第八十三話 かくれんぼ
「納得いかないわ。次は家でかくれんぼよ」
「はぁー」
俺はエリザ姉に聞こえないように小さく溜息を吐いた。やっと家でゆっくりとできると思ったのにまたか。エリザ姉に勝負に挑んで勝たなきゃよかったな。
他のみんなもペルナ姉とロベルト兄以外ちょっと呆れたような顔をしているけど、エリザ姉は気づいてないだろうな。しかも、今度は負けた腹いせに俺を集中的に狙ってきそうだな。
「いいよ。やろう」
珍しくロベルト兄は乗り気だな。たぶん体を動かさないし、かくれんぼなら今回のこともあり、エリザ姉に勝てると思ったのだろう。
「いいよ」
ペルナ姉はいつも通りニッコリと嫌な顔を見せずにうなずきながら言った。
ペルナ姉は優しいからね。
俺たちはとりあえず、かくれんぼをするため馬で馬小屋まで戻り家に向かった。
「エリザ姉、ルールは?」
「この家全体隠れていいよ。あと私が鬼をやるから1時間以内に見つかった人は全員罰ゲームね」
エリザ姉は先ほど飲み干した変な色の液体をたくさん取り出した瞬間みんなの顔が真剣な顔に変わった。
なんでそんなに真剣な顔になるんだ? 俺は一度も飲んだことはないがそんなにまずいのか飲んで試してみたいが、みんなの反応を見たほうが面白いから負ける気はないがな。
「エリザ姉の罰ゲームは?」
「私は誰か一人でも見つけられなっかったら罰ゲームよ」
このルールはエリザ姉に不利じゃないか。捨て身で俺を相打ち覚悟で罰ゲームにしようとしているな。まぁ、エリザ姉は1時間以内に全員見つければ助かるんだけどね。
「始めるよ100秒数えたら行くからね」
エリザ姉の秒読みの合図とともにみんなは屋敷の中に入っていった。
俺はどうしようかな。みんな一応気配を消す魔法か体を纏う魔素をなくして気配を消しているが、エリザ姉は魔素を消して魔法の探知から気配を消して逃れることはできるけど探知はできないから、そんなことをしても意味ないんだけどね。
俺はとりあえず気を使った自分の姿を他人から見えなくし気配も消せる技、消気を使ってエリザ姉の後ろに隠れながら見守ってみようか。
「ひゃーく、いくわよー」
エリザ姉が数え終わり、かくれんぼが始まった。みんなはどこに隠れているのかな。今回は探知しないで、エリザ姉と一緒に探してみようかな。
エリザ姉は勢いよく玄関のドアを開けて閉めずにそのまま行ってしまったので俺はドアをちゃんと閉めて向かった。
「!?」
廊下にいたメイドが驚いていたが、気にしないでおこう。エリザ姉は階段を昇って行った。まずは上の会からから探していくようだ。
最初は俺の部屋から行くみたいだな。
俺の部屋を開けると中には誰もいなかったが、カーテンの裏にレイアが隠れているな。ちょっと窓を開けて風でごまかしているがカーテンが不自然な動きをしているし、赤い髪が少し見えてバレバレだ。エリザ姉は気付いてないようだがな。俺は他に誰かいないか部屋を見渡してみると、布団が少し動いた。
俺のベッドに誰かいるな。この小ささだとこの家で一番小さいラヴィニアが俺の布団の中に隠れているのだろうな。
「どこかなー」
エリザ姉は迷いながら俺の部屋を荒らし始めた。俺のいつも本を読んでいる机の引き出しを引っ張り出したり本を床にちりばめたりしている。
さっきの鬼ごっこで逃げられたのが相当悔しいのだろうか。先ほどの屈辱の憂さ晴らしをしているみたいだ。だから、俺の部屋に真っ先に駆け付けたのか。それに俺の部屋なら俺が隠れているかもしれないとも思っているのだろう。しかし、ものに八つ当たりするのもよくないともうが後片付けが大変そうだな。
そして、ついにカーテンがめくられた。
「レイアみー付けた」
「はぁー」
レイアはエリザ姉に見つかり少しため息をつきながらもエリザ姉の後ろについた。次は俺の布団を豪快にめくると、俺の予想通りラヴィニアがうつ伏せになっていた。
「ラヴィニアも見つけた」
「残念です」
