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敵か味方か

「生きてるって素晴らしい……!」

 フォースシティを出発してから一週間、オレ達はなんとか全員生きてフィフスシティへ辿り着いた。

 その道中は酷いものだった。そもそもフォースシティからフィフスシティまでは三日もあれば辿り着けるはずだったのだ。余裕で。

 こんなに時間がかかった原因は言わずもがな。

「結構遠かったですねー! あ、僕疲労回復の呪文唱えましょうか? 今度こそ行ける気がするんです!」

「いやいや! 大丈夫! 目の前に宿屋が見えるから!」

 今もオレを無意識のうちに脅してくる恐怖のヒーラー様のせいである。


 ソウタの実力は前情報と寸分違わぬものだった。ネット情報だったからちょっとしたスパイスとして大袈裟に盛って書いてあるだけかもなんて、淡い期待をしていた時期がオレにもありました。


「ぎゃー! なんか爆発したー!」

「あれー? おかしいな?」

「ヒカリ―!!」

 回復させようとし誤って瀕死状態になること三回。


「ちょっ! なんか痺れて動けないんだけど……」

「え、ごめんなさい! すぐに治しますね!」

「ちょっとめっちゃモンスター集まってきたんですけど!! 早く早く!」

 状態異常を治そうとして別の状態異常にかかること九回。


「だからお前は大人しくしてた方がいいってあれほど……」

「ごめんなさーい!」

「誰かアイテム! アイテム!」

 攻撃補助を行おうとしてなぜかモンスターを強化してしまうこと多数。


 結果進みは遅くなり、想定の倍以上の時間がかかってしまったという訳だ。

 ソウタに悪気はないわけだし、向上意欲はあるのは良い事だ。が、実験体にはなりたくない。それが原因で死ぬとか笑えない。

 途中からオレはソウタの申し出を丁寧にご遠慮し、イバラさんはアイテムを大量に確保することで彼に隙を与えないように最大限の警戒をしいていたが、優しいヒカリちゃんは上手く断り切れず今では一番の被害者と化している。

 だんだん呪文の途中で結果がわかるようになってきました、と言われたときは不覚にも泣きそうになってしまった。

「ヒカリちゃん、本当にお疲れ様。今日はゆっくり休もうね」

「トキさん、ウチ、こんなに早くまた命の危機を感じるとは思いませんでした」

 そう言って虚ろな目をして笑うヒカリちゃんの顔はオレとイバラさんの良心に直撃し、思わず二人してそっと目を逸らしてしまった。

 ヒカリちゃん、全部押し付けちゃって本当にごめんね!!


 宿屋にて、オレとゼンは考えた。

 と言っても、ゼンがアドバイスをくれることはほぼないので主にオレ一人で考えているのだが。

 因みに議論の向かう先であるソウタはすでに夢の中だ。

「このままじゃまずいと思う」

「そうだろうな」

「ヒーラーが入ったら普通戦闘って楽になるもんだよね!? こんなの絶対おかしいよ!」

「おかしいのがこの世界のデフォルトだ。諦めろ」

「酷い!!」

 だって自分たちが弱いとか敵が強いとかじゃなく味方に敵がいるって! 絶対に倒せない敵がガンガン攻撃仕掛けてくるような状態って!

「せめてソウタが何もしないでいてくれたら……!」

 この際贅沢は言わない! たまに成功する回復魔法も、アイテムを使ってくれる手もいらない! だから主戦力を削るのだけは止めてほしい!

「ソウタに何もさせない方法、あるにはあるぞ?」

「え!?」

 平然と告げるゼンの言葉にオレは勢いよく食いついた。だってソウタは正義感だけは人一倍なんだ。看護師とかやってたくらいだし、傷ついた人を放っておけないらしく、それゆえに今の大惨事を引き起こしている。

 再三の説得も無駄に終わったというのに、そんな方法があるのなら是非もっと早く教えて欲しかった!

「そんな恨めしそうな目で見るなよ。どうせ早く知ったとしても使えなかった方法だ」

「どういうこと?」

「お前がプレイヤーだったら知ってるはずなんだが……」

「?」

「そういえばトキはファーストシティリタイアだったな」

「せっかく忘れかけてたのに!」

 油断しているところに抉るような攻撃を仕掛けてくるスタイル。オレの周りの男は敵だらけか。

「まあ他のゲームでもよくある話だが、このゲームも例に漏れず戦闘参加人数は四人までだ」

「そういやRPGってそうだよな。……待てよ? ってことは」

「そう、現在のパーティーは四人。あともう一人仲間が増えれば、一人は強制的に用済みだ」

「まじか!!」

 五人になったら一人は戦闘に参加できなくなるって仕組みはどういうことなのかよくわからないが、なんて素晴らしい設定だろう! ゲーム万歳!!

「そうと決まれば明日は早速仲間探しだな!」

 これでヒカリちゃんもきっと平穏な生活が戻ってくるだろう。本当にありがとう! 絶対に仲間を見つけるからね!

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