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風の精霊の愛し子は王子に見染められ人の心を知る  作者: 冬野月子
水の章

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12/25

02

「———クレイグ様とウンディーネは……」

クレイグの背中を見送って、アリアは口を開いた。


『クレイグは私の恋人なの』

「恋人…」

『そうよ』

「クレイグ様は人間よね?」

『種族なんて関係ないわ』

ウンディーネは微笑んだ。

『確かに人間はすぐに寿命が尽きるし、私も自由には動けない。でも彼を愛しているの』


「愛…」

『貴女だって人間の王子に嫁ぐのでしょう?精霊よりも人間を愛する事を選んだのではなくて?』


「私…は……」

アリアは思わず目を伏せた。

「…愛とか…恋とか…分からなくて」

『あら、王子を愛していないの?』

「ルキウス様は好きです。だけど…それがルキウス様が私を好きなのと同じなのか……」


『そんなの考えたって分からないわ』

ふわり、とウンディーネはアリアの目の前に立った。


『愛するひとと出会うとね、そのひとの事ばかり考えるようになるの。心の全てが彼でいっぱいになるのよ』

そう言ってアリアの顔を覗き込む。

『そうやって迷うのはまだ王子の事を愛していないのね』

「…どうやったら…愛せるの?」

『ふふ、難しい質問ね。私は彼と出会った瞬間に恋に落ちたの。どうやってなんて分からないわ』

ウンディーネは目を細めてそう答えた。





「ウンディーネと何の話をしていたんですか」

泉からの戻り道。

馬に揺られながらクレイグが尋ねた。


「…秘密です」

「それは残念ですね」

「———クレイグ様とウンディーネの事は…ウィリアム様達は知っているの?」

「いいえ、誰も知りません」

「秘密なの?」

「……言った所で反対されるだけですから」

クレイグは寂しげな笑みを浮かべた。

「身分や家名を捨てられればいいんですけれどね」


貴族の義務として、結婚する事で家や財産を守ったり、他家との繋がりを深めなければならない。

精霊と結ばれるなど———確かに許される事ではないのだろう。


「…それでも…好きなんですよね?」

「———ずっと彼女と一緒にいたいと願うくらいにね」

クレイグは顔を上げると視線を遠くへと泳がせた。

「ウンディーネと出会うまで、精霊というのはもっと無機質で、人間とは全く違う存在だと思っていました。けれど実際は人間のように感情もあれば温もりもある…。確かに人と違う所もあるけれど、愛する心は同じです」

そう言うと視線をアリアへ戻した。


「アリア様は、人間でもあり精霊でもあると聞きましたが」



「……私は、生まれる前に一度死んだの」

アリアの言葉に、クレイグが息を飲む音がかすかに聞こえた。


「お母様のお腹の中で…。だけどシルフから精霊の命を与えられて。しばらくは風の森で暮らしていて…小さい時は自分が精霊だと思っていたの」

アリアは真っ直ぐにクレイグを見た。

「この身体は人間だし、今は人間の中で暮らしているけれど……自分が人間なのか精霊なのか、よく分からないわ」




「———そうだったんですね」


しばらくの沈黙の後、クレイグは口を開いた。

「ウンディーネから貴女の話を時々聞いていて。…もしも私も精霊に近づける可能性があればと思ったのですが」

「それは、ウンディーネのために?」

「…というより自分のためでしょうか。———少しでも長く彼女と生きたいんです」

クレイグは再び寂しげな笑みを浮かべた。

「人間と精霊の生きる長さはあまりにも違い過ぎますから」



「……そうね」

アリアは頷いた。


「クレイグ様は———どうしてウンディーネを好きになったの?」

「……初めてあの泉で彼女を見た時に何て美しいひとなんだろうと…会った瞬間にね、心を奪われたんです」

今度は幸せそうな笑みを、クレイグはその口元に浮かべた。


「彼女と一緒にいると、とても温かくて…優しい気持ちになれるんです。…彼女だけなんです、こういう心にさせてくれるのは」


「———お互いとても大切な存在なのね」

つられるように、アリアも笑みを浮かべた。

「うらやましいわ」

「…アリア様は殿下ともうじき婚約されると聞いていますが」

「……ルキウス様は私の事をとても想ってくれているけれど、私は…ルキウス様の気持ちに応えられるか、自信がないわ」


「出会ってすぐに恋に落ちる事もあれば、時間をかけて生まれる愛もあります」

そう言うと、クレイグは少し意地悪そうに口端を上げた。

「ウィリアムとエイダさんが婚約前、仲が悪かったのは知っていますか?」

「え?!本当に?」

「今はとても仲がいいですけれどね、昔は会えば喧嘩ばかりでしたよ。———だからアリア様なりの愛をこれから作っていけばいいと思います」



「ありがとう」

アリアはクレイグを見上げて微笑んだ。


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