時よ
「シーグラス」
長い 長い時間の中で
広い海に浮かび 流され もまれた君は
一体 何の偶然か
ここに流れ着いてしまった
その時間はどれほどだったのだろう?
君にとってそれは 長かっただろうか?
それとも 短かっただろうか?
海をただ流れることは 楽しかったかい? 辛かったかい?
どこの海が 一番綺麗だった?
どこから見た空が 一番好きだった?
君には聞きたいことが尽きない
だから
どうか僕に教えておくれよ
他の人には聞こえない その小さな声で
僕にだけ そっと耳打ちしておくれ
「蝉」
人間からすると うるさい僕らの声は
ひと夏のもの
七年という長い間
薄暗い土の中で この一瞬を待っていた
夏の太陽を浴び
人間に捕まる恐怖に怯えながら 僕らは叫ぶ
「僕は ここにいる!」
それが一瞬であっても
この時間が過ぎれば なくなる命であってもかまわない
僕らがここに生きたことを
生きた証を叫ぶためだけに
僕はここに生きている
「約束」
幼い自分の約束を
ふとした拍子に守り 果たした時
約束した人は
約束を聞いた人は
そこには居なかった
本当に果たすかどうかもわからない約束だった
その場の感動で 衝動的に言った約束
でも 私は
もう 五年も前の約束を 忘れたことなんかなかった
けれど
それを果たすには遅すぎた
今 私にあるのは後悔
『もっと 早く来るべきだった』
それだけで
もし 来ていたとしても
その人たちが覚えていてくれたとは限らなかったけれど
それでも 私は
もっと早く ここに来るべきだった
あの人たちがいなくなる前に ここに来るべきだった
「角度」
おや? どうしたんだい
・・・・そうかい ここにお座り
疲れたのなら 休めばいい
ちょっとだけここで休んで 見方を変えてごらん
ほら 世界はこんなにも愉快で
面白おかしくて 奇天烈なことに溢れてる
笑うことに 泣くことに 怒ることに
ありとあらゆる感情を 吐き出すことに疲れたのなら
誰かと接することが よくわからなくなってしまったのなら
今いる場所から ほんの少しだけ離れて 人を見ていてごらん
もし それでも一人が嫌なのなら
私でもいいなら 君の傍についていよう
ここで少しだけ 見ていてみようか
友人とのやり取りを
他人の喧嘩を
人の表情を
こうして見ているときに
もし 君が自分からあの中へ『戻りたい』と思ったら
もう 君はその手段がわかるだろう?
見ていることは 案外楽しかっただろう?
それに あの中に居られるということがどれだけ幸せかがわかる
だから ここには必要な時だけ来ればいい
私はいつだって 君の手伝いをしよう
うん? 私のことかい?
私は・・・・・いや この場所もけして 孤独ではないよ
人が一人いるだけで
そこにはきっと別の居場所ができる
ほら 見えるだろう?
私と君にも もう一つの縁ができたのが
「今」
不確定な未来よりも
愛すべきは過去
過ぎ去った過去よりも
進むべきは未来
未来より前に 今があり
過去より先に 今がある
矛盾にも近いこの言葉遊びを
あなたはどう感じるか?
私には想像もできない
ただ 今
私の目の前には ペンとメモがあり
押さえきれない思いが 文章となって動き出そうとしていた
あなたの前には 何がある?
あなたの想いは どう動く?
カタチにしてみない?
自分の今を 少しだけでも誰かに伝えるために




