シリーズ1 来世
昨日投稿したものの続編です。
作者自身が報われてほしいと願った末に生まれた作品であり、一番最初に私に読者を得るということの喜びを教えてくれたシリーズです。
作者の思い入れなど戯言にすぎませんが、そんな作品を少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「アザレア」
運命のようにあなたと出会い
片割れを探し続けた鳥のように
私とあなたは惹かれあった
そして
当たり前のように 私はあなたに恋をした
入学したばかりの高校の
あなたは誰もが認める生徒会長
才色兼備 文武両道 頭脳明晰
あなたが入学の挨拶のときにした 突然のプロポーズ
多くの人は驚いていたし
私自身もそうだったけど
驚きよりも強い喜びが私を満たしていて
何故かわからないほどあっさりと
私は頷いていた
まるでずっと昔から
この日を待っていたかのように
「私もあなたが好きです 付き合ってください」
あんな言葉を初めて会ったあなたに言うなんて
自分でもびっくり
でも
後悔なんてしてない
あなたがそうだったように
私もあなたに一目惚れしたんですから
今度こそ
私とあなた
そして
あなたを慕う皆と共に生きましょう
あなたたちと
ずっと一緒に
「ゼフィルス」
何故 あんなことをしたのか
自分でもわからない
だが
理由など必要ないほどに
私は君に自然と恋をした
新入生を迎える会の中
私は周りの止める声も聞かずに
彼女に向かって 言った
「一目惚れだ 私と結婚を前提に付き合ってくれ」
羞恥などなく 後悔はない
聞こえてくる全ての声を無視し
彼女の答えを待った
「私もあなたが好きです 付き合ってください」
その言葉に
自分がどんな表情をしたのかはわからない
ただ
頬を赤く染めた君に見惚れたのは
自分でもわかる事実だった
君には知ってほしいことが多くある
私と 私の家と 私の周りにいる多くの信頼できる者たちを
そして
私もまた 君を知りたい
君と 君の家族のことを
また あなたと出会うことができた
今度こそ
あなたを離しはしない
共に生きよう
幸せだったあの日々が
今度こそ 永遠に続くように
「ランシア」
彼の告白を止めることなく見届けた私は
何故かわからいほど安心していて
そして
どこかでそっと嬉しくて
悲しかった
突然の彼の告白
それを受ける彼女
それは初めて見る光景なのに懐かしく
悔しくてたまらないのに嬉しかった
何故かはわからない
でも
二度と揃うことのなかった何かが
綺麗に揃ったような
そんな気がする
私の恋の成就はなくなったのに
「これでいいのよ」
そんなことを呟いてしまう自分が
ここに居た
私は片思いでもいい
それは悲しくも 重くもなく
彼と彼女の幸せを
友人として 横で見ていたい
それぐらいはいいでしょ?
お二人さん
久し振りね
また あなたの勝ちかぁ・・・
悔しいなぁ
でも それ以上に
あなたと共に居られることが 今は嬉しい
「ユスラ」
入学式から帰ってきた姉は
どこか嬉しげで
こっそりと囁くように教えてくれた
「私 告白されたんだ」
姉のその笑顔は とても幸せそうだった
姉が連れてきた恋人と友人は
初めて会った筈なのに
どこか不思議な懐かしさを感じた
四人で話しているときも
まるでこうしているのが当たり前のように
楽しくて 懐かしくて
何故か 涙が零れてきた
まるでこうなることを
何十 何百年も前から
待ち望んでいたかのように
姉さん
姉さんたち三人を占ったら 奇妙な結果になったの
『前世より続く深き絆 今一度結ばれん
その縁 永久に切れることはなく
幸 多き道よ』
まるで 神さまからのメッセージみたいじゃない?
私はいなくてもよかったのに
でも ありがとう
また こうして姉さんの笑顔が見られる
姉さん 義兄さん
今度こそ ちゃんと幸せになってね
「イグニート」
私の主は生涯 あなたただ一人
あなたに仕えることが
前世より続く 私の喜びなのですから
この時を待っていました
前世の記憶を持ち あなたに仕えるこの日を
あの時居た全ての者が揃う この瞬間を
前世とは違い 全ての者が皺背になるだろう現世の日々を
私は見守っていたいのです
前世のあなたも素晴らしかった
だが 笑ってはいなかった
だから 笑ってください 我が主よ
その笑みを 愛しい者たちへ向けてください
なぁ 前世の私よ
我らの不変の誓いを 私は守ろう
ただ 現世のこの方々の笑顔を見守り続けよう
そうだな 来世の私
現世も来世も知る者として
我らは共に あの方々を見守ろう
その傍らにあり続けることを
我らの不変の誓いとしよう
「ミモザ」
傍に居ることが当たり前で
横か後ろで支えるのは暗黙の了解
でも
そんな彼に 私はずっと恋をしていた
私はこの思いをずっと知っていた
いつからかは もうわからないほどにその思いは在り続け
私からは伝えないと決めていた
彼が気づくその日まで この思いは誰も知らなくていい と
でも あの日
不良に絡まれた私のせいで
一切の迷いもなく 喧嘩を始めたあなたたち二人
ボロボロになって勝った後の告白は 少し卑怯よ
「私もよ」
誰よりもあなたが好き
どうして こんなに嬉しいのだろう?
まるで ずっとこうすることを我慢してたみたい
こんな温かい思いが
出来なかった瞬間があったかのように
遅くなってしまったけど
ようやく あなたに伝えられる
あの頃も 今も
ずっとあなたが好きだった
愛しているわ シオン
「シオン」
オレとお前は幼馴染で 横にいるのが当たり前だった
笑って 泣いてのあの日々の中で
お前はいつから
オレを好きになったんだ?
