第十六話 三度の朝練
俺の部屋がノックされ、返事もする間もなく勢いよく扉が開いた。
「レイル昼食べ終わったら、私と一緒に訓練しよう」
「うん」
毎日毎日飽きずに誘ってくるな。何とか断れることはできないのだろうか。今回も仕方ない付き合ってやるか。
「行くわよ」
「ロベルトいる」
俺はエリザ姉に首を掴まれながら廊下を引き摺られていく、ロベルト兄の部屋も叩くが反応はなくドアを思いっ切り開けようとしていたが、鍵がかかっているみたいで開かなかった。
鍵をつけるアイデアはいいね。俺も今度作ってみようかな。
そのまま階段も引き摺られながら、容赦なく連れて行かれいつもの朝練をしている場所に連れてこられた。
そこにはまたも被害にあったが、快く引き受けたと思われるペルナ姉もいた。他にも二人のメイドがいた。今は訓練用の服を着ている。ペルナ姉とエリザ姉の専属のメイドだ。俺の専属のメイドのレイアみたいな存在だな。
「レイル様初めまして、私はエリザ様のメイドのルカです」
「私はペルナ様のメイドのイーベルです」
「レイルです。よろしくお願いします」
俺の視線に気付いたのか、ルカとイーベルがいきなり自己紹介をしてきた。ちょっと驚いてしまって、反射的にまじめに挨拶を答えてしまった。
普通まだ一歳にもなっていない子供がよろしくお願いしますなんて言うのかな。
「こちらこそよろしくお願いします。レイル様」
「よろしくお願いします。レイル様」
二人もまじめに答えを返してくれた。大丈夫そうだな。
「ペルナ、レイル、そろそろ模擬戦やるわよ」
「……わかった」
「うん」
エリザ姉が仕切り始めた。ペルナ姉は迷いながらも諦めたように了承した。
エリザ姉の独裁だな。
俺は面倒くさいことになりたくないのですぐに返事をした。別に俺にとってはそんなにつらくないからな、この模擬戦のせいで本が読めないことが心残りだがな。こないだと同じ展開だし、面白そうだし今回はメイドも巻き込んでみるか。
「イーベルさん、ルカさんも一緒にやらないレイアもね」
「私たちもですか」
「そうだねレイル、イーベルもやってよ」
「はい、わかりました」
「ルカも一緒にやるわよ」
「……はい」
いま支度を終えてきたレイアも模擬戦に誘ってみた。俺がメイドを誘うのを聞いてエリザ姉もペルナ姉も自分のメイドに指示を出した。メイドたちも仕方ないと思ったのか。すぐに答えてくれた。
簡単に巻き込めたな。マリー母さん以外の他の大人とも前から戦ってみたいと思ってたんだよね。これはいい機会だちょっと今日は、張り切やってみるかな。当然全力は出さないが受けで頑張るか。
用意されていた木剣を手に取り訓練の準備を始めた。
「行くよレイル」
エリザ姉に強引に誘われていきなり攻撃され、最初の模擬戦の相手はエリザ姉になった。
「はっ」
気合の声とともに両手で木剣を持ち上げ、全力で縦に切りかかってきた。俺はその木剣を軽く木剣で左に受け流して躱す。エリザ姉は受け流され体制を崩したがすぐに体制を整えて、左斜め下からそのまま切り上げてくる。
俺はそれを木剣を構えてしゃがみながら上に受け流し躱し、すぐに立ち上がり受ける体制に戻る。
「レイル攻撃しなさいよ」
チャンスだったのにも関わらず攻撃してこなかった俺に、エリザ姉は不満だったのか文句を言ってきた。
攻撃は怪我とかさせてしまうかもしれないし、多分一方的になるからさすがにまずいので本気を出す気は全く持って皆無だ。
「なんで攻撃が一回も当たらないよ、当たれば勝てるのに」
そのあとも、エルザ姉の全ての攻撃を今回も躱してエルザ姉との模擬戦は終わった。本当に負けず嫌いだな、独りでに言い訳し始めた。
「レイル、次やろ」
「うん」
今度はペルナ姉が誘ってきてくれた。木剣を構えたペルナ姉今日は、どうやら教えるのではなく普通に戦うみたいだ。
よし、今回は受け流すのではなく普通に受け止めてみるかな。
早速切りかかってきたので受け止めてみるエリザ姉みたく4歳とは思えない歳に不相応な威力の攻撃ではなくペルナ姉は2歳位の歳、相応な威力の感じがするな。
「レイルはどうして攻撃してこないの」
「攻撃してなかった。どうやるの」
