第五話
我が家、モントリオール家は昔はただの豪族であった。周辺住民をまとめて暮らしていたが、建国時に初代王と共に戦った功績が認められ貴族に成り上がった。
規模としては、貴族といえど非常に小さかったが、祖父の計らいにより俺の父親の代でとある高貴な血筋をもつ母を娶り、名家の格が上がった。その分、現当主の父の仕事量は多忙を極め、月のほとんどを領地外で過ごしている。
今日は珍しく、父親が帰ってきており、家族総出での朝食を取ることになっていた。
元々、四男であった父クラウッジは家を継ぐことはないはずだった、裕福な家でもないから、お偉いさんの護衛として勤めていたところ、そこの娘と知り合い恋仲となった。しかし、父にはもともと将来を約束した人がいたが、その辺の詳細は知らない。結果として、その両方と結婚して、それぞれ子供を一人ずつ作った。そして他の候補者をおさえ、当主となったのだ。
最初はよかったらしい。しかし、母親は俺を産後が悪く亡くなってしまった、それ以降、父親はもともと付き合っていた女性によりを戻し、制視聴してからも俺と話すことはほとんどなくなかった。
今では話す機会といえば、月に何度か食事を取るのみとなっていた
会話といっても、執事長コニエルが報告をして、第2夫人とその子供である兄が少し会話をして終了だ。
非常に居心地が悪かったからか、昔の俺はほとんど参加しなかった。しかし、今では貴重な情報収集の場だ。
そんな俺がめずらしかったのか、最後に声が掛けられる。
「ふん、あと数日でワシはまた暫く聖都に行く。今回は長くなるかもしれん。くれぐれも問題を起こすなよ」
最近、コソコソと何かをしているのに気付いたか、はたまた、ただの苦言なのか。
朝食を食べ終わると部屋に戻り、未来に向けての行動に移る。なにせ時間がない。あの映像がいつ起こるかわからないが、一つ気づいたことがあった。
それは月だ。普段、月は三つあるのだが、あの日は重なっており、重月であった。その動きを考えると、どんなに早くても半年はある。しかし、たった半年だ。そのために、できる限りのことをしなければ。
さて、今日は何をしようか。そう考えていると、部屋が叩かれる音がした。
「おぼっちゃま、お探しのものをお持ちしました。」
入ってきた女中の持っていた本をみる。それは基礎魔術の本だった。頼んだこともすっかり忘れていた。
「あの方を訪ねてみてはどうでしょう?魔法の使い手で、坊っちゃまの母君にも教えていたそうですよ。」
亡き母の知り合いで、乳母として仕えていた人物だ。前世では関わり合いはほとんどなかったし、気付いたらいなくなっていた。
話を聞いてみるのもいいかもしれぬ。
「そうか、分かった。では早速話してみたい。今はどこにおられるのだ?」
「は、はい!今すぐお話をつけてきます!」
そう言うと、すっ飛んでいってしまった。
特に急ぎではなかったため、驚いてしまったが、まぁ、問題ないとして他のことにとりかかることにした。