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最初の仲間と最後の仲間

 オレの選択は間違っていなかった。今なら胸を張ってそう言える。

 帰りの道中の何と軽やかなことか!

 回復アイテムを駆使し何とか切り抜けてきた行きと違って、スライムもウルフもボアも、サホちゃんの一振りでほぼ一掃。そのおかげでオレたちのレベルも順調に上昇中だ。

「オレたちもサホちゃんみたいに強くなれるように一緒にがんばろうな」

「! もちろんじゃ! すぐにサホなんかよりわらわの方が優秀じゃと認めさせてやるから楽しみに待っておれよ」

 今朝からどことなく元気のなかったイバラさんに声を掛けると、元気いっぱいに返事が返って来た。

うんうん、やっぱそういうことか。イバラさんプライド高いもんな。サホちゃん、強いもんな。悔しかったんだろうな。大丈夫、きっとイバラさんもすぐに強くなれるさ。ゲームだと大体レベルは最終的には横並びになるからな。


「あ」

 オレが一人ほっこりとしていたら、前方を歩いていたサホちゃんの声がした。あー、そういえばそろそろセカンドシティに着くあたりかな。行きよりだいぶ早かったな。

そんな呑気なことを考えながら前方を確認したら。

 遠くの方に薄っすら見えるセカンドシティとオレ達の間に、それはそれは巨大なスライムが立ちはだかっていました。

 ……何あれ何あれ何あれ!!


「は、はぁぁぁあ!?」


 ってかあ、って! あ、で済ませられるような相手じゃないよね!? もっと驚こう!?

「回避っ……は無理か! 向こうも気づいてるし、近づいてくるし、てか早っ! キモッ!!」

「おおおおおおちつけトキ! あんな奴わらわの魔法で退治してててやるやるわ!」

「イバラさんが落ち着いて! それ杖じゃないから! 薬草だから!」

 オレたちがパニックに陥っている間も、サホちゃんは不思議そうにこちらを見ているし、ゼンは口笛を吹きながら巨大スライムを観察している。

「サホちゃん! サホちゃん! 危ないから早くこっちに来て!!」

 ゼンは狙われることはないからいいとして、もう奴はすぐそこまで迫っている。顔がないのでわからないはずなのだが、奴がサホちゃんに狙いを定めているような気がしてならない。

 慌てるオレとは対照的に、サホちゃんは落ち着いていた。

「ああ、大丈夫ですよー。私のいた街の近く、よくいましたから」

「へ?」

 にっこり笑って何事もないようにそう告げたサホちゃんに間抜けな反応しか返せないでいるうちに、サホちゃんはくるりと後ろを振り向くとすぐ側まで迫っていた奴を真っ二つに切り裂いた。

 オレとイバラさんはポカンと口を開けたまま仲良く固まってしまった。

「けどおかしいですね。この子たち、この辺には生息していないはずなんですけど」

 そう言って首を傾げるサホちゃんに、オレは乾いた笑いしか出なかった。

 ごめん、イバラさん。君がサホちゃんに追いつくのは、大分先の話になるかもしれない。


 帰ってきましたセカンドシティ。

 と言ってもファーストシティには行く必要がなかったわけで、ただゼンの悪戯心とイバラさんの復讐心を満足させるために行っただけであって、むしろマイナスから今やっとスタートラインに戻って来たところという悲しい現実……現実? ゲーム世界だけど現実でいいのか? まあいいか。

 けどレベルも上がったことだし、サホちゃんも仲間になったしで、思ったより収穫は大きかったかもしれない。

「さすがに今回はサホちゃんのおかげで全然疲れてないな。アイテム補充だけしてさっさと出発するか?」

「私は慣れているので構わないのですが……いいのですか?」

 そう言ってサホちゃんはイバラさんを見た。オレもつられてイバラさんを見るが、特に疲れている様子はない。はて?

 イバラさんもわかっていないようで二人して頭に大量のはてなマークを飛ばしていると、それを見かねたゼンが口を開いた。

「お前ら引きこもりだろ?」

「オレは違う」

「わらわも違う!」

 抗議の声を上げたが、見事にスルーされた。

「サードシティはファーストシティより遠いぞ? たぶん今から出たら途中で野宿になる。それでも大丈夫かって話だ」

 なるほど。

 オレは大体の人間に意外だと言われるが、前の世界ではキャンプが結構好きでよく行っていた。オタクよりだからって引きこもりだと思うなよ? だから正直モンスターさえいなければ野宿だろうと問題ない。むしろ歓迎しよう。

 けどイバラさんはどうだろう? 野宿とか絶対したことないよな。

「馬鹿にするでない! わらわとて勇者のパーティの一員じゃ! 野宿くらいどうと言うことはないわ! さあトキ、さっさと出発するぞ。魔王の奴をいつまでも野放しにはしておけんからな」

 そう言ってイバラさんはさっさと歩きだしてしまったが、どうしよう。もうオレにはフラグにしか見えないんだが。

「大丈夫でしょうか?」

 不安そうに尋ねてくるサホちゃんに、大丈夫じゃないと思うなんて言えるはずもなく。

「まあ何とかなるよ」

 曖昧に笑って、オレたちもイバラさんに続いた。


 結果としては、野宿に慣れないイバラさんが全く眠ることが出来ず、道中寝不足と疲労でダウン。そのままゼンに担がれながらサードシティに到着することとなった。まあちゃんと到着出来たし、結果オーライってことで!

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