表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

閑話

 せめて手術の日まではフォースシティに留まらないかというオレの提案にみんなすぐに同意してくれた。特にイバラさんはものすごい食い気味に同意してくれて、最初は遠慮していたサホちゃんもなんだかんだ嬉しそうだった。オレ良いことしたなあ!

 と言っても手術は明日の午後なので、留まるのは今日と明日のみだ。明日はみんなで過ごすことにして、今日は女の子達だけでショッピングに行くことになった。

 そしてオレとゼンと言えば……


「一度はやってみたかったんだよな!」

 街の外れのカジノの前にいた。

「トキ、まさかお前サホが心配だったわけじゃなくてここに来たかっただけなんじゃ……」

「ままままさか! そんなわけないじゃないか!?」

ゼンが胡乱気な目で疑うようにこちらを見つめてくるせいで、思いっきりどもってしまった。

違うからね! 確かにカジノには行きたかったけど! サホちゃんが心配なのも本当ってかそっちがメインだからね!?

「まさかトキがそんな薄情だったとはなー。あいつらもこれ知ったら幻滅するだろうなー」

「止めて! ほんとに違うから!! お願いだから変なこと言わないで! この先美少女達に軽蔑の眼差しで見られながら旅するとか絶望しかないから!!」

「じゃあカジノでトキが俺に勝てたら黙っといてやるよ」

「酷いフラグだ!!」

 心底楽しそうに建物の中に入っていくゼンを追いかけるようにしてオレも中に入った。

 結果? ……とりあえずゼンがいて助かったとだけ言っておこう。カジノ怖い!

 ちなみにゼンによる風評被害はオレが美しい土下座をすることによって無事に回避した。なんか可哀想なものを見る目で見られたけど、今更ゼンに取り繕う必要なんかないオレにとってはそんなもの痛くも痒くもないね!


 これまでの街は宿と表現していたが、フォースシティのそれはまごうことなき旅館だった。ってか同じ街に旅館とカジノが一緒にあるって、違和感が半端ないんだが。まあ最初から和風にしたいのか洋風にしたいのかファンタジーにしたいのかリアルにしたいのか、テーマに一貫性なんか存在しなかったから今更だな。それにしたって街によって落差が激しすぎないか? なんか余計なお世話だけどファーストシティの人たちが可哀想になってきた。

 まあそんなことは今はどうでもいい。それより大事なことは……

「私、こんな風に大勢で泊まるのなんて初めてです!」

「わらわもじゃ」

「広い部屋があってよかったですね!」

 そう! 今日は女の子達と相部屋!

 きゃっきゃと楽しそうにはしゃぐ彼女たちのなんと可愛らしい事か!

 ゲームの世界なのに何でわざわざ男部屋と女部屋を分けるんだ! と絶望したファーストシティが懐かしいぜ……

「トキ、どうかしたのか?」

 オレが一人喜びを噛み締め悶えていると、イバラさんが心配そうに声をかけてくれた。相変わらず天使! オレ今とっても幸せ!

「何でもないから大丈夫だよ」

「変なことして軽蔑されないように精々気をつけろよ?」

 鼻血を堪えながら精一杯の紳士スマイルで答えると、ゼンにぼそりと釘を刺された。

失礼な! 心配しなくてもそんなことする訳ないだろ! だってどう考えても彼女たちの方が強いし……つよ……い……し!

「泣くなよ」

「泣いてないよ!」


「そういえばトキさんたちはどこに行ってはったんですか?」

「ああ、俺たちは」

「ちょっと街の探索に!」

 ヒカリちゃんの質問に答えようとしたゼンの言葉をオレは慌てて遮った。完璧な土下座を披露したので余計なことは言われないとは思うが、カジノに行ったと知られると結果を聞かれる恐れがある。出来れば知られたくないので、適当に誤魔化すことにした。

 いや、嘘は言ってないよ? だってあっという間に負けたから、街の探索してたのは本当だしね! はん!

「ヒカリちゃんたちはいいもの見つかった?」

「それがすごかったんですよ、珍しいものばっかりで! 思わずついつい要らないものまでいっぱい買っちゃいました」

 無駄遣い良くないですよね、と反省するヒカリちゃんに、オレはなんとかそうだね、とだけ返した。うん、そんな見つめないでもわかってますよ? お前が言うなって言いたいんでしょ?

 オレ達がそんな話をしていたとき、イバラさんとサホちゃんは少し離れたところでこそこそ何やら言い争っていた。話の内容までは聞こえなかったが、断片的にイバラさんが『最後』だとか『言った方が』とか言ったのが聞こえた気がする。そしてサホちゃんの顔はほんのり赤い。

 その時オレは閃いた。


 ――これはまさかの告白イベント来る!?


「どうしようゼン! オレ彼女出来ちゃうのかな!? けどまだ魔王倒してないし、ここはやっぱ帰ってくるまで待っててほしいって言っとくべき!?」

 オレは興奮して隣にいるゼンに小声で相談した。

「落ち着け。まだお前は告白されてないから」

「けど絶対あれそうじゃん! うわー、オレ告白なんてされたことないよ!」

「トキ、お前可哀想だな」

 何とでも言え! オレはこれから勝ち組になる!


 しかし今か今かとドキドキしながら待っていたが、結局日付が変わってもオレが告白されることはなく無情にも翌日の朝を迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