第六十話 エリザ姉に勝つか
「レイル様頑張ってくださいね」
「レイル様頑張ってください」
俺が構えたと同時に、もうこんなに人数もいるから模擬戦がないと思って安心しきって休んでいるリヴィアが最初に俺を応援してきた。さっきまで疲れていたのに何で応援しているんだ。嫌味にしか見えないぞリヴィア。見る側は楽しいからな。
それを聞いたルカも私も一応言っておいたほうがいいのかなという感じで続いて申し訳ない程度に応援してきた。お前もか。
「それでは始め」
今までこの模擬戦で開始の合図はなく、場の流れでのんびりと始まっていたのにレイアがいきなり、模擬戦の開始の合図をなぜか言った。
なんだ!?仕返しなのかな?しかし、仕返しとはいえ俺はさっきそんなにレイアに嫌なことをした覚えはないぞ。レイアが文句を言っている隙にもエリザ姉がこちらに向って走ってきた。
なんで俺の時走ってきたの?レイアが合図をしたせいで気合が入って張り切ってしまったのだろう。
俺はそのまま待機して走って向かってくるエリザ姉を迎え撃つことにした。
さーて今回はどんな感じの模擬戦の内容にしようかな。いつも、朝練時間制限があるから大体守りに入って引き分けを狙うか、何か機嫌が悪いときは一撃あたりに行って機嫌を取るときがあるが、今回は制限時間がないからな。
そろそろ、エリザ姉に一撃でも食らわせてあげるかな。でも食らわせたら食らわせたで、どうせ悔しがってもう一回やろうとか言われて、模擬戦を強請るかもしれないな。かと言って、負けてももう一回やろうとか言われるときも時もあるからな。難しいが、ここで勝ってみるのも面白いだろう。
どうやって勝つかな。接戦で偶然勝てたという演出にしてみるか、先程のレイアと同じ戦い方で勝つか。先程の戦いだとエリザ姉がつまらないから、ここは接戦で勝利したほうがもう一回やらずに済むかもしれないな。
俺はエリザ姉の振り下ろされる体重の乗った木剣を受け流さずに木剣で受け止める。
うん、いい感じの打ち込みだな。いつもは受け流してエリザ姉の攻撃を凌いでいるため、エリザ姉の本当の威力の攻撃はあんまり感じたことがないから新鮮な気持ちになれるな。
じゃ、挨拶代わりに。
俺の木剣によって受け止められたエリザ姉の木剣を挨拶代わりに木剣で押して後ろに後退させ、エリザ姉を驚かした。
「っ、やるわね」
エリザ姉は俺の木剣で押し戻されて驚きながらもニヤリと笑いながら楽しそうに言った。
はぁ、楽しそうだな。朝から晩まで戦ってよく飽きないな。俺も毎日飽きずに訓練をしているし、戦うのも好きだから人のことは言えないし、気持ちもわかるが他人を巻き込むのはよくないと思うな。
俺もアニェーゼを巻き込んでいる時点でまた人のこと言えないけど、でもアニェーゼは人なのか?モンスターなのどちらの扱いかわからないがテイムできたからモンスターだと思うが、モンスターなら人じゃないから巻き込んでもいいのかな?俺は記憶を辿って思い出してみた。
うーん、そうだ確かリッチって言っていたな。あと、別れ際にまた会いに行くって言ったような気がしたな。危ない完全に約束を忘れそうになっていたな。忘れないように後でメモしとこ。でもリッチなら他人じゃなくて他リッチだから、問題ないはずだ。
そんなことを考えているうちにもエリザ姉は木剣を構え直して、俺に近付いて木剣で切り上げてきた。俺はそれを強引に受け止めて弾き返す。
近づいてきたな。これで近接戦ができる。ここからが本番だ。
俺もエリザ姉に近付き今度は俺から攻撃を仕掛けた。俺はまず木剣で突いてみる。エリザ姉はそれを木剣で左に払いすぐさまそのまま切り下げてきたので俺は体を右に反らして木剣を躱した。俺もすぐに反撃し右下から切り上げるエリザ姉はそれを後方に躱したので、追撃の突きを放つエリザ姉はさらに後方に下がり躱した。エリザ姉が木剣を真上に上げて振り下ろしたので俺はそのまま受け止め、はじく、序盤から中盤までこの攻防が続いた。
エリザ姉の額には汗が少し出てきていた。どうやらエリザ姉が少し疲れてきているようだ。そろそろ、いい頃合いだな。そろそろ俺はエリザ姉に一撃を食らわせてこの模擬戦を終わらせることにした。
