010-ゲーム開始-
ソラたちは歩き続けていた。
かれこれ3時間は歩いていた。
道中草原の中から不振な音が聞こえていたが、ソラたちは全く気づきもしていなかった。
「ここらで休憩だ。飯食おうぜ!」
「そうだね。でもこのワームリング、食事まで付いてくるなんて便利だよね! 3日分ぐらいしかないけど……」
少し残念そうな表情を浮かべるバズー。
「一体いつになったら、人に会えるんだろうな?」
食べ物を口に運びながら物寂しそうにするソラ。
お喋りをしている中、背後でガサゴソと何かが動く音。
「何かいるみたいだよ……」
「動物・人、もしくはあいつらが言っていたモンスターだよな……」
ひそひそと話し合う2人。
その隙を狙い草むらからモンスターが現れる。
ソラたちの現実の初バトルが始まった。
モンスターはソラ達を連れ去るときにいたヒトデ型のシャドーだった。
ソラはすかさずワームリングから刀を抜き、シャドーに大きく振りかざした。
ズバッ! という草を切る音とともに、シャドーの残像を斬った。
このシャドーはすばしっこい能力を持っているようだった。
シャドーも負けじと回転アタックを仕掛けるも、ソラが大きくジャンプする。
そのソラの真下にシャドーが来た瞬間、シャドーの中心、つまり大きな目をめがけて上から下に貫いた。
シャドーはうなだれるように動かなくなった。
そして、砂のように細かく風に乗って消えてしまった。
「凄いよソラ!!」
ソラは自分掌を見つめながらバズーに質問した。
「なぁ、俺今どのくらい飛んだ?」
その質問にバズーも気づく。
「あっ、ありえないぐらい」
「だよな、助走もなしでおれ1mは真上に飛んでた……」
「こっちの世界では僕達凄い力を使えるんじゃない!?」
冷たい目でバズーを見るソラ。
「うん僕も飛べそうな気がする! 見ててソラ!!」
バズーはその場でジャンプしたが、30センチ程度しか飛べていなかった。
「能力値にはそれぞれ個別でバラバラなのかもね」
もっともらしいことをいってバズーは今のことをなかった事にしようとしたが、ソラは冷たい目を止めようとはしなかった。
「でも案外弱い奴でよかったよね、死体をそのまま見ずに済むのはありがたい……!」
バズーはソラの冷たい目を止めさせるために少々暴力的にでた。
なんとか空を通常状態に戻し、会話を戻した。
「サクラちゃんは大丈夫かな……このゲームに耐えられるのかな……」
ソラは小さい声で言ったのでこれはバズーに聞こえてなかったらしい。
「――でもソラ、もう少しでレベルアップだよ! このアームリングによればね!」
「何かまんまゲームって感じだな……けどバズー、どちらが最強になるか勝負な!」
「いいよ! 僕はキング・オブ・ナイトでも負けてたから、これでも負けるよ」
「そうか? ってなんだよそれ!! 俺が強いから君には負けてあげる的な台詞は!!!」
どんな場所に至って仲良しな2人。
本来なら後2人も交えて4人のはずだが、今の状態だと一体いつになることやら。
「ここで立ち話してるより歩こうぜ! 夜になったらここで野宿になるからな」
「そうだね! 急ごう! 町に向けてレッツ、ゴーー!」
3時間後……
「ハァー、ハァー、やっと町が見えてきたな……ハァー、ハァー」
「さっきの上り坂はきつかったよね……ハァー、ハァー」
ソラたちの目の前に町があった、今はそこに向かって残り少ない体力で歩き続けている。
「しかし、上り坂を登る途中シャドーにでくわすとはな……食料盗って逃げていくから……もう、死にそー!」
「あと少しなんだから頑張ろう! っね!」
5分後……
「ほら、もう着くよ! やったね!」
「神様ありがとう!!!」
ようやく町の入り口にたどり着いた2人。
町の前に看板があり、バズーがおもむろに読み出した。
「コノ町は、えーっと、ファーストタウンて、看板に書いてある。下にもなんか書いてあるけど読めな――!」
バズーが話している間にソラは倒れた、大きな音を立てて……
「ソラ――――!!!」