世界の裏側
「魔王なんて存在しないんだよ」
「は?」
ゼンの言葉にオレは間抜けな声を出すことしか出来なかった。
「だってこのゲーム、魔王を倒すのがクリア条件のはずだろ?」
なのに魔王が存在しないとか、くそゲー以前にゲームとして破綻してんじゃねーか。
「まあそうなんだが、製作者がハーレムシステムの方に力を入れすぎてな。容量が足りなくなったそうだ」
「そんな製作者クビにしてしまえ」
ものすごい苦労してラスボスに辿り着いたのにラスボスがいないなんて、消化不良にも程がある!
「じゃあゲームのラストはどうなるんだ?」
「魔王の部屋に辿り着けたらナレーションベースで終了」
「そんなラスト嫌だ!!」
攻略サイトで誰一人魔王について触れてなかったのはそう言うことか! そりゃあ隠したくもなるわ!!
つまり辿り着いたら強制クリアでエンディングってことか。なんて後味の悪いラストなんだ……
ってかオレも辿り着いたわけだからこの世界の魔王を倒したってことになるのか?
そうか、倒したんだな。考えても仕方がない。受け入れるさ。
……あれ?
「そういえば、さっきの合格ってどういう意味だ?」
魔王、は関係ないよな?
「ああ、あれな。
失格だったらこの世界を消してしまおうかと思ってたんだよ」
……はい?
なんか不穏な単語が聞こえたんですけど? え?
「消すって、どういう?」
「そのまんまの意味。デリートってことだな」
「は、はぁぁぁぁああ!?」
「うるせぇよ」
思いっきり叫んでしまったオレは、いつかと同じようにゼンに思いっきり頭を殴られた。あ、懐かしい。
ゼンの話を要約すると、ゼンは製作者がゲーム完成後に試験目的を兼ねて気まぐれに入れ込んだ人工知能らしい。その目的はトラブルの修復と遊び心だったらしいが、さすがくそゲーの製作者と言うべきか、その機能は主に遊び心の方に重点を置いてしまったらしい。
その結果トラブル修復よりも、より自分が面白い方へとプレイヤーを誘導することに重点を置くようになってしまったらしい。元勇者殺害もそのとばっちりだ。なんと哀れな。
ちなみにサホちゃんは元はただのゲームのプログラムの一部だったらしいが、ゼンが仲間に引き込んだらしい。
「それで、なんで世界を消すことになるんだ」
こいつの仕事はトラブルの修復じゃなかったのだろうか。
「つまらない世界なんて要らないだろ?」
何を当然のことを、というようにさらりと言うな。
ってか魔王よりよっぽど質が悪いわ!!
「まあ面白かったからな、今は消さないさ。これからもせいぜい楽しませてくれよ」
「ゼンショシマス」
ゼンという魔王より厄介な相手がいる限り、どうやらオレの闘いは終わることはないようだ。
しかしまあ魔王は倒したらしいので、まずは勇者としての役目を返上しに帰るとしよう。
その後はまたハーレム作りでもがんばってみるかな?
だってもう、ただの村人Aに戻るのだから。
はじめまして、又はお久しぶりです。はねうさぎです。
この度は本作品を最後まで読んで頂きありがとうございました。
書き始めた当初はもっとコンパクトに終わると思っていたのですが、思ったより長くなってしまい、それなのに書きたかったことは上手く纏まらず書けなかったりで、読んでくださった方たちには分かりにくかったところが多々あったと思います。すみません。
けれど少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
もしご意見、ご感想等ありましたらよろしくお願いします。
では、最後までお付き合いいただきありがとうございました。




