眼鏡でも見えるもの
空白の期間、精神と●の部屋に閉じこもっていたぜ。え、逆じゃないかって?
「くっ……! なんだこれは……身体が重いっ! てめえ何しやがった!」
青年は地に手をつき、悪態をつく。外美はそんな彼を無視し、もう一人の刺客である少女に視線を向け続けていた。
「みたところ、この結界を作り出したのはそちらさんでしょ。一人が結界で閉じ込めてもう一人が仕留めるって算段だったろうけど、仕留めるはずの男の子がやられちゃ、もうできることないよねえ」
確かにその通りだった。殺し役がこの状態では少女一人にできることなどあるはずもない。外美のいう作戦で動いていたのだとしたら、もう彼女らに俺らを襲う力は残っていないはずだった。
「ふっ、それで勝ったつもり?」
先ほどから黙っていた少女は突然口を開いた。少女は動じた様子を見せるどころか不敵な笑みを浮かべる。その佇まいからはまだ余裕が見て取れた。
「私がただの結界役だって? そんなわけないでしょ。二人だけで暗殺し続けてきてるのよ? 私にだってもちろんその技術はあるの!」
少女はいつの間にか拾っていた木の棒を振ると、それは一丁のボウガンに変わっていた。そしてそれを静かに外美へと構える。
「質量を操って逃げ惑うなら、空気抵抗もなく飛んでくる飛び道具は避けようもないでしょ。私の疑心は、あらゆるものに偽の形と性質を与えられるの。対象に合わせて自在に得意なステージを作ることができるのよ。私たち兄弟の前に、敵はいないのよ!」
そういうと少女はボウガンの引き金を引いた。放たれた矢は、少女の言う通り空気抵抗もなく外美に向かう。これでは風圧で避けることはできない。直後に血を噴き出す外美の情景が思い浮かべられた。
しかしそれが起こることはなかった。
矢は思惑とは違い、二つに分かたれ地に落ちていたのだ。
――外美が、その拳だけで撃ち落としたのだ。
「ふん、この程度の速度なら固有能力を使うまでもないわ。反射神経だけで撃ち落とせるっての」
常軌を逸したその動体視力と反応速度を見せつつも、何気ない風に外美は腕を振る。少女と外美の距離は10メートルもなかったはずなのに、高速で飛翔する矢を目視で撃ち落とすなぞこの場の誰も予想できるはずもなかった。
少女は一瞬たじろぐも、再度矢をつがえ今度は3本連続で射撃する。だが、それもすべて外美によって迎撃されてしまった。
「な、なんなのよ! あなたは!」
ほぼ涙目で少女は叫ぶ。
「ありゃ、なんでそんなに驚くかな。あんたたちが修羅場を潜ってきたのと同じように、私もそこそこの修羅場をくぐってきてるってことよ」
そういうと、外美は一瞬で少女の懐まで飛び込み、華麗に投げ技を決めた。
関係ないけど、警察とヤ●ザが会う時、昔はサウナが主流だったらしいけど、今はカラオケボックスが人気みたいだね。刺青入店禁止のところが増えてるからなんだって。