誕生日
誕生日 誕生日 それは年に一度 自分が特別だと思える日
とても大切で とても尊くて とても奇跡で
家族から祝福を受ける日
けど
その一日が特別じゃないことを 私は幼い頃に突きつけられた
当たり前だった
だって 一年は三百六十五日しかない
当たり前だった
だって 私は片割れだったから
当たり前だった
だって 血縁でもないおじさんが同じ誕生日だったから
あぁ 私の誕生日は誰かのおまけ
私の誕生日は ケーキを食べる口実
私の誕生日は なんてことのないお正月の続き
私の誕生日は・・・ なんて意味のない日
実家を離れて ケーキなんていつでもコンビニで買えて
自分のお金で生き始めて 誕生日なんて尚更どうでもよくなってた
誰かの誕生日を祝うのは好き 本当に特別だと思えるから
私にも優しいその人達が生まれてくれて 出会ってくれて
今も生きていてくれて 本当に嬉しくて めでたくて 愛でたいから お祝いする
でも 自分のこととなると別
過去の記憶が蘇って 苦くて 苦しくて 誕生日は嫌なことばかりを思い出す
ケーキ店に行っても なんだか食べる気が失せて
ケーキを見るだけで過去を思い出して 結局買わずに店を出る
物が欲しいわけでもなくて 誰かに隣にいてほしいわけでもなくて
ただ 誕生日が消えてほしいと思うだけ
でも 本当は
ただ一人 自分だけのためにお祝いをしてほしかっただけだった
片割れじゃなくて 誰かと同じじゃなくて ついででもなくて
ケーキの口実でもなくて 三が日の後でもない
他の誰でもなく ただ私のために誰かから一言が欲しかった
だから私は『無月』になれてよかった
『無月』になって、たくさん知り合いが出来て
兄のような 弟のような 妹のような人たちと出会って
私は初めて自分だけのための言葉を貰えた
別れもあったし 良いことばっかりじゃなかったし 辛い時だってあった
だけど
『私』は とても嬉しかったんだ
それだけのことが 画面の向こうで号泣するほど 嬉しかったんだ




