捨てられた奴隷
奴隷を買うために町の中心部まで来たのはいいが、ここで俺は重大なミスをしたことに気がついた。
「…金がない」
そう、お金がないのである、全く無いという訳ではないが奴隷を買うには全然足りないくらいにお金がないのである。
今の雷斗の全財産は異世界に来た時に倒したゴブリンの報酬の銀貨50枚程度
先ほどの宿で1ヶ月泊まれるかどうかである。
さらに先ほど前払いで銀貨45枚払ってしまっている、結果今の手持ちは
銀貨5枚である。
さて、どうしたものか
奴隷を買うにはお金がいるし、だけどさっきのギルドにもどってまた仕事をするのもな~
くそっ、ていうか銀貨5枚で何しろっていうんだよ!飯くらいしか買えねえじゃねえか!俺の馬鹿!もっと考えてから行動しろよ!
・・・自分で言ってて悲しくなってくるからやめよ
などと困りながらこれからどうするか考えながら歩いていると
とある声が聞こえてきた
「ふざけんなッ!てめぇの飯代だけでも金がいるんだぞ!全然売れないくせに金だけ使わせやがって!挙句の果てに売れねぇときた!」
男の怒鳴り声が聞こえる、どうやら誰かに対して怒っているらしい
「ひっ…ご、ごめんなさいっ頑張りますから・・・捨てないでくださいっ」
男が怒っている相手はどうやら若い女の子らしい、といっても首についている首輪を見れば一目で普通の女の子ではないことがわかる
「・・・奴隷、か」
なるほど、売れなくて機嫌が悪いのか
さらに聞いてみると飯代だけとりやがって、ね
自分で買い取っておきながら何言ってんだかこの奴隷商人は
そう、怒っている男は奴隷商人である
そして売れなかった女にただ不満をぶつけているだけ
とも見れるが、女の奴隷が売れないせいもあるのだろう、男の怒りはどんどん上がっていく。
「このゴミがッ金にならねぇならお前なんていらねえよ!」
「ッ!?、そ、それだけは!がんばりますからっ助けてくださいっ」
「黙れ!売れない奴隷は捨てるにきまってるだろ!」
男はそういい女の首輪をはずすとそのままどこかに行ってしまった
「・・・うぅ、・・・えぐっ・・」
女の子はしばらく泣いていた
雷斗はその光景を見ながらもずっとただ見ていた
「・・・・・」
すると女の子は泣くのをやめ、ただ乾いた目で空を見ていた
その目は全てをあきらめたかのような目だった。
雷斗はそこまできてようやく女に近づくため歩き始めた。
最初は気がつかなかったが女の子と雷斗の距離が5m程になったところで相手の女の子が気づいた、その目には恐れがなくただ絶望一色の乾いた目だった。雷斗はその女の前まで行き目の前まで行くとその場でしゃがみ、女の子の目にあわせるように語りかけた。
「生きたいか?」
雷斗が質問しても女の子は返事をしなかった、返事をして何の意味があるのだろう、という顔をしている気がした。
すると10秒程たち女の子がゆっくりと口を開いた。
「・・・何のために生きるんでしょか?私は親がいません、お金もありません、家もありません、なのに何のために生きればいいのでしょうか?」
「さっきまで奴隷として生きてきたじゃないか」
「でももう捨てられました、普通はこれで自由の身となり喜ぶでしょうが
私は捨てられたのです、お金もありません 何もできません ただ死ぬしかないんです、それが捨てられた奴隷である私の運命なんです」
女は涙を流しながらそういった、本人は気がついていないのだろう涙を拭こうともしない。
なるほどね、たしかにそうだな 奴隷として生きてそして捨てられた
自由になっても服を見れば奴隷や貧しい平民以下であることはすぐにわかる
服はぼろぼろ 靴もなく金もなく体は痩せ細っている
だれも助けようとはしないだろう
助けるということは相手を最後まで助けなければいけない
それがこの世界
だから誰も助けない死ぬしかない
―――――だが
「俺が助けてやろうか?」
俺の言葉に女の子は唖然としている
いきなりの言葉に驚いたのだろう
この場面での「助ける」は、面倒をみるということだ
ゆえに女の子はそれが本当か冗談かわからずにいる
その顔を見て察したのか雷斗が次の言葉をかける
「俺はいま奴隷を探していてね、買おうと思ったんだが生憎手持ちがなくてな、稼ごうと思えば稼げるんだが、俺はお前が気に入った、どうだ?俺と来ないか?」
べつに同情したわけではない
ただこの女の子が都合のいいときにいただけ
それだけだ、深い意味はない だが面倒を見るからには最後まで見るがな
さて、返事はどうかな?
「・・・えぐっ・・・ひっく・・うぇっ」
ええええええ
泣いちゃったよ!この子!
どないしよ、とりあえず抱きしめればいいのか?
いや、それで「触らないでください!」っていって叩かれるのは嫌だしな
頭をなでるくらいならいいのかな?
―――なでなで
「えぐっ・・・ひっく、あ、ありがどうございばずぅ・・」
どうやら正解みたいだ、だが汚い 鼻水が
雰囲気からして大人しい性格の子なんだろうが我慢の限界にきたんだろう
こういうときくらいは男ってやつをみせてやりますよ!
―――なでなで
まぁなでるだけですけどね
「さて、ずっとここにいてもしょうがないし宿に行くぞ」
「は、はい!よろしくお願いします!」
その笑顔は先ほどとは違うとてもいい表情をしていた。
はぁ 金どうすれば…




