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第10話 アンナの故郷

 アンナのやつ、体調を崩しているのか。リリスがつきっきりで面倒見ているようだし、大事にはならねーと思うが。

 今回の遠征でアンナの故郷に行けば、それで終わりだ。婚約者がどんな顔をするのか見物だな。

 



 ◇ ◇ ◇




「すんすんすんすんすんすん」


「えっと、リリス?何やっているの?」


「すごく寝心地の良さそうなベッドがあったので!」


「ここ、私の部屋よ?」


「妹成ぶ……げふんげふん、すっごく良い匂いがしたよっ!」


「あなた、疲れているのね……」

 

 頭を撫でられた。

 

 

 

 遠征に向かう馬車の中、緩やかに揺れる窓から景色を見ていた。

 

「アンナさん、綺麗な花が咲いていますよ!」


「そうね」


「アンナさん、あの雲、美味しそうな形していますね!」


「そうね」


「アンナさん、私のこと、好きですか?」


「そうね」

 

「えへへ……でも、それは冗談で、実は大嫌いだったりしますか?」


「そうね」


「うぅ……っ」


「一体なにがしたいのよ……」


 クレアが呆れたような声をあげた。

 勇者パーティは二台の馬車で移動する。今回は、勇者、王女、エルフが一台目、聖女、剣聖、弓姫、賢者が二台目の馬車に乗っていた。

 普段であれば、アンナは勇者と同じ馬車に乗るのだが、リリスがごねた結果である。 


「あ、もしかして、あの村ですか?」


 リリスの楽しそうな声を聞きながら、アンナは嘆息する。


「着いちゃった、か」

 

 

 

 村に着くと、何人もの村人が出迎えてくれた。

 馬車を村の入口にとめ、歓迎を受け入れるために歩いていく。

 

 アンナだけ、馬車から降りようとしなかった。

 

「アンナさん……わたしも疲れちゃったので、やっぱり馬車に乗っていますね。御者のおじさん、宿に馬車を預けるまで乗ってます!」


 聖女と弓姫が馬車から降りてこないことに村人たちは残念がったが、体調不良をクレアが伝え、誤魔化した。

 挨拶が終わり、馬車は宿に向けて進んでいく。

 宿に到着し、馬車を停車させた。


「アンナさん、約束通り案内してください!」


「…………」


「仕方ないですね、私が案内します!!」


 アンナの腕を引っ張り、馬車から降りる。


「え? ちょっ、リリスちゃん、この村の子だっけ?」


「えぇ……」


「残念そうな目で見ないでよ、もう。歩こっか」


「はい!」


 少し古びた家がポツポツと並び、家畜の鳴き声が聞こえてくる。

 土の香りが濃密で、肥溜めから肥料の匂いも少し漂っていた。

 

「ほんと何もない、田舎ですね」


「自然が好きとか言っていなかった!?」


 思わずアンナが突っ込む。

 

「のどかで気持ちの良いところです」


「ふふっ、とっておきの場所に連れて行ってあげようか」


「え、なんですかそれ! 行きたいです!」 

 

 リリスに尻尾が生えていたなら、ぶんぶん振り回していただろう。

 目を輝かせて、嬉しそうだ。


 村の外れにある獣道を抜けた先の開けた場所。

 辺り一面に白詰草が敷き詰められ、白い小さな花が咲き乱れていた。

 

「わぁ」


「白詰草で冠とか作っちゃったりしてね。なかなか可愛くできるもんよ」


「なんか意外です!」


「私をどんな目で見ているのか、なんとなくわかるわね」


 リリスがいきなり走り出し、白詰草畑に飛び込み、寝転がった。

 

「気持ちいいです」


「汁だらけになるわよ」

 

 アンナが苦笑しながら近くに寝転がる。


「なんだか、久しぶりに帰って来たって気がする」


「良い場所ですね」


「ふふふっ」



 ガサガサッ



 アンナは飛び起き、音のした方に振り向いた。


「よう……」


 曖昧な笑みを浮かべた青年が、ゆっくり歩いて来る。


「お前、こんなところにいたんだな」


「ええ、まあ……」


「…………」


「…………」


 リリスが立ち上がり、青年に駆け寄る。


「お兄さん、お兄さん! お兄さんは、アンナさんの婚約者なんですか?」


「えっ……は? アンナ、こんな子にも言ったのか!?」

 

「ちょっとアラン! それに、その子、聖女よ?」


 アランは目を見開く。こんな幼女が聖女なのかと。 

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[一言] そうか人型ゴミか殺す
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