誰かへと
恥ずかしいので、これ以降詩では前書き、後書きを書くことを放棄します。
「過去→現在」
私の見える範囲は きっと狭い
一対一なら ちゃんと話せるのに
一体五になると そこから逃げ出したくなる
『私はここに居なくていいんじゃないか?』
そんな考えが頭に浮かぶ
部活やクラブでも そうだった
最初の少数が 誰かをきっかけに大人数になると
決まって私はそこに行くのをやめてしまう
それを誰かに引き止められても
その考えをいかに否定されても
私自身が そう思ってしまう
そもそも あまり人と話が合わない私が居れば
まとまっている大人数の輪は きっと乱れてしまう
なら 私は居ない方がいい
だから 私は遠くから眺めるだけでいい
一人 ゆったりと椅子に座って
他の人たちが話したり 騒いだりしているのを
お茶を片手に見ているだけでいい
そう思っていたのに
私がそうしているところに 座ってくれた人たちがいた
空になったカップにお茶を注いで お菓子を差し出しながら 微笑んでくれた人がいた
「泣いていいんです」
いつの間にか零れていた涙に そっとハンカチを差し出してくれた人がいた
「無理をしてほしくない」
そう言って二人は立ちあがり
そっと私の肩に触れて 背中から抱きしめてくれた
「「ここに居るのは あなたの味方です」」
逃げた筈の場所は いつしか私の居場所となって
私は誰よりも 何よりも大切なものを得て
その人たちへと笑んでいた
「思い」
私は私が嫌い
でも
私じゃないあなたは
こんな私を 褒めてくれた
こんな私を 『友達だ』と言ってくれた
慣れていない褒め言葉に 私はぶっきらぼうになり
『友達』という響きを 何度も思い出しては大切にした
「ありがとう」
そう伝えようとするたびに
口走るのは別のこと
「大好きだよ」
言おうとすると 別の人が来てしまう
伝えたいけど伝えられない
単純すぎるこの思いが
私の中で行ったり来たりを繰り返す
私はこの思いを あなたに伝えることはできただろうか?
「友達になってくれて ありがとう 大好きだよ」
たったそれだけの 私の感謝の言葉を
「近所のおじさん」
泣きたいときに泣ける人が
泣くべき時に泣ける人が 羨ましい
私は泣けなかった
『祖父』と言ってもいいほどの優しさと 温もりをくれたおじさんの死を知った時
涙は 出てくれなかった
家族はそれを『強がっている』と思ったことだろう
でも そうじゃなかった
毛布をかぶって 布団にもぐりこんでも
本当に涙は 出なかった
あるのはたった一つの疑問
「何で?」
それだけで
病気と聞いても その疑問は消えることはなかった
でも
一か月経ち 半年経ち
いつもの日常におじさんがいないことに
ただ ただ 喪失感だけが私を襲った
子どもの時から外で遊んでいた私を
からかいつつも いつだって飴玉をくれたおじさん
一年経った今ですら 涙は出てくれない
私は 認めたくないのかもしれない
だから
葬儀にも出なかった
未だに線香すらあげに行けずにいる
五年という時が流れた今でも
私は心のどこかで期待しているのだろう
どこからかひょっこりやってきて
私をからかって 楽しそうに笑ってくれるおじさんの姿を
ねぇ おじさん
私はいつになったら
おじさんの死を認めてしまうんだろう?
大好きだったよ
私の身近にいてくれた 優しいおじいちゃん
「多くの恩人へ」
私はいつだって 半端だった
親兄弟 友人 はては大して仲が良くもない知り合い
誰の話も聞いてきた
でも
私は人の話を聞くことしか 出来なかった
仲裁に入るわけでもない
そんな自分に内心でイラつきながらも
私は何もしなかった
そのことをある人に相談したとき
その人は 私をバカになんかしなかった
「人の話を聞くのは 誰にでもできることじゃないよ」
そう言ってくれた
他の人からすれば ありきたりな言葉で
意味なんてない言葉かもしれない
しかし その一言は
間違いなく 私を救ってくれた
私には恩人や恩師が多すぎる
あの人たちにとって 私との出来事はごく些細なことばかりだろう
それでもかまわない
私は確かに救われ 多くを教わり ここに居る
その事実は誰もが否定しても 変わることはない
だから あの時伝えることのできなかった感謝を
今 伝えたい
ありがとうございます
「ある友人へ」
陽にあたることなどないと思っていた我が子が
あなたのおかげで
陽を浴びることができた
私はあなたが思っている以上に 深く感謝しているんだ
私の詩にイラストがつくなんて 考えたこともなかった
大勢の人に見せるなんて
私の性格上 不可能だとわかっていたからね
だから
あなたがきっかけをくれたことを
本当に感謝しているんだ
この言葉たちを口で言えたらよかったんだけど
恥ずかしくてね
それに文章は物としても 心に残るから この方がいい
それにこの感謝は私の分だけじゃなく
『イラスト』という伴侶を得た あの子の分でもあるんだ
だから
手紙のような 詩のような
こんな曖昧な文章にして 私なりに感謝の形で伝えよう
ありがとう
本当にありがとう