第五話 嘲笑い
生まれてから六カ月がたった。
今日もいつもと同じ訓練を続けていた。
結構魔法の量は増えたんじゃないのかな。確認はしていないが六歳になるまでには訓練に専念したいからな。
俺はもう歩くことができるようになっているが、マリー母さんたちには見せていない。
今回はマリー母さんが来たらハイハイを見せることにしようかな。たぶんもう見せても大丈夫な頃だろ。
そろそろマリー母さんが来る時間だな。
「レイル、おはよう」
マリー母さんに挨拶されて俺は抱きかかえられた。また双子達が遊んでいる部屋に連れていかれる。
最近マリー母さんは無反応な俺を心配してペルナ姉とロベルト兄と一緒に遊ばせるようになった。何とか表情を豊かにしようと努力をしている。
俺は座ることはできるので双子達の近くに座らせられ遊ばされることが最近続いている。
ちなみにエリザ姉は一緒に遊ぶと俺が悲惨なことになるのでマリー母さんはエリザ姉のところには、一度も連れて行っていない。
一切俺の情報を与えてないみたいだ。もし情報を与えるとすぐに遊びにきて連れ回したりして、悲惨なことになってしまうからな。
それでも稀に見つかって悲惨な目に会ってしまうため、みんなが注意してエリザ姉を監視しているみたいだ。
「レイル、おままごとしようよ」
「僕は、鬼ごっこがいいよ」
二人の誘いに俺は顔の形を変えずに無表情でボーっとしているが、勝手に双子達は俺を加えて始めてしまい遊びに毎回強制参加させられてしまう。そのあともいろいろと話しかけられたり、遊んだりしたが、すべて俺は無表情で流されるまま遊ばされていた。
でも、そろそろなんか反応したほうがいいのかな。そんなことは後にしてハイハイのお披露目と行こうじゃないか。遊んでいる最中にしたほうが自然な流れで疑いにくいだろう。
「あっ、レイルがハイハイしてる」
「本当だわ。おめでとうレイル。ハイハイできるようになるのも早かいわね」
ロベルト兄にわかるようにハイハイした俺をロベルト兄がマリー母さんに報告した。それに気付いたマリー母さんは俺を撫でながらハイハイができたことを褒めてくれた。
何も疑っていなかったので。もうそろそろ歩いても大丈夫ではないのだろうかと思い始めた。
「ロマーノに見せないとね。行くわよ。レイル」
俺を片手で持ちロマーノ父さんのところまで掴まれながら移動した。持ち方が雑だな。
「ロマーノ見て、この子ハイハイができるようになったわよ」
「本当か、見せてくれるかい。レイル」
ロマーノ父さんが俺にハイハイを見せてくれと話しかけてきた。それと同時に俺はハイハイを見せた。
「レイル、すごいじゃないか」
俺を抱きかかえて高い高いをして俺を褒めてくれた。褒められるのはうれしいがなんか罪悪感があるな。そんなことは気にせずに行こう。そのあともメイドたちに褒められたがちょっと照れ臭かった。
「もう一回見せて」
「レイル様凄いです」
「これなら立つことも、すぐにできそうですね」
おっと、レイアがフラグを言ってくれた。
その通りにしたほうがよさそうだなと言うよりも、俺が早く見せて行動範囲を広げたい。ということで壁立ちも見させてみようか。
俺はハイハイのまま壁に近づき足をわざと震わせながら壁に手をつき立ち上がった。
みたか俺の名演技をこれでどういう反応をするか、緊張するな。
「マリー、レイルが立っているぞ」
「本当です。立っていますすごいですね」
「すごいです」
「すぐに立てるとは言ったけど、今立つとは思わなかった」
「ほ、本当だわ、ちょっと早すぎるじゃない。エリザよりも二カ月位早いわよ。姉みたいな、元気のよすぎる子にはならないでほしいわ」
どうやら大丈夫だったようだ。
マリー母さんは少し疑ってるみたいな言葉を言っていたけどエリザ姉の例があるみたいだから納得してくれたみたいだな。
しかし、みんな驚いていたな。レイアはもう目を見開いていて面白くてついつい笑ってしまった。
それにしても、エリザ姉はすごいな。俺は生まれる前からも訓練していたし、今も訓練しているからこんなに早く成長できるのだけど訓練も何もしていないのに、かなり速い時期で成長していたとは、前につつかれたときに感じたあの圧力は天性の力強さだったのかな。
