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ゆくえ
つり橋の向こう 沈みゆく日輪が
視界のすべてを赤く染める
海も空も波間を行くセイルも
対面する白き月輪さえも
西へ急ぐ貨物船が
海面に長い影をともない
汽笛を響かせ 艦船が東へ急ぐ
満ち引きする潮騒に耳をすませ
砂浜に身をゆだねる私にも
赤の世界は容赦なく降り注ぎ
憂く心を照らし出す
あの雲はどこへゆくのか
かの船はどこへゆくのか
私はどこへゆくべきか
問うても返らぬその答えは
波音に揉まれ泡沫に消えた
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瀬戸内に生まれ育ち、海はいつでも身近にありました。
東京湾に住み、波音も聞こえぬ海はどこか遠い存在になりました。
故郷の海が懐かしく、「遠きにありて思ふもの」となってしまいました。