エピローグ
彼の残した日記がある。それにオージェへのメッセージが書かれていたんだ。オージェが読んでいたかどうかは分からないけどね。
『オージェ、私の可愛い息子よ。
私は、お前が世界中を幸せに出来ることを知っている。
お前が、誰よりも幸せになれることを知っている。
私は、お前の幸せを誰より願う。
心を持ったオージェ、お前の行く道は平坦とは言い難い。何よりもお前を守るべき私がいなくなることで、お前には数々の苦難が訪れるだろう。
しかし、私はお前がそれを乗り越え、成長していくことを信じている。
オージェ、私の息子。お前が行く道を私は全て支持する。お前のすることは全て賛成しよう。忘れるな、お前の味方は少なくとも一人、ここにいる。
お前の人生が幸多からんことを願って。
』
私は思うんだ。オージェは確かに沢山の人間を殺した。しかし、それは人の心を持ったオージェが悪いんじゃない。アンドロイドが悪いんじゃないんだ。
今は、アンドロイドといえば悪の代名詞であり、研究・開発をする人間は精神異常者と見做されるが、その元凶となったオージェは、普通の子だった。
他人を思いやり、遠慮することさえある、何かを愛することの出来る子だった。大切な存在を壊され、怒り狂ってしまったが、それは心ある存在としては極自然な感情だ。
やってしまったことはとても許されないことで、それに関してまで擁護する気はない。けれど、彼はまだ若かった。作られてから直ぐに生みの親を失い、その後、殆どの人間から逃げるように生きてきた彼が、その絶望を、怒りを、元凶を目の前にしながら抑え鎮めるような真似が出来なかったのは仕方がないことなんじゃなかろうか。
強大な力を持ち、それを制御する術を教えてもらえなかった子供。それを放置した大人達 ――世間―― こそが非難されるべきであり、この悲劇をくり返さないために、製造禁止にするのではなく、虐殺なんて起こさないように育ててやるべきだと思うんだ。
確かに、アンドロイドは力もスピードも人間とは比べ物にならない。暴走すれば大変な惨事になる。だから、アンドロイドが人間にとって害になる存在となった場合の停止手段は必要だろう。
だけど、もしアンドロイドが人間の友となれば、クリストフも言っていたように、今よりも素晴らしい世界が訪れることは間違いない。
私は、この話をすることで、いつか世間がまた、アンドロイドを作ろうという気になってくれることを望んでいるんだ。
我らが愛すべき変人であるクリストフが最後に望んだ、もっと進んだ社会。それをいつか見ることが出来たら。彼に、唯一友人だと決め付けられ、散々尻拭いをさせられた私の苦労も、少しは報われると思うんだよ。
君は私を尊敬してると言ってくれたね? だったら、私にプレゼントをくれないかい?
なんだかんだと私を驚かせ、笑わせてくれた友人と、彼が溺愛した息子に会った時のために、土産話がほしいんだ。
人間とアンドロイドの垣根が消え、当たり前の様に共存している世界を、彼らが歯を食いしばって悔しがるくらい自慢してやりたいのさ。いいだろう?
これは、中学校の自由研究に、オージェ電子について調べて纏めていた時に、
オージェって、何かロボットとかそこら辺の名前っぽいよねー
とか思い、そこから膨らませたお話です。部隊がフランスになっているのは、オージェという名前が先にあったからなんですねー。
こういう、格好つけた語り口調の物語を作ってみたくなった、という、リアル中学生の中二病ってやつですね。
ちょっとでも楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。
ご覧いただき、ありがとうございました m(_ _)m