表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/62

想い

これにどんなことを想像し、思うのでしょう?


あなたがくれたのは たった一つの言葉でした

それはきっと 長い人生から見ればごく短い時間でした

でも 大好きでした

あの何気ないひととき

話すことが下手糞な私の言葉を

家族でもないあなただけが 聞いてくれた

それがどれだけ嬉しかったかなんて

言葉にすることが出来ないんです



もう あなたはいないけど

きっともう あなたが知っている私なんてどこにもいないけど

私はあなたが大好きでした


本来 面と向かってこの言葉を向けるべきあなたは

もうどこにもいないのに

今更過ぎる思いと 形に出来た言葉を

あなたは笑ってくれるでしょうか?

こんな不器用な私を

さぞ強そうに映っていただろう私の こんな姿を

『似合わない』と言って 笑ってくれますか?

あの頃のように

私の頭に触れながら からかうように笑ってくれますか?


私とあなたの思い出は

いつも 空の下でしたね

青い空 赤い空 灰色の空 ごくごく稀に黄色い妙な空

会ったり 会わなかったり

あなたの車に近いものを見るたびに駆け寄っては

別の人でガッカリしていたのは 私だけの秘密

『最近 どうしてる?』

私の好きな笑顔と 飴を投げられながらあなたが言ってくれるその言葉が好きでした


話すことが下手な私が あなたの前ではどこにでもいる子どもになって

たくさんたくさん 楽しいことだけを話そうと必死だったんです


辛いことも何もかも覆い隠して 笑って見せていました

あなたがくれる あの時間が

あなたがくれた あの言葉が

あなたがくれた 甘くておいしい飴が

他のどんなことよりも 私に力をくれたことを

きっと 最後まで知らなかったでしょう?


だって私自身 今まで気づけなかった

あなたと会わなくなって 数年

あなたとあぁした時間を過ごさなくなって どれほどか経って

あなたを失ったという現実だけを突き付けられて

そこからさらに数年経った今 理解してしまうなんて

なんて皮肉なことでしょうね?


あなたの死を知ったとき 私は泣かなかった

泣いてしまったら あなたの死を認めてしまう気がして

泣くことを拒んでいた

あの頃の私は 『死』を知らぬほど幼くはなく

しかし 認めてしまえるほどの強さはなかった

疑問すらも言葉にしてしまえば

あなたの死を認めてしまうようで 言葉にならなかった



あの車種を見るたびに 今も期待して

運転席を確認してしまうのは 私の悪い癖

あなたはいない

どこにもいない

あの頃の心地よい時の流れも 笑顔も 言葉も 甘い飴も

記憶の中にしか存在しないことは わかってる


だけど

記憶という曖昧なものだけに 私は任せておきたくない

『あなたのことを忘れない』と誓えない

人の記憶は不完全で 約束とは風化して簡単に脆くなってしまうものだから


私はあなたが好きでした

あなたと過ごす時間が好きでした

あなたのことを 私がどれほど知っていたかなんてわからない

でも あなたがくれた温もりを 私は覚えています

私が感じたことを ここに残すことで

あなたからもらった優しさの一片を話すことで

その温もりも 優しさも 心遣いも 心地よさも

あの日と同じ 拙い言葉で

覚えていてみせますから


あなたはもう どこにもいない

でもあなたは

確かにここにいるんです

全部はもう 見えないかもしれないけど

それは本当に あなたの欠片でしかないだろうけど


私があなたを知っています 覚えています

消えません 消させません

一生 思い続けます


『さよなら』 嫌いなんです

だから

私はあなたに言いませんよ? 何があっても 絶対にね



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