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再びの故郷

「、さ、さま、起きて、、さい、様」


耳元で美しい声が聞こえ、微睡みつつもゆっくりと目を開ける



そこは何もないようで永遠に続いていて、実に幻想的な風景であった


「グレイス様!」


先程よりも大きな声で呼ばれ意識を取り戻す、放置していたようだ、


「あ、ああ、すまない」




前を見ると小さな女の子のような何かがいた


「初めまして、我が主でおらせられるセレスティア様の遣いで、クリスといいます」


クリスと名乗った精霊は小さく礼をする


「やあ、こんにちは、ここは?」


「ここは肉体世界と魂霊世界の狭間です」


狭間か、確かに現実の物と存在しない物とが混ざり合う状況を言い表すにはピッタリな言葉だ


「俺に何か?」


「あれ、ご主人様から何も伺ってませんか」


首をかしげる


「ああ、すまん、何も聞いていないな」


「分かりました、貴方をこの世界に導いたセレスティア様ですが我が主はここに来ることができません、そのため伝達役として私が来ました」


「そうだったのか、それはよろしく」


「はい、任せてください」


クリスは胸を張る


「では早速、主からの言葉を伝えますね」


「分かった」


「まず、あと半年と少し先、貴方がいるこの住居から南にある街に魔物の大群が押し寄せ大災害が起きます」


怪訝な顔をする


「記憶ではそんなことはなかったはずだが」


「今回の歴史ではプレイヤーと攻略者との会話の中で魔物の脅威を強調するために、昔に魔物によって滅んだ地かがあるとだすためです」


「それはまた」


主人公に都合のよい、それで死ぬ人など関係ないか


どこまでもあの女中心で世界は廻ってるんだと思うと胸糞悪くなる


「その進行から町を守って下さい、詳しいことはまた追って連絡しますのでそれまではお好きにくつろいでいてください、それとこれを」


透明な鉱石で出来た石盤が出現する


「これは?」


「スキルツリー画面です、この数字分だけ才能に振り分けることが出来ます」


女神が指差す先には300とあり、その数字の回りに三つの大きな丸が存在し、そこから木の枝のように伸びていく、丸の中には、剣、魔方陣、人間の体の簡略化されたようなマークが書かれている、よく見ると枝の先や途中には四角状のものがくっついている


