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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

詩集 絶望への招待

作者: fengleishanren

宇宙は広大な実験場。生き物はすべて管理されていて、意思も行動も実験者が与える因子の配合により、いつ、何を考え、どう行動して結果どうなるかまで、すべて決まっている、という世界の話を、日本古来の定型詩で綴ります。



【総序】


広大な宇宙の果てで、その星は孤独に浮かぶ。

表面は海と陸地でおおわれて、生き物が棲む。


その星に降り立つ人の様々な思いが巡り、

運命の糸を絡めて、もてあそぶ神の悪戯。


美しく、野に咲く花すら仕組まれた悪意の仕業。

真実を知った後でも、今までと変わらぬ思いで


いられるか、敢えて問うまい。人は皆、自分の意思で

生きるもの。その意志すらも、予め計算された


結果だという事にさえ、気付かずに死ぬ幸いが

失われ、すべてが予定でしかない、と知ったときに


どうするか。そんな事実に向き合える者がいるのか。

遥かなる時空を越えた存在が、投げかけてくる


冷徹な観察者目線。情念は隠されたまま

行く末を見届ける意思。密やかに因子は蒔かれ、


自ずから巡る結末。それはまた、次の因子の

計算に使われたのち、捨てられる、時の彼方に。


広大な宇宙。丸ごと費やした実験場で、

消費する無数のいのち。組み上げた方程式は


的確に未来をとらえ、例外を許さない。

生き物は、自然のうちに計算の結果をたどる。


行動は、すべて因子が引き起こした予定調和。

性格は、行動により作られたパターン蓄積。


運命を呼び寄せるのは性格だ。言い換えるなら、

性格は運命(さだめ)を選ぶ。そこからは逃れられない。


人は皆知らないうちに、計算の結果をたどる。

例外は存在しない。無自覚でいるだけなのだ。


誰ひとり気づく事なく、静かなる実験装置は

営みを続けるだけだ。終わる事無く。



ひとかけら 己の生きた 証しさえ

 見えぬ儚さ 思う絶望





【闇】


どのくらい眠っていたかは、分からない。ふと気がつくと

どこからか視線を感じ、きょろきょろと辺りを見回す。


部屋の中、変わった所は特になく、いつも通りだ。

『そりゃそうか』気を取り直し、窓を見る。陽がさしている。


晴天だ。暑くならなきゃいいんだが。思っていると

足元が突然揺らぐ。地震ではないみたいだが


揺れ方が気持ち悪くて、立ち上がる気にもなれずに

床の中、再びもぐり、おもむろに目を閉じてみた。


そこまでが、わたしが分かる記憶だが、今となっては

そんなもの意味をなさない事なのだ。どれだけ時が


過ぎたのか。わたしは再度目を開き、さすがにちょっと

驚いて、自分が何を見てるのか、確かめてみた。


いや、逆だ。見えてる物はなにもない、一面の闇。

わたしには自分の手さえ見えてない。触ろうとして


また気づく。手足が全く動かない。動かし方も

分からない。からだがあった事さえも別の世界の


事なのか、関心すらも薄れゆく。その時何故か、

友人や家族の声が聞こえたが、皆楽し気に笑ってて、


誰ひとりわたしに気づく事はなく声は遠のく。

『待って、わたしはここにいる』 思わず叫び


上げた声。声にはならぬ声だった。皆、立ち去った。

残されたわたしはひとり、闇の中。静寂まとい


ただ過ごす。さっきは何であんなにも焦ってたのか

分からない。わたしにとって、人は皆、うざい限りだ。


わたしから人を欲した事なんか、ただの一度も

あるものか。どうせ下衆びたまなざしでわたしを殴り


踏みつける。家族でさえもその例に漏れる事なく

望んでた、わたしが死ぬのを。生きてると、残念そうに


向けてきた、怨みに満ちた微笑みが冷たく凍る。

誰ひとり、わたしを解さず、誰ひとり、たわたしも認めず、


完全な断絶こそが、わたしには安らぎだった。

この点で、わたしは世界と対等に向き合っていた。


人は言う。それは不幸な行き違い。果たしてそうか。

世界とは、すべてを包み込むものだ。支配の元に。


例外を許すことなく偽りの呪縛で縛り、

支配から逃れる事を許さない。わたしはそれを


拒絶した。支配を逃れ、絶対の孤独を纏う。

世界から離れて生きる安らぎを得るはずだった。


それすらも因子のせいと知ったとき味わったのは

果て知れぬ闇の中へと落ちてゆく感覚だった。


そのときのわたしは何も分かってはいなかったのだ。

だが待てよ。わたしは気づく。この闇と世界の何が


違うのか。自由な意思で生きる事。それが出来ない

のであれば、すべてはあって無きものと変わらないのだ。


それならば何処にいたって同じ事。なにをしたって

意味もない。命が尽きる時まではせいぜい因子に


踊らされ続けてやろう。もうそれでいい。



世の中のどんな思いも人生も

 すべては決まる 計算の果て


その道を埋め尽くす闇、永遠(とわ)の闇

  導きの闇、終焉の闇。


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