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風の精霊の愛し子は王子に見染められ人の心を知る  作者: 冬野月子
風の章

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19/25

01

「カルロス兄様!」


「アリア。しばらく合わない間にますます綺麗になったね」

駆け寄って来た妹を抱きしめると、ガーランド家嫡男カルロスはウィリアムとエイダを見た。


「義兄上、姉上。ご無沙汰しています」

「久しぶりねカルロス。お父様はお元気?」

「うん。本当は自分が来たかったみたいだけど、祭が近いから僕が代わりに」

「一番大事な祭ですものね」

ガーランド辺境領では、夏の終わりに風の森に感謝を捧げる祭が開かれる。

精霊との結びつきを深め、領土の繁栄のためには欠かせない大切な祭だった。


「アリア、祭には戻ってくるんだろう?」

「ええと…」

アリアは伺うようにエイダを見た。


「アリアは領地には帰したくないのよね」

「戻ってもらわないとならないんだよ、ルキウス殿下と一緒に」

「殿下と?」


「先日の書状の返事です」

改まると、カルロスはウィリアムに向いた。

「王家からアリアをルキウス殿下の妃に迎えたいとの御下命。殿下に風の精霊シルフから直接許しを貰っていただきたいというのがガーランド家の返答です」



「直接?!」

「シルフとルキウス様を会わせるの…?」


「……シルフとはそんなに恐ろしいのか?」

青ざめた姉妹の様子にウィリアムは思わず尋ねた。


「アリアの事に限っていえば…恐ろしいですね」

「先日のウンディーネの雨なんて可愛いものだわ」

「それは…」

カルロスとエイダの言葉にウィリアムは息を飲み込んだ。


あの雨で死者は出なかったとはいえ、川の氾濫や土砂崩れなど相当の被害が出たのだ。

王都への道が荒れたためルキウスが屋敷から出られたのは三日後で、ウィリアムもその後処理に追われて王都に戻ってきたのは更に十日後だった。


「———殿下を会わせて大丈夫なのか?」

「殿下の対応次第ですが…。それに、アリアが欲しいのならばそれくらいはしていただかないと。ね?」

アリアの肩を抱いてその顔を見ながらカルロスは言った。





「そうか、分かった」

カルロスの言葉にルキウスは頷いた。


「ガーランド領へ向かおう」

「ありがとうございます」

「いいだろう?オスカー」

「———仕方ないでしょう。予定を調整します」

「それで、シルフに会ってアリアを妃に欲しいと言えばいいのか?」

ルキウスはオスカーから視線を再びカルロスに戻した。


「…気をつけて頂きたい事がございます」

カルロスは頭を深く下げた。

「気をつける?」

「風の精霊シルフのアリアへの執着は相当なもの。そのアリアが嫁ぐとなると…殿下の言動次第では反発や、場合によっては御身に危険が及ばないとも限りません。極力刺激しないよう、態度や言葉を選んで頂きたく存じます」


「…待て、殿下の身に危険だと?」

オスカーが焦った声で口を開いた。

「風の精霊というのはそんなに凶暴なのか…?」


『あれは気性が激しいからな』


「サラマンダー様…」

『お前が次の風の森の管理人か』

いつの間にか現れたサラマンダーはカルロスの前に立った。

『シルフとルキウスを会わせるというのはシルフの意志か』

「はい」

『アリア』

サラマンダーはカルロスの隣に控えていたアリアを見た。

『シルフとルキウス、どちらかを選べと言われたらどうする』



「———ルキウス様を選ぶわ」

力強い声でアリアは答えた。

『シルフと二度と会えなくなってもか』

「…ええ」

『そうか』

サラマンダーはルキウスとオスカーを振り返った。


『私も付いていこう』

「———王都を出ていいのか?」

『次の王と王妃を護るのも私の役目だ。たまにはあれの顔も見たいしな』

そう言ってサラマンダーはアリアの頭をくしゃりと撫でた。





「アリアはすっかり大人になったね」

「淑女教育の賜物よ」


マクファーソン家に戻ってきたカルロスはエイダとティールームで向かい合っていた。

「あなたたちはいつまで経ってもアリアを子供扱いするから任せておけないわ」

「…それは認めるけど」

カルロスは紅茶を一口飲むとため息をついた。

「まさかシルフより殿下を選ぶとは思わなかったよ」

「ふふ、それは恋の力ね」

「恋ねえ。…不安だな」

「不安?」

「アリアが殿下を選んだ事がシルフの怒りを買わないかとね」


「———そうね」

エイダは手にしていたカップを置くと弟に向いた。

「アリアの事でシルフは何か言っていたの?」

「何も。ただ殿下に会わせろとだけ」

「大丈夫なんでしょうね」

「分からないよ、それは」

「殿下に何かあったらガーランド家の責任よ」


「でもガーランド家にとって大事なのは王家よりも風の森だよ。姉上だって分かっているだろう?」

今の王家であるローランド家が王位に付くより昔から、ガーランド家は風の森を護っていた。

森は食料や木材など多くの恵みをもたらすだけでなく、東からの侵略を防ぐためにも大切な場所だった。

「王家の代わりはいても森の代わりはない。シルフの機嫌を損ねない事が大事なんだ」


「———あなたも大人になったわね。昔はそのシルフにアリアを返せと泣きついていたのに」

「……それは言わないで欲しいな」

姉の言葉にカルロスは苦笑した。


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