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第7話 弓姫アンナ

 聖女の性能はやっぱスゲーわ。難易度が変わってくる。

 たまに支援が途切れるけど、あの幼さだからなぁ。まあ、現実的な落としどころか。

 それにしても、あのまま加入しなかったら、どうしようかと思ったぜ。

 アイツがいねーと剣聖のイベント発生しねーもん。クソゲーすぎるだろ。

 エルフみたいに無理やり堕とせるかと思ったら、まったく堕ちなくて詰んだかと。

 でもまあ、今なら何となく理解できるぜ? 張り詰めてたもんが緩んだ感じがするからな。

 目の前で奪う〝姉妹〟丼は最高だからなぁ? 楽しみだ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 あれから何度も魔族を撃退している。四天王も一人倒した(ことになっている)。

 大っぴらに浄化もしているので、着実に魔族領を削っているが、別に悪いことではない。

 英雄がいない間にかなりの集落が瘴気に呑み込まれていたし、それが還ってきているだけだ。


 勇者パーティではクレアと行動することが多いけど、他の人とも交流するようにしている。

 クレアとばかり一緒にいると、ジルがかわいそうだしね。

 最近、特に仲が良くなったのは弓姫のアンナさんだった。


「リリスちゃんはいつ見ても可愛いね!」


 美人系というより可愛い系の容姿に、茶髪のショートヘア。

 眩しい笑顔が人懐っこい印象を与える女性だ。アンナさんもクレアと同い年らしい。

 この年代に英雄が揃っているの凄いよね。僕のときも他に英雄がいたら良かったのに。


「アンナさ……むぎゅ」


 抱き寄せられ、胸部に埋もれる。いつもながらすごいや。

 圧倒的な戦力差に降参するしかない。


「ふわぁぁ」


「あっと、ごめんね?苦しかった?」


「あ、もうちょ……大丈夫です」


「そかそか」


 頭を撫でまわされた。


「今日は勇者様も出かけているし、一緒に出かけよっか! お姉さん美味しいお店を知ってるんだ~」


「わぁ、楽しみですーっ!」


 アンナさんは、エルフのエルミーニアさんと勇者の身の回りの世話をしている姿を良く見かける。勇者パーティに入って直ぐのときは、邪魔したら悪いのかなと思って近寄らないようにしていた。

 野宿しているときに、勇者と連れ立っていなくなったりするんだもん。子どもの教育に悪くない? とか思ってた。

 よくよく話を聞いてみると、勇者はなんだか放っておけない人らしい。女たらしだけど、いつも優しくて、困っているときには必ず助けてくれるのが好きなんだって。

 僕があまりにも勇者に怯えるから、アンナさんから声をかけてくれるようになったみたい。

 クレアのこともあるし、先入観持ちすぎたのかな。ちょっと見る目が変わるかも。


「勇者様、今日はどこに行ったんですか?」


「んー、ふらふら出て行っちゃったのよね。また女の人のところだと思うけど」


「え? 昨日もですよね?」


「あははは……」


 なんだかなぁ。


「まあいいじゃない! 行きましょ!」」


 勇者がもうちょっとアンナさんのこと気にかけてくれたら良いのにな。何だか、かわいそうだよ。

 

 アンナさんと街に繰り出して、ご飯を食べた。露店を冷かしたりしながら遊びまわった。

 こうやって誰かと遊ぶことに憧れていた。すごく楽しい。でも、時折見せるアンナさんの寂しそうな顔に少し切なくなった。

 名残惜しい気持ちは強いけど、日が暮れる前に戻らなくちゃ。もう勇者も宿に戻っているかもしれないし。

 アンナさんと手を繋いで宿に向かう道を歩いた。

 

 あと少しで宿につく距離だった。勇者が知らない女性を連れて宿に入って行くところだった。

 

「…………」


 繋いだ手から震えが伝わってくる。わかっていても納得できない部分はあるのだろう。

 

「今日の夜はわたしのお薦めのお店にいきませんか? わたし、良いとこ知ってますっ!」


「……リリスちゃん、夜一人で出歩くのは感心しないよ?」


「むー、馬鹿にして! いつもはクレアお姉ちゃんと一緒だから大丈夫なんですっ!」


 アンナさんの手を引っ張り走り出す。


「ちょ、危ないってば!」


「お腹空きましたーっ!」


 僕は何をしているのだろうか。あのまま宿に戻っても、明日になれば勇者もアンナさんもいつも通りのはずだ。

 クレアも他の皆も戻って来ているかもしれない。逃げる必要なんてない。

 でも、それでも、あのままアンナさんを宿に返したくなかったんだ。

 せめて、この争いが続いている間ぐらいは、彼女の寂しさを埋められると良いな。

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