お前が不良に絡まれたあの日
オレとあいつは
気が付いたら 不良どもを殴っていた
言葉で表せるものは全部置き去りにして
思う存分 不良どもを殴り倒した
ボロボロで勝って
でも
頭の中はスッキリしていた
不良を殴った理由 それは
「オレ お前が好きだ」
何だろうな? この気持ち
こんなこともうまくできなかったときが
昔あったような気がする
でも だからこそ
今がそれ以上に嬉しいんだ
やっと 伝えられた
やっと 君と居られる
やっと 君を愛することができる
もう二度と
君を離しはしない
「ゼラム」
あいつに恋していたお前に
私はいつだって 恋をしてたんだろう
まぁ 少し
遅すぎたがな
『男女間の友情』と決めつけたのは
きっと自分自身
この感情に気づくことなく
『友情』というカテゴリーにして
あいつが告白して ようやく気付くなんて
バカだなぁ 私は
大丈夫
今更 『お前が好きだ』なんて言わないさ
私はお前と親友でありたいし
あいつとも友達でありたいんだ
「おめでとう 二人とも」
そう言うのが 友人としての務めだろう?
でも 何でだろうな
懐かしくて 嬉しくて
「私はいつだって お前たちの味方だから」
そんなことを
意味もなく呟いていた
フフ 今更だな
私はいつも遅すぎる
だが 後悔はないさ
『友』という形であっても お前の傍に居れるなら
それ以上は望むまい
「ルティア」
ずっと知ったよ
あの人が兄貴を好きなことも
兄貴がずっと
あの人をどっかで想ってたことも
兄貴の背中を追いかけながら
アタシは ずっと兄貴が好きだった
実の兄妹でも
結ばれることのないものであっても
アタシはずっと想い続ける
じいちゃんに話したら
「それはきっと辛いぞ
それでもお前は その意地を貫くか?」
アタシが即答したら じいちゃん笑ってた
兄貴があの人を好きになってもいい
でも
アタシはあきらめないから
義姉さんね
なんか懐かしいんだよね その響き
そう思ってもいい人が 前にどこかにいたみたいな
変なカンジ
久し振り
今度は正々堂々と
あの人を取り合いましょうよ
アタシは諦めませんし 負けませんよ?
「グラジオス」
なぁ ばあさん
ワシは幸せ者だよ
お前と会えて 子どもに恵まれ 孫まで出来た
ワシはこれ以上の幸せを 他に知らんよ
先に逝ったお前に
ワシはせめて たくさんの土産話を作らんとな
お前がくれた多くのものを 少しでも返せるように
「じいちゃん
オレ 高校卒業したら結婚するよ」
ハハハハハハ
ほら お前がくれたものが
また ワシを幸せにしてくれる
さて 少し説教でもしてくるとするかな
この考えなしのバカ孫に
懐かしいのかもしれんが ワシにはわからん
ただ
ワシは幸せだよ
こうしていられる穏やかな日々こそが
かつて望んだもの そのものなのだから
幸せになれ 我が息子よ
『英雄』ではなく
今度はただ一人の男として
幸せな人生を歩むのだ
「ルベール」
生徒会長の入学式での突然の告白
剣道部のエース二人組による喧嘩騒動
まったく
楽しいですね この学校は
迷いますね
どちら取材すべきでしょうか?
それとも 両方を取材し どちらかを次号に?
いえいえ それはもったいない
こんな面白いことが二つも起きたのです
どちらも掲載すべき・・・
A班! 生徒会の元へ急行しなさい
B班! あなたたちは剣道部のエースの元へ
C班! 私と共に生徒への聞き込みに来ますよ
取材が終了次第部室に集合し 文章をまとめる作業に移りなさい
さぁ! 忙しくなりますよ!!
楽しいですね まったく
こんなにも心躍るのは どうしてでしょう?
懐かしくて それでいて心が安らぐような・・・
まぁ いいでしょう
全てはいつかわかる日が来るんですから
さぁ 勇者殿 長よ
いつか 皆が望んだ日々です
そして
あなた方が出会う日も
そう遠くはないでしょう
「語り」
彼らの話をしよう
とある学校のある生徒たちの話を
それは彼らの日常の話であり
ありきたりな恋物語
そして これは
前世を知る筈もない彼らの
かつて思いを馳せた 来世の物語
途切れることのなかった『絆』
消えることのなかった『思い』
『友情』 『恋心』 『忠誠』 『親心』
消えてなくなる筈だった記憶の欠片は
彼らの中に残り続けた
かつての彼らの願いは唯一つ
「共に生きていたい」
それだけだった
十一人 誰一人の例外なく 彼らはそう願い
その思いに 違いなどありはしなかった
だが
前世では それが許されることはなく
彼らの物語は
来世でようやく ハッピーエンドを迎える
悲恋に終わった彼らの恋は成就され
片思いし続けることを選び
ただ幸せを願い 祝福し
その傍らで見守ることを誓い
ただ 友であることを決め
正々堂々と 立ち向かうことを決断し
祖父として 孫の幸せを祈り
彼らを知り 見守る
彼らの話に『善』も『悪』もなく
世界など関係すらしない
彼らの思いも 人生も
後世に語られることはないだろう
しかし
彼らは誰よりも 何よりも満ち足りた人生を送り
彼らは幸せな最期を迎えるだろう
愛した者と暮らし
親友 家族 心を許した者たちと生きる
彼らの理想はここにあり
次など 考えるのも野暮だろう
今を愛する彼らの
これは前世と来世の物語
いかがでしたでしょうか?
シリーズ1はこれにて終了となりますが、それ以降はちまちまと詩を投稿していきたいと思っています。