シリーズ1 前世
えー、詩は初めての投稿なので実験的にやってみます。
読みにくかったらやり方を変えるので、感想へお願いします。
サブタイトルもまともにないですが、ごめんなさい。
最初の「」は名前であり、詩のタイトルです。
なんだか説明ばっかりですが(汗)
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「ミモザ」
「何故だ?」と問うあなたは
ただ悲しげに
私を見つめる
私は笑う
彼に見せたこともない
誰にも見せたくはない
彼に向けたくもない嘲笑の笑みを
私の口は嘘ばかり
彼に嫌われ 憎まれる
彼に殺されるためだけに今まで考えてきた言葉と わずかな事実を並べ
彼が涙を流し
仲間だった者たちが私を睨み
あるいは彼を支えた
それでいい
あなたたちはそれでいい
彼を支えていくのは
彼と歩んでいくのはあなたたちだ
「さぁ 殺し合いましょう? 勇者様」
私はここで死ぬために
彼に殺されるために
彼を
愛しいこの人を英雄にするために
この身をもって 踏み台となりましょう
この思いは届かなくていい
永遠に
誰も知らぬこの恋心を
来世で
別のカタチでこの人に伝えたい
「シオン」
裏切られたあの日から
この日が来ることはわかっていた
それでも彼女に問わずにはいられなかった
「何故だ?」
彼女の口から溢れる言葉
今まで見たことはなかった嘲笑の笑み
気が付けば両目からこぼれる涙
支えるように傍に居てくれる仲間たち
「さぁ 殺し合いましょう? 勇者様」
彼女の残酷な言葉に
オレは剣を握った
王の命令によって剣を握ったオレの補佐として
君はいつだって傍にいた
仲間が増えるたびに
君は俺を叱りながらも
優しく仲間を迎えてくれた
時に仲間の和を保ち
時に仲間のよき相談役として
時に背を預ける戦友として
オレは好きだったのかもしれない
でも だからこそ
君との決着をつけるのは
オレであるべきだと思う
もし
来世があるのなら
次は平和な世に皆と会いたい
皆でバカやって 笑いあって
そして
今度こそ 君がオレから離れてしまう前に
おれの思いを伝えよう
「君が好きだ」
そんな単純すぎるオレの思いを
「ゼラム」
彼女の思いを 親友として見届けよう
彼女の散り際を 敵として見送ろう
彼女の願いを 友として聞き届けたあの日の自分と
敵として向かい合った今のために
唯一無二の我が友よ
その思いと奴との記憶
全てを抱いて逝くがいい
案ずるな
約束は果たす
奴とこいつら
皆で世界を守ろう
そして
奴を守ろう
友よ
お前の思いは責任もって墓まで持っていく
安心してくれ
だが
勘違いするなよ?
奴に好意など持っていない
ただ
お前との約束を守りたいだけだ
来世があるのなら
お前とまた友になりたい
平和な世で
共に笑っていたい
「ルティア」
「裏切り者!」
こらえきれずに叫ぶアタシを
あの人は変わってしまった笑顔だけで笑うだけ
優しかったあの人は
彼が恋したあの人はもういない
あの人の言葉に彼は泣いていた
あの人が裏切った あの日と同じように
目からあふれる涙を止めようともせず
彼は剣を掴んでいた
「さぁ 殺し合いましょう? 勇者様」
あの人は笑うだけ
アタシが知っているあの人は
もういない
いないんだ
彼を支えるのは
彼と共に歩くのは
彼を愛するのは
もう あんたじゃない
アタシたちだ!
アタシなんだよ!
来世なんてどうだっていい
大切なのは今 この一瞬だけ
彼と一緒に居られるこの時が
アタシの永遠
「グラジオス」
お前は来世を信じるか?
我が弟子よ
たった一人
生涯で唯一 ワシが育て上げることのできた
ワシの剣を継ぐ者よ
剣を振ることしか能のないワシが
お前を拾い 育て 鍛え上げていく中で
お前は何故か人らしく育っていった
優しく 強く 情に弱い
どこにでもいるようでいない
そんな存在にお前はなった
お前がワシを『親父』と呼んでくれた日
そして
お前が王に呼ばれた日
私は己の天命を悟った
『歴史の英雄となるお前を育て上げる』
それがワシの天命じゃった
残念なことに
ワシは見届けることはできないじゃろう
剣の技術しかない老いぼれがよく生きた
しかも
お前のような息子に恵まれた
他に何を望むというのだろうか
来世のことか?
信じたいものじゃな
でなければ
『死』とはただの恐怖となり
人は 報われぬじゃろう?
