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その恨み、買います  作者: 夕刻
つながった世界
13/15

固有能力(ヴィジョン)対決

固有能力と書いてヴィジョンと読みます。人によって能力が違うみたいですよー。

ちなみにタイトルの「その恨み、買います」は「ウラカイ」と略しています。

「気づかれちゃいましたねー」

「そうっスね」


 振り返った先、扉の向こうから二人組の人が現れた。一人は青年。最初に言葉を発した男だ。隣にいるのはそれよりも少し背の低めの少女。ぺろぺろキャンディを口に当ててなめている。どちらもまだ子供のようだが、その視線は鋭い。俺は眼中に無いらしく、後ろに控えている外美を睥睨する。


「どーもです、僕らとある組織に雇われてやってきましたー。とりあえず(はやわかり)さん、ここで死んでほしい」


 そこで青年の姿は消えた。気づけば既に背後に居る外美の前に立っていた。一体何が起きた。


「へえ、あんたが栞さんですかー。結構かわいいですね。でもごめんなさい。お金貰ってるんでお命いただきますね」

「外美さん! 危ない!」


 青年が残像を残すほどの速さで腕を振る。狙うは首元だった。だがその腕は何も無い空を切る。

 外美が、攻撃を受ける前に刹那的な回避を見せたのだ。その動きは、宙を舞うほこりに触れようと手を伸ばした時に避けられるそれと似たものだった。まるで風圧で後ろに下がったみたいな。


「ふーん、結構速いんだね君。固有能力(ヴィジョン)を使わなかったら首が飛んでたじゃないか。もしかしなくても君、私と同じく固有能力使いかな? その後ろの女の子も」

「やっぱりこんなんじゃ殺せないですよね。わかってました」


 青年は殺せなかったことに憤りは感じてないようにそう言葉を放つ。その不自然に丁寧な敬語に俺は不気味さを感じ取った。


「やっぱり僕の固有能力『暗器(ハイスピード)』は、正面衝突じゃ対応されちゃうか」

「だから言ったすスよー。むざむざ前に出るなって。それなのにのこのこ出ちゃって」

「仕方がないだろ、この偽物の屋敷に気づかれちゃったんだからさー」


 いつの間にか少女の近くまで戻っていた青年は暢気に会話していた。その戻る瞬間すら俺の目には映らなかった。おそろしく速い。

 その間に、外美は俺の近くまで寄ってきていた。

「森山くん、ここは危ないから脱出を試みるよ。君は一般人だから、手を出させたりはしない」

「え、でもどうやって逃げるんですか。俺、あの男の速さについていける自信ないですよ」

「大丈夫、今君に私の固有能力を発動させた。これであの男の攻撃は避けられるはずだ。いいかい。合図したら一目散にあの窓から飛び降りるんだ」

「え、窓って。ここ三階ですよ!」


 外美は言って満足したのか敵二人と対峙する。俺はというと、窓の方に目をやった。そこにはなぜか一匹の猫がいて、窓のカギを開けていた。


「ねえ、君たち。なんで私を殺そうとするの? どこの組織のやつらかな」

「知ってるんでしょ、栞さん。同じく美怨という少女を狙っているんだからさ。僕はそこの男からいろいろと聞きたいんですけど、まずは要注意人物であるあなたを優先的に排除しろって言われてるんで」

「まあそうだろうね。でも美怨を先に見つけるのはわたしたちだよ! 森山君今だ、行け!」


 俺はもうやけになって窓へと走る。先ほどいた猫はちょうど窓を開けていた。


「させないよ」


 背後に青年が迫る。そしてその振りかざそうとする腕は僕を狙っていた。


 フォン!


 振られた腕は俺の身体に触れる前に、その風が俺を打ち付けた。


「何!? こいつも当たらないのか!」


 風に打ち付けられた俺は体勢を保てずに吹き飛ばされる。この程度の風でなぜ吹き飛ぶのか。それを理解するのと同時に窓から吹き飛ばされた俺は、ゆらゆらと地上に舞い降りた(・・・・・)。それでも着地は見事失敗し派手に転んだが、怪我も打撲もなく済んだ。

 地上に着いた俺は上を見上げる。

「今、俺あそこから落ちたんだよな」

 三階の開け放たれた窓を見やる。そこからもう一つの影が落ちてくる。外美だった。


 同じく何のダメージもなく着地した外美は俺を見て叫ぶ。


「走るよ!」

「はい!」


 俺たちはこの屋敷から猛ダッシュで離れた。

森山君。森山源五郎君。

そう、そんな名前なんだよ。彼。

この現代において珍しいよね!

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