか、それともダークが違法紛いのことをやっていたのかは今となっては分からない。
だが確実に何かが起こっていた、偶発的に、或いは意図的に……
ソラの考え事中にどうやらサクラとバズーは起きたようだった。
サクラがおはようとバズーに、続いてバズーがサクラにおはようと挨拶をしだす。
ソラはすかさずツッコミを入れる。
「今って夜じゃないのかよ!?」
そこで2人はソラが起きていることに気づいた。
「あっ、起きたんだ! よかった……」
「頭でも打っておかしくなったの?」
2人はそういうと、ソラの言葉に耳を傾けた。
「なに言ってんのソラ! 倒れてから3,4時間ぐらいしかたってないとでも思ってたの? 2日は眠ってたんだから!! 今は朝だよ!!!」
ソラとしてはサクラの言う前者の方で考えていたらしく、頭が混乱し始めた。
「俺、そんなに寝てたの?」
「詳しく言うと34時間ぐらい、2日って程でもないけどね」
バズーは人指し指を天に向け、ソラに微笑みながら言った。
「なんかバカにされてる気がする……」
「いやいや、バカになんかしてないよ~」
バズーはずっと微笑んだままだ。
「絶対バカにしてる……」
本当にこの2人だけは失っちゃいけないよな……
この2人も俺にとっちゃ家族と変わらないから、本当皆から心配してもらえる俺は幸せだよ。