「ルベール」
『魔王』よ
我が一族の長よ
わかっているのでしょう?
『聖女』は
死してなお こんなことは望まないと
同朋たちよ
気づいているのだろう?
この先に『滅び』以外の道はないと
復讐の怒りと悲しみに包まれながらも
理解しているのでしょう?
我らに『聖女』がいたように
『人間』にも そんな存在がいることを
『人間』が許せない思いはわかります
ですが! 魔王よ! 同胞たちよ!
人の全てを憎み 殺しても
あの方は戻ってこないのです
勇者殿 わかりますか?
これは復讐なのです
光を失った一族の怒りと嘆きの叫びなのです
もし
違う形で長とあなたが出会っていたら
何かが違っていたのかもしれません
ですが
これは我が一族にあるべき宿命だったのでしょう
せめて
来世で今より幸せになることを祈りましょう
「アザレア」
異端の彼らに救われて
救われたのは私なのに
彼らは私を『聖女』と呼んだ
助けてくれたあの人に
ありきたりな恋をして
優しいあなたたちを対等に扱っただけで
皆が私を『聖女』と呼んだ
『人間』はあなたたちを『化け物』と呼ぶのに
何故 『人間』の私を助けたの?
あなたたちは醜くなんてない
こんなにも温かい
だから 私が死んでも泣かないで
嘆かないで
今 こんなところに立っていても
私はあなたたちに会えたことを後悔なんてしてない
むしろ
こんなところに立っているからこそ さらに強く思う
あなたたちに会えてよかった
あなたを好きになれてよかった
来世 か
あったらいいなぁ
そしたら また
あなたを好きになりたい
優しいあなたたちに出会って
今 出来なかったたくさんのことを
今 したかった多くのことを
皆でしましょう
あなたと一生を共にすごすことを
あなたとの幸せを
二人でわかちあいましょう
「ゼフィルス」
こんな我ら一族を認めてくれたあなたは
我らを対等に扱ってくれたあなたは
あなたと同じ
『人間』によって殺された
我らはそれが許せない
私はそれを許さない
だから 私は
『魔王』と呼ばれながらも『人間』を殺した
殺した 殺した
多くを殺した
だが
あなたは戻ってこない
我らを『人』として接してくれた
大事で大切だった
優しいあなたは戻ってこない
こんな私を『好きだ』と言ってくれた
愛しいあなたは帰ってこない
『勇者』と呼ばれる者よ
貴様らに 貴様が守る愚かな『人間』たちに
我らの涙が止められるのか!?
この永遠に消えぬ傷を癒せるのか!?
貴様ら『人間』が奪った我らの理解者を
『人間』によって殺された私の愛しい人を
来世など要らん
だが 夢を見ていたい
あの人と一族で暮らした
あの穏やかで温かい日々を
「ランシア」
あなたの心は
『聖女』と共に死んでしまった
あのわずかな日々で友になり
恋のライバルになったあの子は
あの人の心を持って 逝ってしまった
もう 私は
完全に勝てなくなってしまった
でも それでもいい
それでもいいから 戻ってきなさいよ
あの人が 皆が あなたが戻ることを望んでいる
親友として あなたを殺した『人間』が許せない
ライバルとして あなたをなくした事実が少し寂しい
あの人を想う一人の女として
あの人の心を持ち逃げしたあなたに 嫉妬している
それでも一つだけ
あなたにできなかったことをすることで
チャラにしてあげる
私はあの人と共にこの戦いに生きて
あの人の盾となって死ぬわ
それぐらい 望んだっていいでしょ?
ねぇ
恋のライバルとか
『聖女』とか関係なく
皆と同じように私もあなたが好きだったわ
来世なんて信じたくもないけど
次もあなたと居られたら
きっと
楽しいでしょうね
「イグニート」
この方に仕え 生涯見守ること
それが何より私が優先すべき私の使命であり
それが私の人生の最大の喜び
あぁ 主よ
私の仕えるべき御方
あなたが『長』であろうと
『魔王』であろうと
恋をし 愛しい方を失っても
怒りに狂い 多くの『人間』を殺そうと
多くの同朋たちが死んでも
あなたの身に『勇者』の刃が迫るまで
私はあなたに仕えましょう
あなたの喜びのために
あなたの復讐のために
あなたの怒りのために
私があなたの最期の盾となる瞬間まで
この命が尽き果てる最後まで
あなたに仕えることが私の願いなのです
来世なんてあるのですか?
もし あるのなら
次もこの方に仕えていたいですね
恋愛の対象など 畏れ多く望みはしません
それに
主と従者 この関係は一生のもので
ずっと お傍に居られるのですから
「魔族の衆」
あの方を殺した『人間』を許すことはできない
長であるあの方の悲しみを
我ら『化け物』の痛みを
『聖女』を失った『魔王』の怒りを
思い知るがいい!
