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003-黒-

ソラは幾度となく悪夢のことについて調べまわっていた。

デジタル図書館では、夢について書かれている本は全て読みあさったほど。

最後の手段としてコンピュータールームを使ってみたはいいが、やはり結果は同じこと。

頭の隅では別にどうでもいいと考えていても、何故か体は動いていた。


デジタル図書館の館内入り口前には掲示板が設置されている。

無駄だと思いながらもココを覗くソラ。

そんなある日、ソラと同じ現象を訴える個人用張り紙が掲示されていた。

この瞬間ソラは、自分とサクラ以外にも夢で苦しむ人間がいることを知った。


一つため息をつき、今日も再びデジタル図書館に。

だめもとでやっている以上、デジタル図書館に答えがあったとしてもそれは雲を掴むような話。

情報が少ない今、ソラの行為は無意味としか言いようがなかった。

「考えれば考えるほどわかんねぇ……んあぁ~~ああああ!!!!」

こんがらがる頭を掻きむしりうなり声を上げる。

するとあたり一面の視線が集まった。

「やべぇ!?」

危機的状況を察知したソラは、デジタル図書館を後にしてゲームセンターに向かった。



***



キング・オブ・ナイトはいつも通り人気の嵐。

昼時は客が少なくプレイしやすい時間帯ではあるが、それ以外の時間帯は入りきれないほどの数が集まる時もある。

キング・オブ・ナイトを作ったハーツ&ハートカンパニーも対策を検討し、最近ではパソコンでもゲームがプレイできるようになった。

パソコンでプレイするとなると、キング・オブ・ナイトの醍醐味、リアル体感という要素が一つ欠けてしまう事になる。

ゲームセンターではリアルな景色、自然の音、痛み、快感、匂い、そして美味しさまで全ての五感を感じさせてくれる。

そのため、ほとんどのプレイヤーはパソコンでプレイする時は、育成に精を出す傾向にあった。

それでもこの有様。

「しっかし相変わらず、すごい人気だよな~?」

今日は1人で見知らぬ相手と対戦、そう考えているソラは整理券を取り、大画面を見つめた。


ソラの今までの戦闘データから見ると敗北数値が上ったことは一回も無い。

巷ではドラゴンキングの称号を持つ者として、噂されている。

だが、ソラはこのゲームにおいて戦闘センスがずば抜けて凄いわけではない。

それ相応の強さまでレベルを上げ、戦いに勝つ、ただそれだけのことをしているのみ。

この世界には天才という者はいない、努力をした者のみが勝利を掴む。

どこかの誰かが言ったこの言葉を信じ、ソラは今の自分を貫き通していた。

「それにしても順番まだか?」



***



数時間後―――



「やっと俺の番か……一発決めますか!」

ソラは椅子に座ると、対戦を選んだ。

通常近くのゲーム機が対戦を選ばないと、対戦相手はオンラインを通じて選ばれる。

しかし、今回は隣の台の人間が戦闘を選んでいたので、オンライン回線が切られた。

戦い前の妙な静けさが身体を震えさせる。


「今日も楽勝に勝つ!! さて、相手は誰かな?」

隣の台のプレイヤー情報を覗くと、見たことのある顔。

それは以前にソラが戦ったことのある対戦相手だった。

以前勝ったことがあるのだから自信満々で機会の準備が終わるのを待つ。


【カチャ、ウィ――――ン】

≪バトルヲシマスカ? ソレトモイクセイシマスカ?≫

すかさずその問いに2人同時に答える。

『バトル!』

≪リョウカイ≫

画面の表示が切り替わる。

≪カイテンシマス、ゲームヲスルオキャクサマイガイハ、ハナレテモニターデオタノシミクダサイ≫

【ウィ――――ン、プシュ――!】

≪セットアップ≫

目の前の光景がリアルな仮想空間に切り替わる。

≪バトル……スタート!≫


――ソラ VS ダーク――


観客達の視線の先にある画面に2人の名前が映し出された途端、観客達は熱狂の渦に入る。



今回のステージは森林。

どこから襲われてもおかしくは無い。

【ガサッ、ガサッ、ガサガサガササ――】

どこからともなく草を掻き分ける音。

このステージで音を立てることは命取りになる。

ソラは余裕に満ちた顔で動き出す。

手を音のする方向に向け小さく呟く。

「春サバキ――」

呟くと光が手に集まり、長銃に変わる。

そのままためらいも無く、狙いを定める様子も無く、一つ銃弾を放った。

間も無く遠くから悲鳴が聞こえる。

ソラはトドメをさすために対戦相手のもとに近づいた。


対戦相手が視認できる場所に着くと、多少間を置く。

対戦相手は動く気配も無く、地面にうつぶせに倒れていた。

どうやらとどめをさすまでもないが、ソラは対戦相手に近づいた。

突如アラーム音が辺りに響きだす。

【ウォ――――ン! ウォ――――ン! ウォ――――ン!】

「トラップか!?」

ソラはまんまと相手の罠にかかった。

このトラップは厄介なことに、特定の範囲に入ったら発信機が強制的に付いて来るタイプ。

外すにも、小さすぎて探してる間に相手にやられることが多い。

「くそ! くそ!! くそ!!!」

こうなれば逃げててもすぐ見つかる事に変わりは無い。

となれば当たって砕けろ、つまり攻撃あるのみ。

ゆっくりと起き上がる対戦相手に向かって走り出すソラ。

【ダッダッダッダッダ!】

足音を荒々しく鳴らし、拳に力を込める。

「くらえ! 拳滝ケンロウ

拳に水がまとわりつき、相手を殴ると同時に水は砲弾のように相手と共に飛んでいった。

【グシャ!!】

辺りに静けさが戻る。

「フゥ、どうなることかと思ったけ――――!?」

ソラの目に映った物。

「何!? こいつもトラップ!?」

そこには、半分に割れた人形。

「コレを使うしか……」

ソラがその武器の名を唱えると、腕輪がシールド型の剣に変わりだす。

それと同時に人形が爆発を起こした。

【ドガ―――ン!!!!!!!】


何とか直撃的な爆発はかわせたたものの、ソラは飛ばされた。

「なんだよ!? あの時と桁外れの強さは!」

空から1本の刀がソラを目がけ飛んでくる。

「くそ――!!!」

【グサ!】

さらに超人的なジャンプでソラの上に乗ったダークによって、刀を奥へと足で押し込まれ、そのまま地面に落下させられる。

【ドサッ!】

そのときのソラの目には一瞬だが、対戦相手が黒コートの男に見えたのだ。

ソラの意識がもうろうとしてゲームは終わりを告げる。

≪ウィナーダーク!!≫


これがソラの、初めての敗北だった。

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