エリザ姉にはこれからかなりの身体能力がつくのではないかな。将来騎士とかの役職に就けるが、たぶんこういうタイプは頭の発育が遅れてしまっているのかもしれないから官職とかには向きそうにないと思うな。でも予想外にすごいエリザ姉の成長ぶりには感謝だな。
これで俺が家を歩き回れる日まで近くなった。それでも歩くのは一カ月先位までまだやめたほうがよさそうだ。
「もう立つこともできるのか。すごいぞレイル。しかも、今ちょっと笑わなかったか」
「笑ったわ、初めて笑ってくれたわ。ここまで長かったわ。何に対して笑ったのかは、わからなかったけど、今日はレイルの成長がこんなにも進んでいたとわね。感動のあまり。涙が出てきそうだわ。グスッ」
「(この子、私を見て笑っている?)すごいですね。ハイハイからもう歩くことができて、私も感動です」
「初めて笑いましたね。かわいい笑顔でもうたまらなかったです。もっと見たいです」
「すごいですね、エリザ様も早かったですけどまさかそれを上回る速さで成長するとは将来が期待できますね」
すごく褒められた。
初めて笑ったためか俺がハイハイや壁立ちしたときよりもマリー母さんたちにはその感動のほうが上回っていてもっとたくさん苦笑いでもいいから見せておけばよかったかな。
恥ずかしいからやらないのだけどね。
これで俺が部屋から抜け出したとしても不自然ではなくなったな。壁立地ができればベッドにある策は越えられるし階段を下りたりしても子供がやんちゃしているぐらいに見えるだろう。
そろそろ。俺の地下訓練施設を作る時が来たな。
「そろそろ休む時間だわ、今日はいろいろなことをしてきっと疲れているからレイルは部屋に連れていくわね」
「じゃね、レイル」
「おやすみなさいませ。レイル様」
俺はマリー母さんに抱っこされて自分の部屋に戻された。
ベッドで俺は今夜決行しようと思っている地下訓練室制作の計画を決めようか。
まず決行は夜気付かれずに即座に地面に隠れる。
この行動をやるのは俺であって俺ではない。つまり、俺の能力の一つ、分身を使いそれを使って行うつもりだ。最後が土の中に入る。これが最終目標だ。
まず夜はたまに警備みたいな人が見回りに来るだけですぐに庭に着けるが、庭には広く広大な、草原が広がっているため、庭に出たら遮るものが何もないため、ばれてしまうのではないかと不安だ。
家の中から直接地面を掘れば不安がなく行けるのではないかと思うがまだ属性ごとの魔法のランクが低いため使える魔法がまだ少ないと思う。どう魔法を使うかもまだわからないため、普通の魔法は使わない方針で行こうか。
今回俺が使うのは新しい魔法を作ることができる神に貰った能力。固有の創造で、新しい魔法を作れば何とかなるはずだ。
新しく作る魔法は自然同透化という名前の魔法にしよう。創造の使い方はまずこのように名前を決めてから魔力を使いその名前を言いながら頭にその文字を思い浮かべて発動させる。すると、その名前が書かれた紙が現れそこに、能力の説明を書、破って紙を飲み込めば獲得できる。
この能力は自然のものと体が同化できる技で壁や地面や木などに俺の意識によって体を同化及び透過させることができると紙に書きびりびりに破り口に運び飲み込んだ。
体が少し、光り自然同透化が使えるようになった。これで、家から土に入る手段を、考えることができる。
この部屋から自然同透化を使ってここは二階だから一階に行ってそのまま直接地下に行けばいいのだが初めて使うため一回ずつ慎重に使いたい。
それに俺のいる下の階はさっき自然同透化で覗いてみたがちょうど運悪く警備室みたいな部屋で、騎士が起きている。見回りにくる警備以外にもこの部屋にも一人常駐しているため行ったら確実にばれる。
二階から落ちると着地時に音を立てて気づかれる可能性もあるためできない。仮に、位の高い家で使えている警備兵が少数で警戒できるとなると、実力もそれなりにあるとみて間違いない。
音を立てたら気付かれてしまうが二階から階段を下り一回から地面に着く前に自然同透過すれば音は出ない。
よって俺は二階から階段を下りて階段の脇から地面に直行をする。この作戦で行く予定だ。
どうやって土を掘るのかは土に潜ってから考えようか。
とりあえず夜になるまで寝るか。