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戦闘の行方

 元々オレは戦闘要員ではあるが、どちらかと言えばアイテム係という使えないキャラに任せるような役割を担うはずだったのにどうしてこうなってしまったのか。

 まあ考えても仕方がないので、今の自分に出来る最善の動きが出来るよう、目の前の敵に集中する。

「これだんだん耐性ついてない!?」

「お前の動きが落ちてるんだよ。まだ半分も削れてないからなー」

「まじか!」

 ゼンからの有難くも悲しい情報にオレは早くも自分の言ったことを後悔した。ほんとにこれ、何とかなるんだろうか?

 ダークフォレストの主は胸にある痣のようなものが弱点で、そこを正確に狙わないとダメージが与えられない。その上ものすごく動きが速いので、拳銃初心者のオレには到底ダメージなんて与えられるわけがない。

 しかしながらアイテムに関しては別にどこに当たってもいいわけで、オレは片手に麻酔銃、もう片手に攻撃用の銃を持って走り回っている。麻酔が効いている間は止まってもいいのだが、主は麻酔の効果がそこまで長くない上、切れた途端トップスピードで向かってくるため結果止まるわけにはいかないのだ。

「大分体力ついたつもりだったんだけど」

「これからはもっと鍛えるべきだな」

「これからがあることを祈るな! っとー、サホちゃん、麻酔銃パス!」

「行きますよー!」

 空になった麻酔銃を投げ捨て、新たな麻酔銃を受け取りまた走り出す。オレが止まれないのは、奴の狙いを他に行かせないためでもあった。

 アイテムの受け渡しのせいでロスした時間のせいですぐそばまで迫っていた主にひやりとしながら、至近距離で麻酔銃を撃つ。ちらりと籠の中のイバラさんを窺うと、どうやらあちらは準備が完了したらしく目が合うと頭の上で大きく丸を作ってくれた。


「ゼン! あとどれくらい!?」

 もう随分と長い時間走り回っている。体力は確実になくなってきているが、幸いにも撃ち続けているおかげで精度は最初より格段に良くなった。

「あと三発ってとこだな」

「よっしゃ!」

 まだ麻酔の効いている相手に続けざまに二発ほど命中させた。

 ――あと一発!

 そこで麻酔が切れたらしく襲い掛かって来たのだが、相手は一直線に向かってきているため動きを止めずとも正確に弱点を捉えることが出来た。正常な判断が出来る状態なら麻酔で動きを止めないと危険なことくらいわかるのだが、残念なことにオレはとっくに体力の限界を超えていて、最後の一発を奴に命中させることしか考えていなかった。

「三発目命中―! あ」

「馬鹿!!」

 予定通りのダメージを与えることが出来たが、そもそもこの作戦におけるオレの役割はある程度まで主を弱らせることだ。当然最後の一発を命中させたからと言って主が倒れるわけではない。

「トキ様!!」

 ヤバい!!

 そう思ったがどうすることも出来ず体を固くしていると、目の前で主の体が一瞬痙攣して、ぐらりとその場に倒れこんだ。よく見ると唸り声をあげながら眠っている。

 顔を上げると、利き手とは逆の手に銃を構えたサホちゃんがいた。

「イバラ! 行けるか!?」

 ゼンの大声に呆けていた意識を取り戻し、急いで主から距離をとった。

「当たり前じゃ! ヒカリ!」

 イバラさんに呼ばれて、ヒカリちゃんが主に急いで駆け寄る。その身には生贄用の煌びやかな装飾が施された装束を纏い、体はイバラさんのかけた強化魔法で淡く輝いていた。


 ヒカリちゃんは召喚士だ。と言っても、精霊や神や悪魔といったものを使役できるわけではない。彼女は宝石を依代とし、そこにモンスターを閉じ込めることによって彼らを支配下に置き使役する。超有名なボールで捕まえるアレのマスターを想像してもらえばだいたいあってる。

 本来彼女が仲間になるのはこのイベントの後だし、ボスキャラを使役できるのかどうかも賭けであるが、オレは何となく上手くいくような気がしている。

根拠? もちろん勘だ!


 みんなが固唾をのんで見守る中、オレの予想通り彼女は見事にその役目を完遂した。

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