ある生き物の話
独りぼっちの その部屋で
何かが 一人で 泣いていた
その何かは愚かで
とても臆病で
認めようとはしないけれど とても寂しがり屋で
けれど
とても 強く見えてしまう生き物だった
けれど 生き物は知っていた
自分は 強くなどないことを
自分は 誰よりも弱いことを
自分が 誰よりも強欲で けして手に入らないものを望んでいることを
欲しい 欲しいと望みながら
その手を伸ばす方法も知らず
実のところ 手にすることすら 諦めていることを
だから 生き物は
自分の悲しみに蓋をした
『伝える方法がわからない』
と
『人に向けてはいけない』
と
『どうせ わかってくれない』
三つの重しをつけ もう二度と誰に開けられないように
光りすら拒んだその部屋で
声を上げずに ただ泣いていく
何が悲しいのかが わからない
何が辛いのかも わからない
どうしたいのかも わからない
どうしたら変わるかすら わからない
多くのわからないを積み上げて
生き物はただ 下を向く
自分の歩いた道はただ虚しくて
振り向く過去には ただ悲しさが溢れて
『あぁ 全ては私が悪かったんだ』と 生き物は呟いた
自分の歩く道はただ辛くて
足取りすら重く 前を向くほどの理由もない
『あぁ どうせまたうまくはいかない』と 生き物は失笑する
かつて繋いだ掌の温もりを見ては
虚しくなって 握りしめる
過去は過去 ただ辛いだけ
それは輝いていても いなくとも同じで
明日の力へとは 変わらない
そして
その全ては己が悪いのだと
生き物は知っていた
前を向けず 後ろを向かず
横には何もなく 上を向くほど前向きでもない
俯いて 下を向いて
なのに 止まることも出来ないで
生き物はただ 深くかぶった帽子で全て隠す
これが一体 何なのか?
これは ただの悲しい生き物の話
独りが寂しく 一人が辛く
独りで生きることも出来ないのに 一人で在る
ただの 物悲しい生き物の話