長が助けた『人間』のあなたは
『化け物』である我らに対等に接してくれた
外見を気にせず 恐れず 親しげに
我らに優しさという光をくださった
長とあなた 我らがすごしたあのわずかな日々
なんと満ち足りた時間だったでしょう
一族の全員があなたによって 心を救われ
長はあなたを愛しました
そして
あなたが殺された日
我らは『化け物』となり
長は『魔王』となられた
あなたは我らの光でした
その光を消した『人間』を我らは許せない
長の望みは我らの望み
あなたが居たら 止めたでしょう
それでも
あなたが殺されたから 我らは止まりません
来世が実在するのなら
また あなた方二人の傍でありますように
今度こそ
あなた方が幸せでありますように
「ユスラ」
ドンッ
無情な音が広場に響き 首が落ちる
木彫りの髪飾りが転がり 人々が歓声を上げた
私は姉の形見であるそれに
復讐を誓った
姉は優しく 芯の強い人だった
村一番の美女で誰からも好まれた
そして
そんな姉が恋したのは人ではない者だった
私はそれでもよかった
姉の幸せな笑顔と穏やかな魔族の衆
わずかな間の確かな幸せ 私たちの理想の暮らし
姉が夢見たのはそれだけだったのに
『人間』は姉を『魔女』と呼び 処刑した
「ねぇ 義兄さん もう全部壊しましょう
姉さんを奪った『人間』を 殺してしまいましょう」
抜け殻となっていた義兄をけしかけたのは私
この虚しい戦いを始めたの私
さぁ 終わらせましょう
黒幕である私の死をもって
この戦いは終わりを告げる
「ねぇ? 勇者殿 爆死って 素敵だと思わない?」
姉の来世に私はいなくてもいい
だって 心配しなくても
姉の来世は幸せしかありえないもの
「語り」
異世界の話をしよう
どこかにあるだろう 世界の話を
それはどこにでもある勇者の話であり
ありきたりな恋物語
「シオン」を想うが故に敵となった「ミモザ」
「ミモザ」を想っていた己に敵となって気づき それでもなお正義を貫く「シオン」
「ミモザ」の「シオン」の思いと真実を知っていてなお 約束を果たすこと決めた「ゼラム」
一途に「シオン」を想い 傍に居ることを選んだ「ルティア」
親として 剣の師として「シオン」を育て上げた「グラジオス」
魔族でありながら「シオン」側に立つことを決断した「ルベール」
魔族に関わった故に罰せられた「アザレア」
理解者であり 愛した「アザレア」を失った「ゼフィルス」
「ゼフィルス」に恋をし 「アザレア」の親友だった魔族の女「ランシア」
主に忠誠を誓う「イグニート」
唯一の理解者を失った魔族の衆
そして
「アザレア」の妹であり 戦いの始まりと終わりの女「ユスラ」
どちらか一方と『悪』と決めつけるのはとても簡単
しかし
本当に彼ら一人一人の話を知ってしまったとき
誰が『悪』と断定できるか?
平和と創ろうとし 愛した者にも気づかずに
自分の手でなくした「シオン」
愛した者を『人間』によって殺され
怒りでその身を焦がしつづける「ゼフィルス」
愛する者を英雄とするために
自分の人生も 恋も捨てた「ミモザ」
処刑台に立たされてなおも
魔族への親愛と 「ゼフィルス」への愛に生きた「アザレア」
この四人を中心として
この世界は回るだろう
彼らの物語は
きっと ハッピーエンドと程遠い
しかし
彼らによって 世界は何かしらの変化を迎える
良くか 悪くか
世界は大きく変わるだろう
彼らの思いとは裏腹に
彼らの知らぬ言葉となって 世界を巡る
それでも彼らが
届いてほしいと願ったのは
生きてほしいと祈ったのは
誰よりも深く愛したのは
何よりも優しく愛したのは
今 ここには居ないたった一人の存在
それを知らずに
それを知っていてなおも
それを彼が知らなくても
それを知り 逝くことを
彼らは理解している
そして
それでも進むしかないことも
正義を貫くために
喪失を怒りで紛らわすために
成し遂げるために
ただ 愛するがために
己の生き方を決断し
彼らは彼らの終わりを迎えるだろう
あるかどうかもわからない来世へ
それぞれの思いを馳せながら
サブタイトルに『前世』とあるように、これには続編があります。
それは今日の様子見を見つつ、状況次第で明日には投稿すると思います。