エリザ姉が横に木剣を右斜め上から振り下ろしてきたので、俺はそれに合わせて左側に躱してから一歩で俺は加速してエリザ姉の前に移動して一撃を与えた。
「へっ」
エリザ姉は俺がいい気に近づいて驚いて体を仰け反ったと同時に木剣で攻撃したので、しりもちをついた。
「はい、僕の勝ち」
俺はエリザ姉に向かって、木剣を突き付けて言った。これでどうなるかだな。俺は木剣をしりもちをついてそのままの状態で座っているエリザ姉のそばにそっと置いて、レイアのところに戻って行った。
「くぅー、まさかレイルに負けるとは、悔しいー」
エリザ姉は悔しがりながらすぐに立ち上がり、何かを考えていた。
あぁ、またどうせ次誰と試合をするか考えているのだろう。
「レイル様、今の模擬戦すごかったです。しかも、エリザ様に勝ってしまうなんて」
俺がレイアのところに近づくとリヴィアが俺がエリザ姉に勝ったのを驚いていた。
他にも俺に聞きたそうにしていたが、それよりも俺はレイアが気になっていた。俺はレイアに近付いてさっきの開始の合図について聞いてみた。
「レイアさっき・・・」
「お水を飲みますか?」
「うん」
俺はなぜ試合開始の合図をしたのかレイアに聞こうとしたが、レイアが急に水を持ってきて水を差しだして、俺の話を中断した。
たぶん開始の合図をしたことをごまかそうとしているな。何事もなかったように振る舞っているし、俺の言葉を遮ったからな、やはりわかっていてやっていたな。大方おもしろそうだから行ってみたんだろう。
俺はちょっとレイアを見ながらコップを受け取り飲んだ。レイアはそっぽを向いて、俺の視線から逃れた。
「レイル様、今度私と模擬戦してください」
「うん、今度ね」
なぜか、リヴィアが模擬戦に誘ってきたのが多分やる機会は少ないと思うので、適当にあしらっておいた。あとこの後のエリザ姉の対応が気になるからな。
俺はエリザ姉を見てみた。
「決めたわ、次はリヴィアよ。はい」
「えっ、私ですか?」
「頑張って、リヴィア」
リヴィアが俺ら三人を見つめてきたが、俺らは笑顔で見送るとリヴィアは諦めたような顔になって、エリザ姉に連れていかれた。
朝練の時と同じだな。たぶん俺との戦いで少しエリザ姉は疲れているはずだから、リヴィアで戦いながら負けた試合のことを考えて休憩しながら、動きを確認していくのだろう。朝練の時は騎士に負けたらペルナ姉がその役になっているからな。
「あっ、リヴィアの後はレイア、その次はレイルよ」
あっ、やっぱり俺も戦うことになるのね。さっき立って考えていたのは戦う順番を決めていたのか、長くなりそうだ。
「私もですか?(もう1回するんですね)ルカさんは?」
レイアも驚いているようだ。レイアはがっかりしながらも、少しでも自分が模擬戦から助かるために、隣で何も言わず、空気になって隠れようとしているルカを売った。
ルカさんか。たしかメイドには先輩と後輩があったな。普段はお付きのメイドたち同士は会話せず主人とお客以外は無口でいるように学んでいるようだから珍しいな。
「そうよね、ルカもレイルの前にしようか」
エリザ姉はルカに向かって笑顔ですぐに俺の前に模擬戦を組んだ。たぶんこれも考えていたのだろう。
「・・・はい」
ルカは余計なことを言いやがって、という顔をしながらレイアを睨んでいた。レイアはしめしめという顔をして、ニッコリしていた。そのあとも、小声で言い争っていたが俺は飽きて暇になったので試合を見ることにした。
早速、エリザ姉とリヴィアの模擬戦が合図もなく始まった。しばらく経ってもエリザ姉は戦いながら、のんびりと動きまわって体を休めていた。エリザ姉は休憩しているから、リヴィアを生かさず殺さず戦っている。
この模擬戦時間制限なしか、リヴィアは大変そうだな。エリザ姉のほうが休憩していても圧倒してしまうからその休憩が終わるまで戦わないといけないからな。
やっぱりエリザ姉の部屋を最後にしておいてよかったな。これ、帰れる気がしないからな。もう確実にこのままエリザ姉の部屋で夕食になるな。