「ふむ、俺には仕組みが分からないから君にまかせてもよいだろうか?」


「分かりました、では何かあった時のために50だけ残して、あとはこちらで振り分けておきましょう」


「助かるよ、このあとは帰るのか?」


小さな妖精は頷く


「今はまだ私は実体を持たぬ身なため、留まることが出来ないのです、ですが近いうちにまた来ますので」




「了解したよ、それでは次に会えるのを楽しみにしてるよ」


「はい!」



目を閉じる、不思議と眠くなってきた


~~~~


日の光が身体を照らし、外では鳥が冴えむ声が聞こえる、部屋の明るさからして昼を過ぎた頃だろうか


ゆっくりと目を開けると見慣れた部屋がそこにあった


豪華な家具、玩具


間違いない、俺が子供の頃に過ごしていた部屋だ


色んなことが起きすぎて、なんだか長い夢を見ていた気さえする、だが


「夢なわけないな」


夢うつつと忘れることの出来ない、はっきりとした記憶がこびりついている、そう、間違いなく俺は戻ってきたのだ



起き上がり、ふと近くにあった鏡が目に入る


「それにしても酷い姿だなぁ」


子供とは思えない太った体、不清潔による酷い体臭、装飾の付いた趣味の悪い服


当時の俺は傲慢で下の者には当たり散らし、我が儘で贅沢を好む典型的な駄目お坊ちゃんだった


堕落的な生活を送っていたために不衛生な体つき


それを指摘してくれる人もいないために悪化するばかり


「はぁ、思い出すだけで恥ずかしくなってくる」


そうこう自己嫌悪していると勢いよく扉が開き、人が入ってきた


「坊っちゃま、目を覚まされたのですね」


名前は召し使いのコニエル、俺のお世話をする筆頭執事だ


「よかった、ご無事で、心配しましたぞ」


「ああ、ありがとう」


一見、俺のことを心配しているように見えるが全く違う


俺はもう知っているのだ

この状況をつくったのはこの執事だということを。表では、尽くしているようにみせて、陰では俺を落とし入れようと画策していたのだ。当時の俺は気付かず嵌められてしまった。


「うう、ご無事で良かった、部屋のお二階から滑り落ちた時は胆を冷やしました」


「そうか、ありがとう」


「調べましたところ全ては掃除を怠った下級使いが原因です。やはり獣臭い犬供、せっかく雇ってやってるのに!」


そういい、一人の獣人の下級使いを手で引っ張る、見ると首には鉄製の首輪を下げており、そこから伸びた鎖を無理矢理、引かれて苦しそうだった、この時代、特に王国では人族以外は下等と見る習慣があり、特に貴族では当たり前だった


「しかし彼らも、人間とは違う下等生物なために、不馴れなのです、どうかお許しを」


コニエルはニヤニヤと下卑た目で、獣人は震えながらこちらを見る、何故なら通常は当時の俺は許すなとなく即刻、折檻を行っていたからだ


だが、今はそんな人間ではない。未来では、お世話になったのは、人よりも獣人であったくらいだ。


「そうか、分かった、不注意は誰にでもあるからな、次からは気を付けてくれよ」


「そうですよね、許せるはずもない、即刻すぐに処罰をって、え?」


思っていた言葉とは違うのか挙動不審になっている


「しかし、失敗か。最近、働きすぎているのかもしれない、獣人の休息日を少し増やすべきだな」


信じられないといった視線を向ける、貴族の常識からすれば獣人に人族と同列に扱うなどありえないことだった、


「そ、そうですね、伝えておきます」


まず遠い未来では俺は家から追放される、その原因のひとつとして家臣から落胆され嫌われていることが挙げられる。


風呂から上がり部屋に戻る


「う、うげ」


目の前に広げられた料理はとても子供一人で食べきるには難しい上に脂身たっぷりの品ばかりだった


これを昔の自分は食べていたのか




「どうしました?気に入らなければ別の物を用意させますが」



食事が進まないのを不審に思ったのかコニエルが尋ねてきた


「いや、食欲が沸かなくてな」


「もっと質素にしてくれないか?」


「といいますと」


「野菜とパンと、あとこのくらいなら肉とかもたべられそうだな」


俺は今日出た食事の中でも比較的食べれそうなものを指で指していく


「そ、それでは栄養価が足りなすぎます、もっと食べられた方が」


差した食べ物を見たコニエルは狼狽える、もっとって、コイツは俺を肥えさせて殺す気だろうか


「しばらくは体長のことも考えて、暴食は控えたいんだ、すまない」


ま、元気になっても戻す気はないけどな


「分かりました」


渋々だが納得してもらえたようだ


しかし


「腹が減った」


食事が終わり、さあ、寝ようと布団に入ったはいいが結局、食べられたのは野菜とパンと脂身の少ない僅かな肉のみ、食べ盛りの身体が満足出来る訳もなく空腹で眠れそうになかった


「今さら食堂に行って迷惑かけるのもなあ、、あ!」


あることを思い付く、記憶が確かならば家にもあったはずだ、思い付くやいなや部屋を抜け出す


歩くこと五分、小さいとはいえ小規模農家と同じくらいの家庭菜園に足を入れる


そういえば学園にいたときも同じように専用の畑に忍びこんだっけ


「今の季節だと何が収穫出来るだろうか」


俺は後ろに立つ人影に気付かなかった


「誰ですか?」


声のした方を向くと若い女性が立っていた、この時間は執事長など一部の人間しか立ち歩きが禁止されているため、油断していた、またはこんな夜遅くに物音がしたのを警戒して様子を見に来たのかもしれない


「騒がしてしまってすいません、私はガイウス、ここの次男です」


とりあえず、特にやましいこともないので名のる


「こ、これはご子息様、大変申し訳ございません」


さっきまでとは違い女性は顔面蒼白になる、実は俺の評判は大変良くないから無理のない話だ


全く面識のない人からも恐れられていた


「いや、実はお腹がすいてしまって、かといえこの時間では迷惑をかけてしまいました」


女性は少し考えたかと思うと


「それでしたら、こちらもどうぞ」


そういってバスケットを差し出される、中には、おにぎりが入っていた


「これは畑で取れた植物でつくられたものです」


それはハッサの麦といわれ、比較的温暖な土地ならどこでも育ち栄養価も高く、この国では馴染みの多い食材である。


長く保存が効き、安価なため食事には欠かせないものだが、少し硬く苦いため中流貴族以上になると食卓には上がらない。現にこの家でもハッサの麦で作られた食事は見ないだろう。しかし、自分は学生時代の頃は訓練などでよく食べていたため、あまり抵抗はなかった。


「それでは少しもらいます」


かじりつく、懐かしい味だ、予想以上にお腹が減っていたのかすぐに平らげてしまった、見ると女性が目を丸くしてこちらを見ていた


しまった、食べ過ぎたか


「すいません、美味しくて、つい」



「いえ、まだありますので、その、、貴族がこの食材はあまり食べないのが常識だと思っていたので、特にガイウス様は脂分の多く贅を凝らしたお食事がお好きと聞いてました。」


なるほど確かに、昔の俺だったら間違いなく食べなかっただろう


「ハッサの麦は腹持ちもいい、それにこのおにぎりは前処理もしてあり苦味がない、これなら我が食卓に並べますよ」


「そんなことは、お褒め下さりありがとうございます」


事実、いつも食べていたハッサの麦より柔らかく美味しい、これはきちんと調理してある証だろう


「ですが、意外でした」


「意外というのは?」


「あああっ、ごめんなさい、私、ここに雇ってもらってまだ日が浅くて、知っていることと言えばまだ噂程度で、その、聞いていたのと少し違うな、と」


なるほど俺の噂か、聞こえないように、追い出されて町に住んで初めて知ったっけ、確か


「出来損ないの愚豚とかかな?」


「っ、でも、少し話せば分かります、ガイウス様は落ち着いていて優しい方だと」


「ふふ、ありがとう、ですが」


「ですが?」


何を言いたいのか分かっていない



「使用人が主に、しかも直接に本人に伝えたしまっては罰っせられてしまいますよ」


「!?、申し訳ありませんでした」


今になってとんでもない事をしたという顔になる、面白くて笑ってしまう


「いいよ、気にしてません、誰も見ていないですし」


「」


「そろそろ、夜風も寒くなってくる、部屋に戻ります、今日はありがとう」


「こちらこそ、お役にたててよかったです、お休みなさい、ご子息様」


こうして、目的も果たしたため自分の部屋へ戻る、


腹も満たされためか眠くなってきたので真っ直ぐベッドに倒れこむ、そうしてこれからのことを考え始めた


このまま順調に行けば、あと一年足らずで学院に、それもお情けで誰でも入れるような学科に入学し、あの未来を辿るのだろう


前世では運よく生きてこられたが何があるか分からない、実際、女神のことを信じるならば、このあと魔物が攻めて来て大変らしいし


もう後悔はしたくない、そのためには、、、


「なんだってやってやるよ」



決意を新たに眠りについた


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