予想外
予想外、想定外、アクシデントと呼べばいいのだろうか。
ある程度までは把握していた。
でも私はそれを止めることが出来なかった。
それは昨日の放課後、職員室の前で聞いてしまった話。
「先生」
私の目の前を通った女子軍のリーダー。
どうやら職員室に用事があるようだ。
忘れ物を取ってから玄関に向かう途中だった。
「おぉ、またお前か」
「はい、今回もまた。」
「なんか事件をすぐに発見してしまう体質みたいだな。はっはっ」
「いえいえ」
事件?
なにかあったのか?
「あの、今日見てしまったんですけど、」
「あぁ」
「C組の上星善さんが、学校で使っている掃除用のほうきをたくさん折っているのを見てしまったんです・・・ 注意したら。大きな声で怒鳴りつけてきて・・・。これは先生に言ったほうが良いかと。」
え?うぇぼしー?なんで?
今日は朝からずっと一緒だったけど?
・・・・・まさか・・・・
たぶん次はうぇぼしーに目をつけてるんだ。
でもなんで?
うぇぼしーが何をしたの?
とにかく明日真相を確かめよう。
単独で行動してから後方から攻めようか―・・・・・
「上星さーん」
教室で取り囲まれるうぇぼしー。その横で私とあすのが見守る。
「何、食事中なんだけど。」
うぇぼしーが足を机に上げたまま相手側のにらむ。
「昨日さー、学校のほうきとか折りまくってたでしょー!?」
周りがざわめく。たいていの人は動きを止めて振り返ったままこちらを見る。
「なにそれ、知らない。人違いじゃん。てか邪魔。」
「は?」
うぇぼしーと女子軍リーダーの葛藤が始まると推測する。
このまま見ていて大丈夫なんだろうか?
早くうぇぼしーつれて退散しよう。こいつらうっとうしいし。
「恋、あすの、別のとこで食べよ」
「あ、うん」
「分かったー」
どうやらあすのは状況が把握しきれていなようだ。
・・・・隣にいる郁人も。
「ばいばーい」
「あっコラ あすのっ!」
女子軍に手を振るあすの。 一回頭をペシッと叩く。
「痛-い、あすのも仕返しするぞ!」
あーもーそれは後にして!
今この場を早く出たいから!
「柴田、何かあった?」
郁人が急に立ち上がって私の耳元でコソコソ喋る。
「うぇぼしーが目ぇつけられてるみたい。本人には言ってないの。」
「じゃあさっさと教室出たほうがいいな。」
「うん、ありがと」
「ちょっと待ってよ。自分の責任持たないの?上星さんがやったんでしょー?」
リーダーしつこい・・・・
だいたいうぇぼしー何もやってないのに。
女子軍がクスクスと笑っている。
『ざまみろ』という顔で。
ムカついてきた。
「あのねぇ、昨日はぁ―!・・・・
あ、ヤバ 言い返しちゃった。
どうしよう、手遅れだ・・・
「昨日は何よ」
・・・・しかたない決着がつくまで暴力でも口げんかでも使ってやる!
「昨日はね、うぇぼしー私たちと朝から晩までずっと.一緒だったの、しかもうぇぼしーは前の席だから、だいたいの行動パターンが見て分かる、何が気に食わないのか知らないけど、うっとうしい」
言った・・・・! 言った・・・・!
さあ女ども懲りろ!
「でも、そうじの時や放課後とか、いつしか分かれるでしょ?」
「そうじの時なら誰かしら見てる。放課後もトイレ意外にどこも行ってない。」
「証拠があるの?」
笑みをこぼしながら拍車をかけてくる。ああもうこれだから女子は。
「証拠なら、この3人全員が証明できる。」
3人全員同じような行動をとった。それぐらい簡単だ。
「ねぇ、れんっこぉ・・・」
「えっ?」
「お腹空いた。」
あすのが人差し指を銜えて私の袖をつかんできた。
「っあ、ごめんっ 行こっか」
こんなことしてるなら飯食ったほうがまし!
「柴田」
郁人だ
「ここは俺がなんとか片付けとく。とりま行って。」
郁人・・・・・・・じゃないじゃない!昭和のドラマか!
「ありがとう、今度何か奢ったる!」
「頼むわ」
恩に着ます・・・
あすのもうぇぼしーも落ちいついた表情。
騒いだ心は私だけ?
「ねぇ」
またもやリーダー
「逃げるの?」
怪しげな表情 逃げる? 逃げたくない
でも―・・・・・・・・
「逃げるよ!」
これが私の答え、逃げたければやることやってから逃げろ。
その言葉を胸に、女子軍と郁人に背を向けた。
でも、友達のためになるのだろうか?
郁人の『行って』という言葉に甘える自分はおろそかだ。
「うぇぼしー」
「ん?」
「あすの」
「なにー?」
『逃げたければ逃げる。』それはただの弱音だ。
「ちょっと、先行っててね。」