ラヴィニアは口ではそう言っているものの顔は全然残念そうじゃなかった。そして次々と俺の部屋の引き出しやクローゼットなどを部屋にばらまいたが誰もいなかった。
そして、俺の部屋にある大きなタンスを最後に下から開けて調べると、そこからは服を上にかぶせて隠れているペルナ姉がいた。
そんなところにまで隠れていたのか、気づかなかったな。
「ペルナみーつけた。何しているの?」
「隠れているだけだよ」
エリザ姉はペルナ姉の顔にかかっている服をどけて言った。ペルナ姉はその質問を聞いていつものにこやかな顔で答えていたがこれに対しては冷静な顔で言ってきた。
そこまで隠れるのに必死だったのかな。確かに俺が隠れていたことに気づかなかったから、エリザ姉が俺に恨みがなければたぶん見つからなかっただろうからな。余程罰ゲームの飲み物が飲みたくなかったのだろう。
「そう、邪魔だから早く出て」
「うんわかった」
そして次の段を開けるためにエリザ姉はペルナ姉をさっさと出して、開けていくと今度はリヴィアが服に埋もれて隠れていた。
「リヴィアもみーつけた」
「ふー」
リヴィアは満足したかのような表情になりながらタンスから出てきた。タンスの中が苦しかったのだろうな。
それにしても、またタンスの引き出しの中か。ペルナ姉にでも教えてもらってからそのほうがいいと、リヴィアなりに判断して見つからないと思ったのだろう。
というより俺の部屋にみんな隠れすぎじゃない。ここがそんなに隠れやすいところだったのかな。レイアは俺のメイドだからわかるが、ペルナ姉とかリヴィアとラヴィニアは確かこの部屋に来たことはほとんどないのに、なんでだろうな。
俺は気になったのでリヴィアに今度聞いてみることにした。
「この部屋にはレイルはいなかったか、これで残るは5人か」
エリザ姉はこの部屋に俺がいなかったことにがっかりしながらも、次の部屋に向かった。
完全にこれは俺狙いだったな。しかも、始まってすぐに半分も見つかってしまったな俺の部屋に固まりすぎたのが原因だな。
するとエリザ姉は外に出て今度はペルナ姉の部屋に向かった。そのあとに見つかったレイア、ペルナ姉、リヴィア、ラヴィニアがついて行っている後ろに、消気で姿と気配を消している俺がさらにその後ろに付いていった。
ペルナ姉の部屋に入ると俺の部屋の時と違い丁寧に優しく探し始めた。
扱いの落差が激しいな。相当俺への悔しさがあるみたいだ。
すると、エリザ姉がベッドの下を覗くとそこにはイーベルが隠れていた。
「イーベルみーつけた」
イーベルはすぐにベッドから出てきてエリザ姉の後ろについてきた。一通りペルナ姉の部屋を見終わるがイーベル以外はいなかったので、次はロベルト兄の部屋に行った。
ロベルト兄の部屋に行くとペルナ姉の部屋と同じく、探していくとすぐにクローゼットに隠れていたメルミが見つかった。
「メルミみーつけた」
これで残りは俺を含めて3人かロベルト兄とルカは本気だから自分たちの部屋にはいなさそうだな。エリザ姉が自分の部屋を探したが、俺の予想通りルカはいなかった。
そして、ロマーノ父さんの部屋、執事室を見たがいなかった。次にエリザ姉は図書室に向かった。エリザ姉はおもむろに本棚をどかし始めた。たぶん何かしらの勘が働いたのだろう。本棚を探していくうちにとうとう本棚の後ろにい隠れていたロベルト兄が出てきた。
「ロベルト兄みーつけた」
そんなところに隠れていたとは、メルミに手伝ってもらったんだろうな。うまいところに隠れたけどエリザ姉の感に負けてしまったな。
そして、風呂の天井裏に隠れていたルカも見つかってしまったがルカを見つけて、1時間が経ってしまったので、かくれんぼは終了したので俺は自分の部屋に戻ってからエリザ姉のところに知らん顔して戻っていった。
「エリザ姉、僕の勝ちだね」
「くぅーまた負けた」
「はい、みんなこれ飲んでね」
最後みんなで一斉に変な色の飲みものを飲み干し、俺以外いやな気分で終わった。




