木々
私は何がしたいんでしょうね?
子どもの頃 近くにあった木々
春に私を励ましたのは 庭にあったミモザ
大きく 一角を包むように存在し
そこが自分の場だというように堂々と立っていた
春になれば まるでカーテンのように垂れ下がった黄色の花
けれど その木は近隣の人に『邪魔』と言われていたことを私は知っていた
夏に私を励ましたのは 校庭にあった柳の木
遊具の間にあったその木は 緩やかに曲がり
人が背を預けるのにはちょうどよく 流れる枝は風によって心地よい音をたてた
一人でいても 誰とも遊ばなくとも 私はそこで時間を潰すことが出来た
木のことなんて誰も見向きもしないことを 私は知っていた
秋に私を励ましたのは 学校の隅の銀杏の木
銀杏独特の薄いながらも明るい黄色
誰も見になど来ない飼育小屋の隣 そこは私の居場所だった
まっすぐに伸びた幹 太陽のような色 全てが私には眩しかった
その場所がもう荒れ果てていることを 私は知っている
冬に私を励ましたのは 近くにあった名も知らぬ木
林からも外れた場所 たった一本で立つ落葉の木
花を見たことがなく 夏には緑の葉があったことは今もうっすら記憶にある
理由もなく好きで よく近くで眺めていた
けど その木はずいぶん昔に切られてしまった
私を励ました木々 私が好きだったもの
もうそこから なくなってしまったもの
ただそこにあっただけの木々
見て 触れて 傍にいた たったそれだけ
言葉がなくても 意味がなくても 理由がなくても
私を寄り添わせてくれた
拒まないでいてくれた
背中を預けたい
何かに触れたい
綺麗な色が 景色が見たい
風を感じたい
そうした思いを向けさせてくれた木々は もういない
確かにそこにあった私の場所は もうどこにもありはしなかった




