今日は今日の雨が降る
アメリカバク。
「ようこそようこそぉ。まぁ、座って」
俺は言われるがままに椅子に座った。
うーん、それにしても不思議な少女だ。掴み所がないというか……定まらないというか。大人びているようで子供っぽい。神秘的で俗世的。
「貴方は何の用?誰かが憎いの?それとも貴方を憎い人がいるの?」
おぉだいぶ直球に聞いてくるね、この子。しかし、そんなことをいきなり聞かれても困る。
俺は別に誰かに恨まれることなんかしてないはずだ。俺も別に誰かを恨んじゃいない。
「いや別に」
まぁ、こう答えるしかないな。
少女は俺の答えを聞くとにっこり笑った。
「何もない、なんてあるかしら?この世は恨み辛みでできてるわ。部下は上司を恨み、上司は部下を恨む。友達同士で憎しみ合い、恋人には疑心を。どんなに小さくてもいいの。貴方のこと、聞きたいな」
なんか不気味だな。見た目と内容が違いすぎる。深いようで浅い言葉。
「あのね。話すわけないだろ?そういうのは思っていても言葉にはしないものなの」
「あらあらあら。まぁ、いいや……」
少女は立ち上がった。そして、戸棚から何かを取り出す。よく見えなかったが小瓶のようなものに見える。
「少し素直になるべきね。いやまぁ、いいのいいのぉ。貴方はそこにいれば」
と、少女は言うがいや、そもそも自力で椅子から立てない…体が石にでもなったようだ。
「おい…これは一体……」
「ま、多少はね?っと!」
少女は小瓶の蓋を開けて中身を床にこぼした。液体……水銀のような液状の物体が床に広がる。
そしてそれは意志を持つかのように波うち、形を変え、俺の眼前に迫った。
マレーバクのほうがよく動物園にいるね。