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我在り 3

「雨男 雨女」



人が嫌う雨を呼び込む私は

誰よりも雨が好きだった


雨は 誰かを除け者になんてしない

男も 女も 老人も 子どもも 大人も 動物も 植物も

そこに在る全てを濡らしてくれる

楽しいことも 悲しいことも

好きなことも 嫌なことも

忘れたくないことも 忘れていたいことも

濡れているときだけ その全てをなかったことにしてくれる


あぁ 雨よ

あなたはなんて平等で 公平だろうか

全てを受け入れ 大地を潤し 多くを洗い流していく

あなたのそれを愛と呼ばず 一体何を愛と呼ぶ?


あぁ 今日も雨だ

今日もあなたの愛が 降り注いでいる

なんて優しく 心地よい日だろう






「眼鏡」




このぼやけた世界を

目がいい人たちはきっと知らない


もう随分 前のことになる

私の目は 少しずつ遠くが見えなくなっていった

ぼやけていく世界に最初こそ戸惑い 困り果てたものだったが

私はそれが嫌いじゃなかった

生活に支障をきたし 眼鏡を初めてつけた時の

景色がはっきり見えることのありがたさを知った

今では体の一部と言っても過言ではないそれは 私にとってのもう一つの目

だが

私は悪戯に眼鏡を外しては 景色を眺めた

まるで涙を流した時のように景色はぼやけ

光はまるで花火のように映り

色は皆 いつもよりも優しい気がした

両目の視力の差異がさらに私の世界を変えて

私はそのまま一人

自分の本当の目で 世界を見る

全て 正確には映りはしないぼやけた世界は

まるでファンタジーのようで

優しく私を包んでいた


目が悪いことは 私にとってマイナスなんかじゃない

むしろ

私にもう一つの別世界を見せてくれた

一つの可能性となってくれた






「元 良い子」




以前私は 良い子だった

休日になれば早く起きて 家事をこなし

平日の学校では他のことはうまくいったためしはなかったが 勉強で困ったことはなかった


でも いつしか気づいた

こうしていたって

良い子にしていたって

誰も褒めてくれない と

見ていてなどくれないのだ と

誰も私なんて気にかけない

だから

私はある日を境に それらをやめた

幸い 私の代わりはいた

そこから聞こえる不平不満を聞き流し 陰口をたたかれ

その陰口すら人を経由して聞こえてくる

慣れていた だから 平気だった

わかりきっていた だから 怒りすら隠してみせた

だが

あの人がそいつを褒めたことだけは どうすることもできなかった

「私は! 褒めてくれなかったくせに!!

 私たちは! 当たり前だったくせに!!」

言いたかった

怒鳴りたかった

泣き叫びたかった


出来なかった してはいけなかった

だって私は 放棄した

やるべきことをやめた

私が悪いんだと 私が悪い子なんだ


私の気持ちは理解されない

だったら それでいい

どうせ私は いらないんだ

便利な道具であればいい

愚痴を入れる袋であればいい

ただ黙って頷く人形であればいい

感情なんて 必要ないんだ


あぁ 私はここに居ちゃいけなかった

ここに居なければ よかった






「恐怖」




勉強がそこそこできて

学校生活だって 何か問題があるわけじゃない

バイトだって見つかって 好きな趣味すらある

でも 私は

こんな自分自身には過ぎたこの生活が怖い


人に良くしてもらっていながら

自分が何もできていないことに焦り 戸惑う

足掻き 動き 失敗する

私は何も出来ないのに 誰かに 何かをしたわけじゃない

出来たことなんてないのに

それなのに

どうして 私の周りにはこんなに良い人ばかりがいる?

私には何もないんだ

あなたたちにこんなに優しくされるほど 何かが出来るわけじゃないんだ


申し訳なくて 嬉しくて

心地よくて 不甲斐なくて

優しくて 大切で 大好きで 笑顔をくれて

だからこそ どうして私の傍に居てくれるかがわからなくて

それでも私の傍に居てくれることが嬉しいから 拒めなくて

聞くことが恐ろしくて でも聞きたかった


私には何もない

私が持っているように見えるものは全てが貰いもの

私は何もできない

だって私は 臆病だから


人に良くしてもらっているのに

こんな感情を抱く自分すら嫌で

人がくれたものだけがキラキラと輝いて見えて

自分がバカなことが嫌だった





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