突然のペルナ姉の質問にちょっと驚いたが、攻撃が何なのかわからないふりをしてみた。
本当の理由を言うと面倒くさいことになるし、極力みんなの俺に対する評価を弱目な感じか、ちょっと才能があるみたいな感じで見られたいからな。
「教えてあげるよ。剣を相手にぶつければいいのよ。私が受けるから攻撃してきてみて」
ペルナ姉は攻撃のわからない振りをしている俺に、ざっくりとした説明をして攻撃を受ける体制になった。俺は全力で体の力を抜き優しく攻撃する。
「うん、そんな感じでいいと思うよ」
「ありがとう」
攻撃をしてペルナ姉は無事、俺の木剣を受け止めることができたみたいだ。
力を抜いて木剣の重さだけで、攻撃すれば怪我はさせなさそうだな。今度から攻撃も模擬戦中してみようかな。俺はそれからペルナ姉に力加減に注意を払いながら防御をし、大きな隙ができた時だけ攻撃を入れたりして模擬戦らしくしてみた。
そのあとは何も言われることなく、時間が進みペルナ姉との模擬戦の時間は終了した。
次の相手は誰にしようかな。レイアは最後にしたいからイーベルか、ルカのどちらかとやりたいな。この三人はメイドでも一応騎士みたいだし、ここからが本番だな。
「模擬戦やろう」
「はい、いいですよ」
ルカが剣を構えている。どうやら攻撃を受けてくれるようだ。俺は適当に木剣を当てまくり全てて防がれるが、防がれたときの反動を生かし、そのまま何度も振り当てまくる。
形もあったもんじゃなかったが、その行動を一定にしてリズムが出来上がってきた。そのリズムをいきなり壊して、違う攻撃をして虚を突いて木剣をルカの足に当てた。
「やりますね。レイル様」
俺の攻撃があたり褒めてくれ、ルカも攻撃してきた。たぶん加減してあるのかそんなに強くはなく。ペルナ姉でも防げるレベルだった。
流石に手加減してくるか。もっと本気で来て欲しいんだが、怒らせてみるかでも初めて会う人を怒らせるのは気が引けるので、そんなことはしたくない。仕方ない我慢して次のイーベルに期待してみるか。
「イーベルさん、やろう」
イーベルもルカと同じような対応をしてきた。また剣を同じように構えて俺の攻撃を受けようとしている。
まぁ同じ騎士だからだいたい基本の技は同じだから、同じ構え攻撃になるのは仕方ないけどね。
見飽きたので最初からフェイントを入れ攻撃を当てに行った。
「くっ」
攻撃されたイーベルがやってしまったと言わんばかりの驚いた顔になり、反射的に反撃をしてきた。
待っていました。大人の威力の攻撃。
俺はその攻撃を木剣で威力を殺さずに直で受け止めてみたら、反射的なので俺の予想していた通りの力だった。大人の力を普通に受け止めることができた。そんなに力がなかったので残念だったが、まぁ大人の力を知ることができたので今日は満足だ。
「レイル様大丈夫ですか」
「うん。大丈夫」
反射的に攻撃をしてきたイーベルが俺を心配して近寄ってきて、体を触ってきたが異常は見当たらなかったので模擬戦を続けた。そのまま、このあとはルカと同じような展開になりイーベルとの模擬戦は終了した。
「やりましょうかレイル様」
「うん」
次の相手は俺のメイドのレイアだ。俺は攻撃の威力を少し強めにしてみる。木剣で切りかかってみる。
「いい打ち込みですね」
当然レイアは防いできたが、今までとり力が強かったので木剣と木剣が打ち合ういい音が鳴ってレイアが、いい打ち込みと認めてくれた。俺はそのまま様子を見たりするが子供相手に自分から攻撃するような人ではないので、迎え撃つ体制になっている。
今回の目的みたいなものはイーベルで達成しているからな。
もう流す感じでいいやと思いながら無心で攻撃していた。
「今日はこれくらいにしとくわ」
「今日は終わり?」
「うん」
3週くらい同じ順番で模擬戦を回してようやくエリザ姉は飽きたみたいな、言葉を言い出したのでペルナ姉がすぐにエリザ姉に聞き返していた。相当疲かれているみたいだな。
ようやく終わりか。早く自室に戻って分身の訓練に集中したいな。
模擬戦が終わり、すぐにレイアを引き連れて部屋に帰り、俺は本を読む振りをして今日も分身に意識を集中させた。




