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柿色のセカイ  作者: 萩乃
34/45

個室空間

ん・・・・ここ・・・、どこだ?





目を覚ますと、暗くて狭い小さな個室。





その中に恋はいた。





痛い、





頭が痛い。





薬が少し残っている。





誰か―――・・・





そんな思いで、ドアであろう場所を開こうとする。





グッ





あ、開かない・・・!?





なにここ?鍵かかってるの?すごい狭い!





「あははっ 捕まえてすぐ逃がすワケないじゃん!」




ドアの向こうから声がする。





「・・・君・・・」





「あれ!?気づいちゃったぁ!?ごめんねぇ痛くして!」





「誤る気があるなら早くここから出して」





向こうにいるのはきっと、郁人のことが好きな女子。





こんな子だったなんて。





「誤る気!?そんなん無いんだけど、お前が誤れよな!!」





「・・・は?」





「ここねぇ、だーれもいない廃屋のエレベーター!怖いでしょ!狭いし誰もいないのよ!?きゃははははっ!」





「・・・」





「あんたさぁ、今携帯もなにもないでしょ!?奪ったもんね!助けも呼べないよ!相手が探し出そうとしてもGPSだし、大分時間かかるんじゃない!?」





「・・・」





「あのねー、私ら用事あってぇ、お出かけするんだよねぇ、だからぁ、バイバーイっ」





一方的な会話で腹が立つ。





ってか、お出かけ・・・って・・・





「ちょ、ちょっと待って!お出かけってなによ!まさかこのまま放置するつもり!?」





「えー、バレたぁ?はははっ」





え・・・ ま、待ってよ!!





「んじゃ、おとなしくしててよね~」





「待って、エレベーターって・・・古いんでしょ!?誰も助けが来なかったらどうするつもりよ!?待って!私が何をしたって言うのよ!」





その瞬間、ドアがこじ開けられた。





「お前は私の邪魔だ。」





そう言ってドアを思い切り閉める。





ガチャガチャと鉄がぶつかり合う音。





南京錠。





そんな感じがする。





「やだ、出して!クソ!ナス!かぼちゃ!」





パニックで何を言っているのか自分でも分からない。





ヘタリと床へ座り込む。





息が荒くなっていた。





「落ち着こう・・・」





意外にも恋は、冷静だった。





どこか出れる場所があるはず、穴でもなんでも探そう・・・

















「真白!!」





「こっち、早く!」





こちらも息荒く、





校門に駆けつける。





「れ・・・、恋は!?」





「分かんない、車はこっちへ行ったの、電話もメールもダメみたい。奪われたんだわ」





あすのを抱きかかえた真白は、あいた手を東に向ける。





「ど、どうなるんだよ!?」





郁人もパニック状態。





「早く見つけよう・・・!」





東へ走り出す。





真白がその手を強く掴んだ。





「やみくもに走り回っても無駄よ、スマホにGPSがあるでしょ。そこから探し出そ!早く見つけるには効率的だわ。」





「あぁ・・・」





強く握った手は熱かった。とても。





「郁人・・・この辺りは廃墟が多いのだから見つけるにも時間がかかる。どれがどれだか分からなくなるでしょ。」





「じゃあGPSが反応した辺りを手分けして探そう!」





「探す・・・って・・・、いちいち中に入るの?」





「当たり前だろ!」





「・・・分かった。」





真白が嫌そうな顔をする。





「・・・上星にでも付いて来てもらえ!」





そう言って真白の頭を軽く叩く。





「あすのちゃんは?」





「まずこいつは学校で見ていてもらえ、それしかない。」





「うん」





話がどんどん進んでいく。





助けるために―――・・・・














ガタッ





エレベーターの中で飛び跳ねてみる。





結果。





グラッ!





「ぅわぁ!」





ペタッと音をたてて倒れこむ。





「も、もろっ・・・・」





誰か・・・、早く来てよ・・・





狭い場所でたった1人。





音も、話し声もない。





古ぼけてカビくさい壁。





こんな所でずっと居ろとか言うの?





そんな思いで涙がこみ上げてくる。





でも恋は泣かなかった。





何かを抑えて。





「私はここだよ」





そう言って壁にもたれる。





「ここだよー・・・」





暗くなっていく個室に1人、震えを止められずにいた。



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