天邪鬼
サブタイトルは、どっちに対しての言葉なんでしょうね?
ねぇ お前は覚えているだろうか
私とお前のの出会いは 誰に話しても最高の出会いとは言い難いもの
私もお前が好きじゃなかった
お前も私が好きじゃなかった
だからこそ 私はずっと思ってた
あぁ 私たちはなんて対等なんだろうって
お前は誰よりも母に懐き
最期の一瞬すら 私よりも母が好きだったことを表すように死んでいった
それが実にお前らしくて
視界がぼやけていく中で 自分が笑ったことを 今も覚えてる
お前が病気だったこと
お前の命が一年どころか たった数か月後の年越しすら無理だって言われていたことを私が知ったのは
お前が死んだ後のことだった
家族の誰もが 私がお前を嫌いだと思ってたんだろうな
それは正しい
お前はいつも私が欲しいものを持っていたから
母の愛も 誰にだってかまわれるところも それなのに自分が好きな相手にだけ懐くところも
その癖に人見知りで 怖がりで 寂しがり屋で 臆病だった
私にそっくり
そっくりだったからこそ 私にないものを持っていたお前が羨ましくて 妬ましかった
お前のことが嫌い
それは今も変わらないし 家族の認識は正しかった
だけど 私は
お前のことが大好きでもあった
外に行ってしまったお前も 他の誰よりも私は探し続けた
『車に轢かれたら』 『心無い人間に何かされたら』
『怪我をしたら』 『水辺に落ちたら』
お前が外に行くたび 私は不安で怖かったんだよ
夜の闇よりも 自分がそうなることよりも
お前が私の知らないところで傷つくことが 何よりも嫌だった
私は正直なんかじゃないから
お前を捕まえたとき 酷いこともした
お前も負けじと 私から逃れようとしたなぁ
お前も 私には素直に甘えることはしなかった
それなのにお前は
私が体調が悪くて寝てるとき 悲しくて一人で声を殺して泣いているとき
いつも傍に居てくれた
何も言わない 話しかけもしない
かといって 寄り添うわけでもない
独特な距離感を取りながら 私を見てた
お前が死ぬ前日の夜
いつも通り 隅にいたお前に私は言ったよな?
『精一杯生きてくれ
ずっとなんて言わないから 一年なんて言わないから
どうか 少しでも長くここにいて』
お前にしか聞こえないように
他の誰にも聞かれないように
暗い中 明かりもつけないで言った私の言葉に
お前はあの日 珍しく返事をした
それなのにお前は
私がやっと帰るというところで 呆気なく死んでしまった
私はその日 どうやって帰ってきたかもわからなかった
他から聞こえた『早すぎじゃね? あのチャリ』なんて声を聴いて 校門を抜けたことはかすかに覚えているが
それ以降 どの道を通って どうして帰ってきたのかを覚えてない
お前を抱いて泣く家族たちの前で
私が流した涙の数は きっと誰よりも少なかったことだろう
なぁ 私の弟よ
血の繋がった実の弟よりも 誰よりも私に似ていた 人ではなかった弟よ
私はお前が嫌いだった
私はお前が気に入らなかった
だけど
私はお前が好きだった
今でも体調不良の時や 辛いときに
あの呆れたような視線で こっちを見ているお前がいる
何も言わない 言ってくれない
傍に寄ってはくれない
わかってるよ
それが私とお前との距離感なんだろ
『俺が見てるのに 何やってんだ』って
『情けない』って あの溜息をついてるんだろ?
お前は 素直に『ガンバレ』なんて言ってくれないもんな
知ってる
だってお前は 私の弟だ
そんな言葉を たとえ夢の中でもストレートには言ってくれない
なぁ 私はまたお前に会える気がしてならないんだ
それはきっと 今じゃないし お前のそっくりな誰かにじゃない
きっとまた 最悪な出会いから始まってしまうんだろうけど
それも私たちらしくて いいんじゃないかな?
私は別れが嫌いだから 絶対にあの言葉は言わないし
とても無口だから 再会を約束する言葉すらまともに言えないけれど
早く帰ってこいよ 弟
そうじゃないとまた私が 探しに行く羽目になるだろう?
私は短気だから そんなに待ってなんかやらないからな
大好きで 大切で 大嫌いで ムカつく
私のことが大嫌いだった 太った黒い猫の弟よ
もうすぐ二年、弟のことを残しておきたかったんですよ(苦笑)




